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カチコミ・イレブン 〜北野高校女子サッカー部、全国制覇への盃〜  作者: やしゅまる


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29/44

第29話「任侠旋風 ― 地元とSNSの沸騰」

聖都学園撃破の翌日。

 朝のニュース番組は、いずれもこの一戦を大きく取り上げていた。


 『全国高校女子サッカー選手権、波乱! 無名の北野高校が強豪・聖都学園を撃破!』

 『勝因は“任侠投げ”!? 奇抜すぎるロングスローに会場騒然』

 『賛否両論、筋を通した勝利か、はたまた反則スレスレの荒技か』


 スタジオのコメンテーターが口々に持論を述べる。

 「いやぁ、あれはサッカーじゃないですよ。全然美しくない」

 「でもね、会場は盛り上がってましたよ。こういうチームが一つあると、大会が面白くなる」


 SNSはさらに賑やかだった。

 《#任侠投げ》《#最後のカチコミ》《#北野旋風》――いずれもトレンド上位に並び、切り抜き動画やGIFが秒単位で拡散されていく。

 「何回見ても草」「飛び込み方が完全にプロレス」「美を砕く拳、名シーンだ」

 賛美も批判も渦を巻き、北野の名前は全国に轟いた。


 ◇


 地元・北野商店街は、その日まさに祭りだった。

 八百屋のオヤジがテレビを外に出してリプレイを流し、通りがかった客が「心愛ちゃん、よう飛んだばい!」と声を弾ませる。

 たこ焼き屋の屋台には《祝!北野高校二回戦突破》の張り紙。焼きたてのたこ焼きを手にした子どもたちは、店の隅でボールを持ち「任侠投げごっこ」に夢中だった。


 「よっしゃー! オレ、梨花やるばい!」

 「じゃあオレは舞ちゃん! 止めに行くばい!」


 見守る大人たちは笑いながらも、胸の奥にじんわりと誇りを覚えていた。

 近所の農家のじいちゃんは、新聞を握りしめて涙ぐむ。

 「ワシらの筋が、都会に通じたんやなぁ……」


 北野高校女子サッカー部は、単なる部活の一チームではなく、地域の希望そのものになりつつあった。


 ◇


 一方、その中心にいる舞は浮かない顔だった。

 学校の部室で、メンバーと喜びを分かち合ったあと、一人グラウンドに残っていた。

 「……私たちのサッカーって、本当に認められてるのかな」


 舞の脳裏には、テレビでの辛辣な言葉が蘇る。

 “泥臭いだけ”“時代遅れ”“奇策頼み”――。

 勝ったはずなのに、胸に広がるのは妙な空虚さだった。


 そこへ、煙草の煙とともに竜司が現れる。

 「なんだ、泣き顔やないか」

 「……泣いてない」

 「じゃあ、悩んどる顔やな。お前、評論家のオッサンらの言葉、気にしとるやろ」


 図星を突かれ、舞はうつむいた。

 竜司は煙を吐き、空を見上げる。

 「筋はな、数字や流行で測れるもんやない。お前らは自分のやり方で勝った。それが全てだ」

 「でも……」

 「でももクソもあるか。いいか、筋は通したもん勝ちや。都会の理屈は、勝ち星の前じゃ黙るんや」


 竜司の言葉に、舞は小さく頷いた。

 (筋を通す。それだけでいい――)


 ◇


 その夜。

 スポーツニュースは次なる対戦相手を報じた。

 『三回戦、北野高校の相手は修学院大付属高校。戦術派の乾智也監督率いる知略集団だ』


 画面には、無表情でタブレットを操作する若き監督の姿。

 冷徹な眼差しに、舞は思わず息をのむ。

 「……次は、簡単にはいかないかもしれない」


 しかし、その横で梨花が大口を開けて笑った。

 「データや戦術やゆうても、任侠投げは止められねぇ! 次もカチコミ決めてやるぜ!」


 笑い声が夜空に響く。

 北野の任侠旋風は、まだ始まったばかりだった――。


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