7 餅は餅屋、ヤンデレはヤンデレ屋
私は最近スランプで、小説が書けなくなっていました。
今まで何度かスランプにはなったものの、今回のはかなり酷く、一時期は筆を折ろうかと思ったほど。
しかし私はよく言えばフットワークが軽く、悪く言えば考えなしに楽しそうなものに飛びつく習性があるので、スランプになる前、三つほどの企画に「はーい参加します!」と手を挙げていたのです。
馬鹿、馬鹿。私の馬鹿ァ!
もし筆を折るにしても、手を挙げたからにはちゃんと責任を果たしてから折らないと駄目だよね……と思いましたので、手持ちの過去の未公開原稿を当てたり、既存作の大幅加筆などで対応していました。
しかし、ひとつだけは完全新作で書き下ろしをしないといけないものがあります。これは同人誌アンソロジー用の原稿でして、さてどうしようと悩みながらネタ帳を見ました。
すると「お、これは、」と思うものがありました。
だいぶ前の活動報告でも書いたのですが、交流してくれている作家さまのひとりに夏まつり様と言う方がおられまして。その方がお題メーカーを作ってくれたことがありました。
◆異世界で恋愛!ジェネレーター
https://generatormaker.com/app.php?app=zjfmkk3sb38mrz
こちら、異世界恋愛向きののお題を出してくれます。楽しくて何度かガチャガチャ回しました。
回した結果をネタ帳にメモしておいたのですが、既に以前短編小説にして発表済みのものもあります。残っているネタで、今回のアンソロジーに向いてそうなのが『毎日愛をささやいてくれる男爵家嫡男と、前世では敵だった才女の、西洋風の恋愛を考えてください。』というものでした。
早速設定を練り始めます。
前世でヒーローが、敵対したヒロインを殺していた。ヒロインはその前世を思い出し、ヒーローが毎日愛を囁いてくる事にゾワゾワしている。
実はヒーローは前世でも現世でもヤンデレで、ヒロインを自分だけのものにしたくて殺していた……。
うん、設定としては良いんじゃないかなぁ? とりあえずこれで書いてみよう。と、冒頭の800文字まで書いてみました。
我ながらなかなか面白そうな冒頭になっています。よしよし、じゃあここからヒロインが前世の出来事を振り返るシーンにしよう、と書き始めました――――
凪。
青く晴れ渡る雲ひとつ無い空と、ソヨとも吹かない風に、水平線の果てまで穏やか〜な海の光景が見える…………ぐらいの凪ですよ。
びっっっっくりするくらい、物語が動かない。全然書けない。
いや、元々スランプで書けなかったんですが、そのスランプというのは『頭のなかの画像や映像を文字にできない』という類のものでありました。
今回の書けない、というのはそもそも画像も映像も音声も文字も、何一つ浮かばないというやつですね。
何故だろうと自問自答しました。気がつきました。
あっ、これ造詣が浅いというやつだ。
ヤンデレの経験値が圧倒的に足りないんだ。なんだよヤンデレの経験値ってオイ。文字にすると怖いぞ。
私は以前「書き出し祭り」という匿名企画で現代舞台ヤンデレ男のじっとりとした物語を書いて提出していました(『ヨロイマとカシオ』というお話です。よろしければ皆様書き出し祭りを読んでね★)から、ヤンデレへの造詣が浅いと自覚しておりませんでした。
それに異世界恋愛舞台のヤンデレヒーローが出てくる小説や漫画もそれなりに読んでるとは思ってたんですが、結局それじゃあ経験値が足りないんですね。
あくまでも自分が創作をするうえでの持論ではありますが、やはりヤンデレの執着は自分ごとで考えないとダメなんですよ。『ヨロイマとカシオ』の時はヤンデレ男の立場にちゃんと立って書いてましたから。
でも異世界恋愛の舞台で、自分がヤンデレになるなら? と考えるといまいちしっくりこない。
――――――
①ヒロイン可愛い! 好き! 愛してる!
↓
②ヒロインを誰にも取られたくない! 俺だけのものにしたい!
↓
③そうだ周りの男の目に触れさせないよう彼女を閉じ込めるか、周りの男の目を潰そう
↓
④立派なヤンデレの出来上がり♪
――――――
……これがヤンデレ男のテンプレのひとつかと思うんですが、自分がヤンデレならと考えると①②はともかく、③への移行が難しい。
かなり説得力のある設定(ヒロインにベタベタする男の幼馴染がいるが、お互い恋愛感情はないとか言い出すやつみたいなのとか、男側に昏い過去とセットのガチなコンプレックスあるとか)がないと病まないよね……? とか思うわけですよ。
そこら辺の設定の説明もかったるいしなぁ……と思う時点で、ダメなんだなぁと気づきました。ヤンデレを上手く書く作家さんは、その辺りがこなれていらっしゃる。つまり、これこそが数多のヤンデレを吸収した上でより良いヤンデレヒーローを世に放つことができる経験値の差。
やはり餅は餅屋。ヤンデレはヤンデレ屋さんに任せるべき。
……と考えて、私はヒーローを自分の大好きな『恋愛不器用マッチョ騎士』に変えました。
全然違うじゃん! 急ハンドル切りすぎたよ! とツッコミが聞こえてきそうですが、これに変えた途端にサクッと続きが思いつけたのですから、私のハンドル捌きは間違っていないと断言します。
お陰でなんとか一本書き上げることができたので、少しだけスランプを乗り越えられそうかな〜? うーんどうかな……。と言う状況です。
これからも自分の大好きな、所謂ヘキに従って小説を書き、少しづつ調子を戻していこうと思います。
あ、私のヘキですが。
つよつよヒロイン、マッチョ騎士、恋愛ポンコツ(男女ともに)、主人を敬愛しすぎて様子のおかしいメイド、男装女装、カッコイイババア、女子校の王子様、意外な結末などなどです。
結構範囲が広い割にはクセ強が多いなぁ……(;´∀`)まあいっか。
宣伝です。
『ヨロイマとカシオ』はこちら
https://ncode.syosetu.com/n6955jk/7/
以前、異世界で恋愛!ジェネレーターのお題を使って書いた他の話はこちら。
『あなたは私の宝物 〜イケオジ執事の秘密は、殺し屋の令嬢に暴かれる〜』
https://ncode.syosetu.com/n8830kq/
(お題:『隙あらばくっついてくる老紳士と、殺し屋の侯爵家の令嬢の、人間の本性がむき出しになる恋愛を考えてください。』)




