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第13章 探偵の糸口

 宮本誠は、庭に面した廊下の影に立っていた。

 窓越しに見える志願者たちの姿を、息を潜めて観察する。


 悟が真剣な顔で何かを語り、翔子がうつむきながらも時折うなずく。光輝は腕を組み、塩谷夫妻は静かに耳を傾けていた。

 その表情には、昨日までの「ただ死を待つ者の諦め」はなかった。代わりに「確かめようとする意思」が宿っていた。


 ――動き出したか。

 誠は心の中で呟いた。


 彼は前夜の出来事を思い返した。

 廊下で見た依頼人の娘の幻影。壁に残された紙切れ。《ここでは死んだ者が消えない》。

 単なる幻覚や噂では片づけられない。確実に「何か」がここにはある。


 そして今、志願者たち自身もそれを感じ取り、声に出し始めている。

 ――俺一人より、彼らと組んだほうが真実に近づける。

 探偵としての勘がそう告げていた。


 だが、同時に危惧もあった。

 彼らは死を望んでここに来た。心が不安定な彼らを巻き込めば、真実を暴くどころか、逆に施設の罠に絡め取られるかもしれない。


 誠は窓越しに翔子を見つめた。まだ十七歳の少女。依頼人の娘と年齢が重なり、胸の奥がざわつく。

 ――この子まで消えるのを、黙って見ているわけにはいかない。


 その夜、誠はノートにこう記した。


 《志願者たちに協力するか否か。選択の時が迫っている》

 《だが施設は監視を強めている。昨日の警告文も無視できない》

 《次の一手を誤れば、俺自身が“消される”》


 ペン先が止まり、誠は深く息を吐いた。

 探偵としての冷静さと、人間としての情がせめぎ合う。


 翌日、再び庭で談笑する志願者たちの輪に、誠はゆっくり歩み寄った。

 悟が顔を上げ、怪訝そうにこちらを見る。

 誠は一呼吸置き、低い声で言った。

 「……もし、本当にここで“おかしなこと”を感じているなら、俺も力になれるかもしれない」


 その瞬間、全員の視線が彼に集まった。

 疑いと期待と恐怖が入り混じった眼差し。


 こうして探偵と志願者たちの運命は、静かに結びつき始めた。



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