第19話「修羅場に備えろ!任侠トレーニング」
県大会を制し、北野高校女子サッカー部――通称「北野一家」は、次なる舞台・全国大会へ歩を進めた。
だが竜司にとって、その準備に普通の練習など必要なかった。
「いいかお前ら。全国は街のチンピラの集まりやない。極道が揃う修羅場だ。そこに殴り込むんやから、鍛え方も本物にしなきゃいけねぇ」
場所は竜司の畑。農機具、巨大な水タンク、軽トラまで揃った“任侠式トレーニング場”だった。
舞たちは呆れ半分、不安半分で竜司の号令を待つ。
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軽トラ引き走
「まずはこれだ!」
竜司が指差したのは、畑に停められた年季の入った軽トラックだった。ロープを前に括りつけて、全員が順番に引っ張る。
「全国仕様に体仕上げるぞ!軽トラ引ける奴なら全国の相手にも余裕だ!」
竜司の怒号が飛ぶ。
先陣を切った舞が、必死にロープを握りしめる。地面に爪を立てるような形で一歩一歩進むが、軽トラはビクともしない。
「ぐっ……! これが……全国レベル……!」
舞は倒れ込みながらも必死に前へ。最後には仲間たちの声援で数メートル動かし、涙と汗にまみれた顔で笑った。
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害虫セービング
次はゴールキーパー・美咲の番。畑に集まるカラスを追い払いながら、竜司は叫んだ。
「美咲! あいつらを全部シュートやと思え!」
カラスが急降下し、モグラが土を跳ね飛ばす。さらにはイノシシまで乱入してきた。
「監督! カラスは反則っすよ!」
「全国じゃ審判なんざ甘くねぇ。全部止めろや!」
美咲は全身を投げ出して飛び込み、見事にイノシシをブロック。畑の観客――農家のおじさんたちから大歓声が上がった。
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水タンク&相撲
「次は上半身だ!」
竜司が取り出したのは、消毒用の三百リットルタンク。水でパンパンに満たされている。
心愛と紗季が挑戦するが、二人がかりでもほとんど持ち上がらない。
「監督、これサッカーの練習っすか?」
「筋肉は裏切らん。全国で通じるんは筋と覚悟だ!」
その後、梨花が一人でタンクを抱え上げ、周囲がどよめく。さらに竜司との相撲勝負にも挑み、土まみれになりながらも膝をつかせかけた。
「誰が相手でも仁王立ちだ!全国だろうが、通さねぇ!」
梨花の叫びに仲間たちは震えた。
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盃リレー
最後のメニューは「盃リレー」。実際は水の入ったバケツを徳利と呼び、リレー形式で運ぶものだった。
「一滴でもこぼしたら筋通せねぇ奴扱いだ! 腕立てスクワット百回だぞ!」
紗季は顔をしかめた。
「これ……サッカー関係あるの?」
竜司は煙草を咥えたまま吐き捨てる。
「盃守れねぇ奴は全国で裏切られるんだ!」
その言葉に全員が黙り込み、真剣な表情で徳利リレーを繋いだ。
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敵の影
練習が一段落した頃、舞がスマホで全国の組み合わせを確認した。
「監督……初戦の相手、修羅原高校です」
竜司の眉がピクリと動く。
「修羅原……噂には聞いてるがあそこは筋金入りの連中だな」
舞は続けた。
「主力のセンターバック、鬼嶋葵。『男子並みのフィジカル』『FWを潰す怪物』って噂されてます」
その言葉に梨花の瞳が燃え上がる。
「上等だ。全国の仁王立ちが誰か、証明してやる」
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締め
夕暮れの畑。竜司は全員を見渡し、静かに煙を吐いた。
「力こそ正義? 笑わせんな。筋と覚悟がある奴らが最後に立つんだ。お前ら、北野一家の名を全国に刻むぞ!」
部員たちは声を合わせた。
「オオオオッ!」
畑に拳を突き上げるシルエットが並び、全国編の幕が切って落とされた。




