第22話「全国初戦 ― 任侠の体当たり」
全国大会一回戦――北野高校と修羅原高校の激突。
観客席からは「地方代表の噛ませやろ」と冷笑が飛んでいた。対する修羅原は統率の取れた布陣、軍隊のような入場に会場は圧倒される。だが、その空気を切り裂くように、竜司を先頭に法被姿の北野一家が乱入した。会場から失笑が漏れるも、舞たちの瞳はぎらついていた。
ホイッスルが鳴る。
開始早々、修羅原の主将・鬼嶋葵が重機のようなタックルで舞からボールを刈り取った。スタジアムに「ドッ」と衝撃音が響き、観客がどよめく。即座に相良紅葉がカウンターに走る。
だが――正面から立ちはだかったのはセンターバックの梨花だった。
「軽トラ引いた脚力、舐めんなよッ!」
葵の突破力に負けない勢いで体ごとぶつかり、紅葉を止める。二人の衝突音にスタジアムがざわつく。解説者が呻く。
「今の、男子選手でも止められないタックルだ……」
観客の空気が一瞬で変わった。
北野も攻撃に転じる。紗季が囮となって突っ込み、舞へと落とす。舞のシュートが放たれるが、そこに立ちはだかったのは再び葵。鉄壁の守備に弾かれ、芝に叩きつけられる。だがすぐに駆け寄った紗季が手を差し伸べ、舞を起こす。
「まだ終わってないよ」
その笑みに舞は歯を食いしばり、立ち上がった。
ゴール前では、美咲が奮闘していた。紅葉の鋭いシュートを横っ飛びで阻止しながら叫ぶ。
「畑に来るカラスやイノシシに比べたら、全然遅いっす!」
観客席から笑い混じりの歓声が上がる。
セットプレーでは、梨花と葵が真正面からぶつかり合った。
「軽トラで鍛えた背筋力、見せてやるよ!」
葵も負けじと体を預ける。ゴンッ、と鈍い音が響き、二人は一歩も引かない。
「女子でここまで受け止める奴がおるんか……」葵が初めて驚きを見せる。
一方で、紗季は何度も囮にされ、相手DFに潰される。それでも立ち上がり、顔を歪めながらも言い放つ。
「点を獲るためなら骨が折れても構わない……」
その覚悟に観客のざわめきが熱へと変わっていく。
前半終了間際、修羅原の連携から決定機。ゴール前にボールが流れ、スタジアムが沸く。しかし、美咲が身体ごと飛び込みシュートコースを塞いだ。
「セービングで畑守った女にかかれば、ゴールなんざ余裕っす!」
ボールは枠を逸れ、スタンドから大歓声。
すぐさま舞が拾い、カウンター。タッチライン際を駆け上がり、一年の心愛へと託す。
「行け、心愛!」
心愛は冷静にスルーパスを通す。走り込んだのは紗季。観客が一斉に立ち上がった。
「抜けた――!」
しかし、シュートの瞬間に葵が間一髪で滑り込み、ボールはゴール右へ逸れた。
直後、前半終了の笛が鳴る。
スコアは0-0。
「北野が……無失点で前半を終えた……?」実況の声が震える。
修羅原のベンチもざわめいていた。葵は歯を食いしばり、低く呟く。
「ただの地方代表じゃねぇ……」
北野のベンチでは竜司がタバコをふかしながら笑っていた。
「上等や。後半は盃割って決めに行け」
任侠と修羅――前半戦は互角。
全国の舞台に、北野一家の名が刻まれ始めていた。




