表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

姉のこと

 豪華なドレスを着飾るように、姉は僕のことを自分好みに仕立てあげた。

 小さい頃から僕にはそれが嫌で嫌でたまらなかったけれど、気がつけば、僕は姉にまるで逆らえなくなっていた。

 僕らに血のつながりがないということは、姉から教えてもらった。

『将来、彰は私と結婚するの』

 そう小学校に上がる前から、姉に言って聞かされていた。

 幼いころは無邪気に姉からの好意が嬉しくて、結婚の意味もわからず、お姉ちゃんと結婚する、と言っては周囲に微笑ましく見られていた。

 小学校に上がってからは、姉と結婚できないと知って、ショックを受けることもあった。そのたびに、姉は僕を慰めた。

『大丈夫。私たちは結婚できるの』

 僕はその言葉を本気にしていなかったけれど、成長するにつれて、どうやら僕らは本当に結婚できるらしいということを知った。

 姉がいつからそのことを知ってたかはわからないし、特に興味もないけれど、姉の気持ちが変わることは今日まで残念ながら一度もなかった。

 姉は基本的に僕を甘やかしてくれたけれど、時に親より厳しく僕を躾けた。

 父がゴルフの景品で飾っていた記念の皿を割ったときなど、父が笑って許してくれても――僕は母の連れ子で、父とは直接血が繋がっていなかった――、姉はなかなか許してくれなかった。


 中学生になり、思春期真っ只中になると、好きな子ができた。同じクラスの控えめで伏し目がちの、姉と正反対のタイプだった。

 僕はその子に告白した。その子も僕のことが好きだったと言ってくれた。

 生まれて初めてできたカノジョ。

 有頂天になった僕は、カノジョができたことを迂闊にも姉に話してしまった。

 次の日、その子は急に僕に対してよそよそしくなっていた。何も訊けないまま、その子は僕に別れを告げた。理由は何も教えてもらえなかった。

 家で女々しく泣く僕を、姉は優しく抱きしめてくれた。

『彰には私がいるじゃない』

 姉はそう言って、僕の頭をなでてくれた。

 姉が元凶だと知ったのは、高校に入り、その子と偶然町で再会したときだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ