第1話:まさかの結婚、ギャル妻登場!? クラスでは他人、家では甘々新婚生活
短編集だけではちょっと物足りなかったので…
これから連載版にして掲載していきます。
掲載する頻度は減りますが、どうぞ温かい目で。
俺、真中悠翔。
高校三年生、ごく普通の男子高校生――だった、昨日までは。
本当に、それまでは平凡そのものだったんだ。
朝はギリギリに登校して、授業では寝落ち寸前。
昼休みは地味な友達数人と弁当をつつき、放課後は即帰宅。
彼女なんてもちろんいないし、スクールカーストで言えば底辺に近い“その他大勢”。
何の波乱もない、地味で退屈な高校生活。
でも、俺はそんな日常に、ささやかな安心感すら感じていた。
――昨日までは、な。
◆
「なぁ、お前ら、如月見た? 今日もヤバかったわ。マジで芸能人オーラ半端ない」
「いや、芸能人じゃん。『Seven☆Days』のセンター、NANAだぞ? 国民的アイドル様だぞ?」
「ライブで最前列だった俺から言わせてもらえば、マジでステージ上の百倍カワイイ」
朝の教室は、いつものように男子たちが盛り上がっていた。
話題の中心は、もちろん――如月七海。
この学校のトップ、一軍ギャルで、そして――
国民的アイドルグループ“Seven☆Days”の不動のセンター、“NANA”。
白い肌に、艶やかな金髪。
スラリと伸びた脚に、モデル並みのプロポーション。
制服の着崩し方ひとつとっても、完璧なバランスで“ギャル”の美学を貫いていた。
誰もが憧れる存在。
誰にも届かない、高嶺の花。
俺なんか、話したこともない。
もちろん目が合ったこともない。
たぶん、顔も名前も覚えられてないだろう。
学校では、俺と如月七海は住む世界が違った――
少なくとも、“学校では”。
でも。
俺は昨日、彼女と……籍を入れた。
「……昨日、婚姻届、出しました。俺と、如月七海が」
これ、冗談でも妄想でもない。
正真正銘、事実だ。
俺、真中悠翔――ごく普通の男子高校生が、
国民的アイドルと、極秘で、結婚したんだ。
◆
放課後、俺は誰にも気づかれないように帰宅し、自宅の鍵を開けた。
「おかえり、悠翔♡」
リビングに飛び込んできたのは、
学校では“氷の女王”とか“高嶺の花”とか言われてる如月七海――が、
ゆるっとしたパーカーにショートパンツという部屋着姿で、満面の笑み。
まるで別人だ。
いや、別人すぎる。
ふわりと甘いシャンプーの香りが漂い、
素足の彼女が小動物みたいに俺に抱きついてくる。
「今日はね、先にお風呂沸かしておいたんだよ?
それとも……ご飯がいい? それとも……」
すっと腕が俺の首に回され、耳元に吐息まじりの声が落ちる。
「……私?」
……心臓止まるわ。
マジで死ぬ。
あの如月七海が、何甘々全開してるんだよ。
「や、やめろ七海……! 心臓持たないから……」
「じゃあさ、悠翔の心臓、私のと交換しよ?♡
私のドキドキ、ぜーんぶ悠翔にあげる」
そんな甘いセリフを、涼しい顔で言ってくるんだ、この人は。
顔、真っ赤なの俺だけじゃん。ずるい。
だけど――
そもそも、どうして俺が如月七海と結婚したのかって?
話は、三日前にさかのぼる。
◆
あの日、俺は突然、芸能事務所の人間に呼び出された。
最初は何かの間違いだと思った。
けど、事務所の重役みたいな人が、真剣な顔で切り出した。
「如月七海を守るため、極秘に“結婚”してほしい」
……は?
意味がわからなかった。
彼らの説明によれば――
未成年である七海には、芸能界のトラブルから守るための「保護者」が必要。
ただ、普通の親族だと、芸能界の闇に対抗できない。
そこで、最も七海が信頼している存在――「法律上の夫」として俺を選んだ、というわけだ。
「なんで俺なんですか……?」
震える声でそう問いかけた俺に、
事務所の人は、ふっと微笑む。
「七海ちゃんが、“真中くんがいい”って言ったんだよ」
信じられなかった。
俺なんて、クラスでも空気みたいな存在だったのに。
でも、本人が――こう言った。
「前から、悠翔くんの優しさ……ずっと見てたんだよ?」
落ちてたプリントを拾った時も、
誰かがいじめられてた時にさりげなく庇った時も――
七海だけは、ちゃんと見てたんだって。
誰にも気づかれない、地味な俺の行動を。
だから彼女は、俺を選んだ。
自分を守る“夫”として。
……とはいえ、心の準備ができるわけもなく。
◆
「……思い返しても、やっぱ現実味ねぇ……」
湯気の立つ風呂で、俺はため息をつく。
学校では存在しない扱い、
家では世界一愛されてる旦那。
このギャップ、どう処理すればいいんだよ。
脱衣所から聞こえてくる七海の声。
「悠翔~、今日は一緒に寝よ?」
……死ぬ。
幸せすぎて死ぬ。
いや、まだ死ぬわけにはいかない。
だって明日はまた、あの“冷戦”が待ってるから。
◆
翌朝。
登校した俺は、教室で意を決して声をかけた。
「お、おはよう如月……」
……その瞬間、彼女の目が氷のように冷たくなる。
「……誰?」
はい、出ました。“氷の女王”モード。
「話しかけんな、キモ」
うわぁぁぁぁぁぁ!!
クラスメイトたちがざわめく。
「真中、調子乗んなよ」
「お前が如月に話しかけていいと思ってんのか?」
そんな痛い視線が、突き刺さる。
でも俺は知ってるんだ。
この冷たい態度は“カモフラージュ”でしかないって。
だって放課後、家に帰れば――
「悠翔、おかえり♡ 今日も大好き」
世界一甘い、七海が待ってるから。
でも、こんな二重生活――
いつまで、続けられるんだろうな……。
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