第24章 脱出の計画
夜。
カーテンを閉め切った悟の部屋に、志願者と誠が集まっていた。
ベッドの上では、美咲が浅い呼吸を繰り返している。彼女の存在が、この集まりの意味を変えていた。
光輝が机に広げたノートに、即席の地図を描き込む。
「俺たちが通った地下のルート、あそこから搬送が行われてるのは間違いない。だが出口はまだ確認できてない」
悟が身を乗り出した。
「搬送先につながる“外”への通路があるはずだ。そこを逆に利用するんだ」
弘子が不安げに言った。
「でも、見つかったら……」
正弘が妻の手を強く握りしめた。
「見つかるかどうかじゃない。生きるかどうかだ。俺たちが黙って処理されるのを待つわけにはいかん」
翔子が小さな声で言葉を継いだ。
「美咲さんを、このまま見殺しにしたくない。私……もう、誰かが消えるのを見るのは嫌です」
その目には恐怖よりも決意が宿っていた。
誠は全員を見渡し、低く言った。
「脱出は可能だ。ただし、二つの条件がある」
皆が息を呑む。
「一つは、監視をかいくぐるために職員の誰かを利用すること。もう一つは、美咲を安全に運ぶ方法を確保することだ」
光輝が即座に言った。
「川添……だな。あの人は揺れてる。利用できる」
翔子も思い出したように呟く。
「荒川さんも……全部を否定してなかった」
悟が強く頷いた。
「どちらかを味方につける。それが鍵だ」
沈黙が流れた。
正弘がゆっくりと口を開いた。
「俺たちは死に、来たはずだった。だが、今は違う。……死ぬ前に、せめて人間らしく抗ってみたい」
弘子は夫の手を握り、涙をこぼしながら頷いた。
翔子が悟を見つめた。
「……生きるために、一緒に戦ってくれますか?」
悟は迷わず答えた。
「ああ。俺はもう逃げない」
こうして、彼らの心は一つに固まった。
施設からの脱出。
死を待つための場所から、生を奪い返すための戦いの場へ。
誠はノートに大きく一行を書き込んだ。
《目標:美咲を連れ、外へ出る》




