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第33章 悟の最期
悟は手元の古い写真立てを見つめていた。子供の頃、父と釣りに行った時の笑顔がそこにある。静かな水面、風に揺れる草、あの時の匂いと感触を思い出すと、胸の奥が熱くなる。
「こんな場所で終わるなんて、思ってもみなかったな…」
小さくつぶやくと、傍らの翔子が手を握った。
「悟くん、安心して。もう怖くないよ」
悟は彼女の手の温もりに目を閉じ、過去の後悔や苦悩を順番に頭の中で整理した。社会に出ても居場所がなかったこと、失敗の連続、傷つけた友人たち……すべてを静かに受け入れる。最後に微笑むと、翔子の肩に顔を寄せた。
「ありがとう、翔子。君と一緒でよかった」
時間はゆっくりと、しかし確実に流れ、悟の呼吸は静かに消えていった。彼の手は翔子の手の中で、温もりを最後まで残していた。




