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Episode38 心の整理

昨日の分の更新を忘れました。

今日はもう1話更新しておきます。

 結局報告書は隊室にある一ノ瀬隊長のデスクに置いて、それでアジトを出てきてしまった。


 別に時間がないわけではないから、代表者ミーティングが終わるのを待って本人に直接渡す方がいいだろうが、やはりさっきのことが釈然としなくてこんなしょうもない仕返しをしてしまった。


 ガキみたいだと笑いたくば笑え。


 こちとらまだまだ高校1年生を始めたばかりのクソガキだ。


 しかし、勢いでアジトを出てきてしまったけどこの後どうしよう……。


 そういえば最近はいつも忙しすぎて、まともに高校生らしい日常を送っていなかった気がする。


 平日は学校から帰ってきたらすぐにアジトに行って超能力の訓練。


 休日も、学校に行かないだけで過ごし方と言ったらおおよそ変わらない。


 たまには高校生らしい休日ってやつを過ごしてみるか。


 そう思ってふらふらと学校の寮まで戻ってくる。


 そのまま階段を上って自室に帰ってきて、手を洗ってパソコンの前に座ってみたのだが……。


「なんかゲームもやる気にならないし、動画サイトとかも見る気になれないな」


 ふとそんな独り言が口をついて出る。


 確かに最近は滅茶苦茶忙しかった。


 それこそ自室で落ち着く暇もないほどに。


 でも、ゾディアックの一員として任務に参加したり、最近ではヒーローを倒すことなんかも出来て……。


 何と言うか……中学生の頃の自分だったら想像もできないほどに充実していて、何より楽しい。


 超能力の訓練も、自分が活躍する未来を想像すれば、それが全く苦じゃなくなる。


 それが俺にとっての何よりの娯楽に変わっていたんだ。


 そんな体験を実際に味わってしまったら、ゲームや動画じゃあ満足できないわな。


 アジトに戻って訓練でもするか?


 いや、でも今更行くのもなぁ……。


 俺はしばらく今日と言う日をどう過ごそうかという事に頭を悩まてみたが、結局最適解は見つからず……。


「とりあえず散歩でもしてみるか……」


 自分で決めておいて、自分で驚くような行動に出てみることにしたんだ。




 ----------




 ふらふらと東京の街を歩く。


 本屋、洋服店、ビデオレンタルショップなど、大して興味もないような店を冷やかしてみる。


 正直楽しいとはとても言えないのだが、こういう何気ない落ち着いた日々とはかけ離れた日常を過ごしていると、こういう過ごし方もたまにはありかな、などと思えた。


 次はどんな店に入ろうかと思っていると、ファーストフード店が視界に飛び込んでくる。


 ……そういえば飯食ってなかったなぁ。


 時刻は13:00を回っている。


 俺は食欲に誘われるまま店内に踏み込もうと自動ドアの前に立ち……。


「ん?」


「ん?」


 俺の隣に人影が一つ。


 俺はその人影に向かって視線を飛ばしてみる。


 すると向こうもこちらを見てきて視線が交錯する。


「星川!?」


「蓮君⁉」


 まさかの星川と遭遇した。


 その後はそのままの流れで適当な品を注文して、お互いに会計を済ませて俺はそのまま1人席へ……。


「ちょっと、なんで逃げるの?」


「いや、別に用もないし」


 正確には一緒に食べるのが恥ずかしかっただけだけど。


「……」


「それじゃあ」


 返答が返ってこなかったので、これ幸いとそそくさとその場を立ち去ろうとすると……。


「ねぇ」


「え……」


 星川の聞いたことのないような声音にビビって俺は立ち止まって振り返る。


 すると星川は無言のまま左の方にある2人席をおもむろに指さした。


 そこに座れってことですね。


 分かりましたよ。


 俺は仕方なく、指示された通りそこに腰を下ろした。


 ここまでして引き留めるってのはどういうことだ?


 何か話でもあるのだろうか。


 しかし、ソワソワする俺に対し、星川は平然とハンバーガーを食べ始める。


 おいぃぃぃ。


 なんか話があるんじゃないんかい!


 などと思っていると……。


「あのさ……」


「……!」


 突如良いのか悪いのか分からないタイミングで話しかけられた俺はびっくりして体を硬直させる。


「あの時はありがとう」


 あの時?


 何の事だろう。


 今話すってことは校外学習中にあったこととかだろうか。


 しかし全く思い当たる節がない。


「えーっと、なんのことだっけ?」


「私が一人でヒーローと戦っちゃったときの事!」


 あー。


 全然校外学習の時の話じゃなかった。


 あの時の話ね。


 自分でも思い出したくない話だからか、少し不機嫌な感じだ。


 でもそれでも話す気になったのはどういうことだろう。


 だいぶ時間が空いてるし。


 いや、それくらいに自分の心の整理に時間がかかったってことか。


「任務が終わった後、新田さんにこっぴどく怒られて、その時に蓮君が私を連れ帰ろうと必死になってくれてことを聞いたの」


 なるほど、やはりあの後星川は怒られたのか。


 てかなんかあの時の俺の話を裏でされてたと思うと少し恥ずかしいな。


「そ、そっか」


 そんな恥ずかしさもあってか俺は少し目を逸らしてしまう。


「それでね、やっと心の整理がついたからさ、あの時なんであんな行動に出たかを話そうと思う。私の過去も含めて」


 あー、それ、すでに知ってるんだよね……。


 とは言えないので、黙り込む。


 星川の話はほとんど戸塚から聞いたものと同じだった。


 戸塚の話には推測なんかも入っていたみたいだが、それはばっちり当たっていたみたいだ。


「……そんなことがあったのか……」


 星川の話が終わり、俺は驚いたような、悲しいような声で呟いてみた。


 俺は星川の過去を知らない(てい)で話が進んでいるからな。


 演技が見抜かれてないだろうか?


 俺はチラリと星川の表情を盗み見てみる。


 演技がバレている様子は無かった。


「ふぅ」


 俺は安堵して、小さく息を吐く。


 と同時に、星川は俺に対して誠意をもって話してくれているのにも関わらず、俺は星川を騙している、という罪悪感に苛まれた。


 その後は話は終わったようで、無言の時間が続いた。


 次第に気まずくい雰囲気になって、気が付くと俺はその雰囲気に耐えられず口を開いていた。


「そういえばさ、聞きたいことが一つあるんだけどいいか?」

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