表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カチコミ・イレブン 〜北野高校女子サッカー部、全国制覇への盃〜  作者: やしゅまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/44

第34話「女帝の庭 ― 鳳凰学園視点」

全国大会準々決勝の舞台を目前に控えた、鳳凰学園の練習場。

 人工芝のピッチは夕陽に照らされ、黄金色に染まっていた。ボールが転がるたび、まるでその光をまとったかのように眩く輝く。


 「パスを出せ! ……そうだ、麗奈に預けろ!」

 監督の檄が飛ぶ。その声に応えるように、ボールは一度また一度と繋がれ、最終的に必ず一人のもとに集まる。


 ――天城麗奈。


 華やかなブロンドを後ろで束ね、鋭い眼差しを向ける少女。

 ボールが足元に収まった瞬間、ピッチの空気が変わる。まるで観客席まで息を呑んだかのように、張りつめた静寂が流れる。


 「行ってください、女帝!」

 チームメイトの声援を受け、麗奈は軽やかに前へと駆け出した。


 最初の一歩でディフェンスを抜き、二歩目で軸足をずらしてフェイント。

 そして三歩目には、すでにゴール前。振り抜いたシュートは一直線にネットへ吸い込まれる。


 「ゴオオオルッ!」

 練習試合の相手チームは顔を青ざめさせ、あっという間に崩壊していった。


 監督は腕を組み、冷静に頷く。

 「――麗奈に預けろ。それが勝利への最短距離だ」


 味方選手たちも迷いなくうなずいた。

 「はい、女帝」

 その声には忠誠と畏敬の色が滲む。


 麗奈にとって、それは当然の光景だった。

 自らの才能の前に、戦術も小細工も不要。必要なのはただ――彼女へボールを預けること。


 ◇


 練習後、ロッカールームの鏡の前に立った麗奈は、乱れた髪を優雅にかき上げた。

 「任侠サッカー……?」

 口元に嘲笑を浮かべる。


 話題には上がっていた。修学院を倒した無名の高校、北野高校。任侠だとか、筋だとか、奇妙な言葉を掲げて全国を席巻していると。


 だが麗奈にとって、それは滑稽な見世物でしかなかった。

 「くだらない。小細工もデータも、そんなもの私の才能の前では無力」


 鏡に映るのは、自信に満ちた女帝の姿。

 「女帝に敗北はない」

 小さく呟いたその声は、冷たく響き、空気を震わせた。


 ◇


 チームメイトの一人が、おずおずと口を開いた。

 「……でも、あの北野って学校、修学院を倒したらしいです。全国でも有数の頭脳派を……」


 麗奈は振り返り、氷のような眼差しで一瞥した。

 「修学院? だから何?」

 声は低く、しかし絶対的な威圧を帯びている。


 「頭脳だろうと筋肉だろうと、最後に蹴り落とすのは私。――ただそれだけよ」


 チーム全員が息を呑んだ。だが次の瞬間には「はい、女帝」と頭を垂れる。

 誰も逆らわない。誰も疑わない。


 麗奈が絶対だからだ。


 ◇


 夜の練習場。静寂の中、一人ボールを蹴り続ける麗奈の姿があった。

 ゴールへ放たれるシュートはどれも正確無比で、ネットを激しく揺らす。

 「修学院を倒した? だから何?」


 再び自らに言い聞かせるように呟き、ボールを強烈に叩き込む。

 その一撃は、まるで次なる獲物を屠る女帝の宣告のようだった。


 ――北野高校よ。任侠とやらで笑いを取るのもここまで。

 次の試合、女帝が蹴散らす。


 その確信が、麗奈の胸には揺るぎなく刻まれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ