第二話 仙士
最近、俺たちの訓練はかなり順調である。ユウキはサイボールを極めている。因みに技名にも凝っていて、ネーミングセンスはあるのだが長すぎて覚えられないような名前をつけている。確か破壊龍袍聖犀なんちゃらだったような・・・とにかく長いのである。齋はと言うと、数学の専門書を読みふけっている。演算子が進化し、自動演算になっていた。頭が良くなりすぎて、最近は齋の言っている事がよくわからない。a+b=cが成り立つ自然数(正の整数)a、b、cにおいて、積abcの素因数は無限にあるだの何だの言っていた。頭の良さが1.3倍になりIQが150を超えた俺にもわからないということはABC予想はよっぽど難しいのだろう。俺はというと、物理攻撃と運動をひたすら究めている。最近、千メートルを五秒で走れるようになった。これくらいの運動能力がないと魔獣討伐は厳しいのである。さて、俺たちの実力もそろそろ一段に合格できるくらいになったかな。一段の受験を申し込んでみよう。一級と一段の間では大きな差があると師匠が言っていたが、大丈夫だ問題ない。
二日後、受験票が届いた。時刻は午前十時に武道館に集合。そろそろ十時だからいかないと。五分前行動は面倒くさいね。
武道館についた。相手は魔王。魔王というのは種族名である。決して王というわけではない。すべての攻撃に耐性を持ち、魔法に特化している。精神攻撃には気をつけないとな。
始まった。いきなり支配を仕掛けてくる。こんなもので俺を倒せると思ったか…ん?齋からテレパシーが来た『超速演算』によると、色々な仕掛けがあるらしい。モロに食らったらやばい!と思った瞬間俺は抵抗した。結界を張る。危機一髪。続いてユウキが『破壊龍袍聖犀纓樊!!』と叫ぶ。そんな技名だったなそういえば。魔王は倒れた。あれ、以外に雑魚い?HPも少なかったから、一撃必殺型なんだろう。
「お見事」試験官は言う。次は二段の試験。これは余裕だろう。
今度は俺の出番。相手が魔神なので、少し苦戦したが、勝った。これで三段だ。次は四段だ。余裕余裕。
相手は竜神二匹。体長二十メートルほどある巨体をゆすぶりながら俺たちと戦うのを待っていた。
「スタート!」いきなり俺等は協力プレーを見せつける。齋の超速演算による三角関数、ユウキの破壊龍袍聖犀纓樊、俺のサイキック・洛天依が合成され炸裂する。なんだか最近技名が漢字になってきているような気がする。それはともかく、もう一撃。五次方程式、破壊龍袍聖犀都、月光仙がまたもや発動。竜神は吹き飛ぶ。だが、反撃は速い。その爪は俺を捉えていた。俺に命中。いや、当たっていない。当たる直前に、時間を止めているのだ。そしてそのまま背後に移動して首に手刀を叩き込む。戦闘終了だ。
次の四段は、今までで一番強い。聖羅という。難しい字だな。物理攻撃と魔法を自在に操り、かなり厄介だ。「始め!」開始と同時に攻撃を仕掛けてくる。俺はサイキック・洛天依で対抗する。しかし、効かない。そこで、時間を止める。
「今のうちに……」俺は破壊龍月光京を発動。聖羅の全身が破裂し、消えた。
「合格」試験官が告げる。順調にクリア。だが、五段で俺は自分の無力さを知ることになる。
戦闘相手は、月鬼二匹だ。月鬼は最強の種族の一つである。物理攻撃が得意な反面、魔法は不得意である。この世界では珍しいタイプだ。
俺は破壊龍月光京とサイキック・ルオテーレ、三角関数、ルナアーラを同時起動し、齋が自慢の超速演算で最適化してくれる。ユウキは洛天依を改造し洛天依魔盾を作る。最強コンビネーション。だが、月鬼は構わず突っ込んでくる。俺がまず魔盾を構え、防御体勢をとる。そこへユウキが突進してくる月鬼を迎撃。ユウキが剣を振り下ろすと、その刃は魔盾と合体していた。
「行けー!」
魔盾が変形し、月鬼の首を切断する。さらに、サイキック・ルオテーレを発動して追い打ちをかけるが、「ばかめ、そっちは残像だ」という声が聞こえる。なるほど、視覚を惑わせるってわけか。ならば齋に超音波を使ってもらおう。超音波で相手の位置を常に把握し、俺らが攻撃する。
今出せる魔力を振り絞る。最強の奥義。『月光ノ牙』。俺の腕に月光の力を宿す。そして、俊敏性も、力も強化される。
「うおぉぉぉぉ!」
当然、避けられるわけもなく。月鬼二体は倒れる。
あと一撃。一撃で行ける。
しかし、俺のエネルギーがあと少しのところで尽きる。齋とユウキが戦うも、精彩を欠き劣勢を強いられる。その後はだんだん意識だ遠のいていき、何も覚えていない。目を覚ますとベッドの上だった。どうやら倒れたらしい。
「大丈夫ですか?」
「はい、何とか。でも、勝ったんですね」
「おめでとうございます!」
しかし、俺の不甲斐なさは消えなかった。最あとは齋とユウキの力で勝ったのだ。俺は無力だった。「そう自分を責めないでください。あの時は仕方がなかったのです。それに、あなたの必殺のおかげで倒せたのです。自信を持ってください。」と同僚の黄泉。
慰めの言葉をかけてくれる。だが、あまり嬉しくはなかった。
それから一時間後、俺達は師匠の下へ行く。Aランク昇格の証を貰いに行くのだ。なんと、サイガたちや赤丸たちも五段を受験中らしい。やるな、アイツら。
師匠からは祝福の言葉をもらった。Aランクになると実戦に駆り出されるらしい。何との戦いかと言うと、超能力を乱用する「狂者」や、街に出た魔獣たちを倒すらしい。実戦に駆り出される超能力者のことを仙士といい、月に二回くらいの頻度で実戦がある。仙士のなかにもランクがあり、一類、準一類、二類、準二類、三類、準三類、四類、準四類、五類がある。俺たちはなりたてほやほやなので五類だ。「これからは一層気を引き締めて任務にあたるように!」
「はい!」
「では解散!」
俺らは家へ帰る。今日はゆっくり休もう。
翌日、俺達には新たな指令が下された。「狂者」の討伐だ。
「狂者は、恐ろしい超能力を持っている。くれぐれも気をつけるのだぞ。」と師匠。一回目の討伐は、山の中。テレパシーを使い、常に連絡を取り合う。狂者は山の中のどこにいるか見つかっておらず、捜索からしないといけない。齋の超音波で探知する。だが、いない。おかしいな。すると、俺らの背後から何かが迫ってくる。
「!!」
齋の超音波を跳ね返した!?そうか、コイツらがs狂者か!集団で犯罪行為を犯す狂者。俺がサイキック・ルオテーレを発動しようとすると、突然ユウキもサイキック・ルオテーレを発動させる。サイキック・ルオテーレの多重攻撃。五人の狂者のうち一人に怪我を負わせる。だが、さすが狂者。一筋縄ではいかない。
即座に回復し、俺たちを襲ってくる。今使ったの結構高位の魔法だよね?見えたよ。続いて齋がサイキック・ルオテーレ・プロを発動する。これは、俺が使うサイキック・ルオテーレの上位互換だ。
俺は転移?を使って狂者たちの後ろに回り込み、狂者たちの動きを止める。?がついているのは、俺のオリジナル転移だからだ。普通、転移には魔力を大量に要する。しかし、俺は自分の足で地面を蹴り上げ、後ろに転移したように見せかけるのだ。効率、こっちのほうがだいぶいいよね?そして、ユウキがトドメをさす。戦闘終了。
その後、狂者の隠れ家を発見したので、そこを叩くことにした。だが、齋の超音波によると相当な数の狂者がいるようなので、偵察をして師匠に知らせることにした。偵察をしていると、サルモネラ菌が入ったシャーレに祈りを捧げているのが見えた。どうやら狂者は宗教団体であったようである。そこにいる人数は少ない。そこで、作戦を考えた。まず、俺とユウキで奇襲をかける。俺がサイキック・ルオテーレ・エクセリオンを発動し、ユウキは破壊龍月光京を使う。この技は、サイキック・ルオテーレ・エクスカリバーをヒントに作られた。まず奇襲をかける。首元を俺の腕が打ち、脳震盪を起こさせる。次にユウキがブラックホールで取り込む。これで三人くらい片付けた。さあ、気
づかれないうちに師匠に報告に行こう。ついでにシャーレも持っていく。
「なんじゃこりゃ?サルモネラ菌?」
「はい。どうやら狂者達はカルト宗教のようです。」
「なるほど。狂者がこんなにいるとは。」
「はい。それと、狂者はカルト宗教でした。」
「何だと!?それは大発見だな。それと、場所はどこだ?」
「大きな川にある砦です。」
「ならば明日、その砦を叩こう。狂者は何人くらいいたか?」
「ざっと三百七十人です。」
「五類の仙士を五十人くらい出すから、お前らが総大将として行ってこい。」
「はい!」
翌朝、早くから五十人を引き連れて砦に向かった。狂者を皆殺しにするわけではなく、捕らえて狂者の正体を暴くつもりだ。
それに、狂者の親玉を殺せば、狂者も大人しくなるだろうし。
「皆、準備いいか?」
「はい!」全員元気よく返事をする。
「行くぞ!」
「おおー!!」
「突撃!」
仙士たちが突入していく。俺は本陣と分かれた別働隊の指揮を取る。人数は六人。俺、サイガ、赤丸、蒼一郎、昌磨、雷華だ。昨日のシャーレのところに入り込む。誰もいないみたいだ。俺は敵を探索する。すると、最上階の部屋に集まっていることがわかった。しかし、どんな罠が仕掛けてあるかわからない。そこで、俺の分身を先に行かせるようにした。トラップはないようだ。あっさりたどり着いた。齋やユウキが指揮を取る本陣を呼び寄せる。五十人揃ったな。それでは突撃しよう。
「みんな、いくぞ!」
「おう!」
俺たちは階段を駆け上がった。
「お、おい!あれ見ろよ!」
「なんだあの化け物は!」
「うわぁっ!」
俺の分身が暴れまわっている。
「今だ、突撃!」
「おお!」
仙士たちもやる気なようだ。みんなでなだれこんで混乱させている間に、俺は虚数空間、齋がサイキック・ネットで捕らえる。一人残さず行けたと思ったら、まだ一人残っていたようだ。俺はそいつも虚数空間に閉じ込める。狂者に水と食料と空気を与え、俺らはアカデミーへ帰った。「狂者どもは、カルト宗教だったらしい。教祖の名はサルモネラだ。狂信教の教祖である、狂者だ。サルモネラの目的は、世界征服らしい。狂者の能力は、狂信者を増やすことだそうだ。」
「そんなバカげたことを……」
「ああ、本当だ。」
さあ、洗いざらい吐いてもらおうか、狂者さん。
ボスっぽいやつの口が動いた。その瞬間、そいつはもだえ苦しみながら塵になって消えていった。そうか、サルモネラにお前らは統制されているんだな。サルモネラのやつ、許さない。ただ、一向に反省する気がない狂者もいるようだった。そいつはサルモネラの熱心な信者だった。サルモネラの悪口を言っただけで怒り出す始末。このままではいけないと思い、洗脳を解く方法を考えることにした。洗脳を解く方法は一つだけあった。催眠術だ。これしかない。早速実行することにする。
「皆さん、これからあなたたちの記憶を消します。安心してください。一瞬で苦しみから逃れられます。」
催眠術をかける。すべての信者がサルモネラの記憶を失い、普通の人間に戻った。よかった、よかった。
因みに記憶を消している間に信者の脳内を読み解き、サルモネラがサルモネラ菌を作る→信者がそれを飲む→超能力を得るという手順で力を得たということがわかった。
このあと、俺たち戦った仙士たちは、功績を讃えられ、準四類に上がることができた。めでたし、めでたし。サイガたちとは、仲良くなった。因みに、サイガと齋は同じ小学校出身だったようだ。
サイガと齋はその後も楽しそうに話をしていた。
「うんこ」
「うんこうんこ」
うーん、内容はしょうもないな。
師匠から話があるということで俺ら三人は師匠の部屋に集まった。
「お前らを特別に準三類に認定する。」
最初、俺は信じられなかった。その後に、嬉しさが込み上げてきた。俺の努力はこれまで、報われてこなかった。勉強も、学校生活も。しかし、今、努力が報われたのだ。
ユウキと齋も嬉しそうである。
そうしてしばらく平和な日々が続いた。平和すぎて、少し退屈だな。そう思っていると、アカデミーの中で狂者に出会った。一体どこから入り込んだんだ。そう思っていると、彼らは俺と一緒に戦った仙士だった。サルモネラ菌に感染してしまったのか。可哀想に。どうやら狂者がサルモネラ菌を媒介してしまったらしい。俺はそいつの洗脳を解くと、サルモネラ菌の消毒に回った。だが、仲間が足りない。そこで、ユウキと齋を呼ぶことにした。そうしたら、サイガや赤丸たちを読んできてくれて、人数が九人に増えた。足の早い蒼一郎が、師匠を呼んでくる。その間に俺らはサルモネラ菌を討伐する。なにせ、数が多すぎて対処しきれないのだ。集団で一つの魔物みたいに固まって襲ってくるのだ。しかも、俺の攻撃が効かない。だから、消毒用エタノールを使ったのだが、効かない。従来のサルモネラとは違うようだ。オキシドールを混ぜてみると、効果が少しあった。さらに、塩酸を打ち込む。塩酸はあまり効果がなかった。硫酸を試す。硫酸はすごい効果だった。オキシドールと硫酸を混ぜて液を作り、それをブラックホールで飲み込む。みんながシールドを作ってくれているおかげで、安心して作業できる。よし、大量に液を作れた。あとはそれを吐き出すだけ。いでよ、『ホワイトホール*ルナアーラ!』広範囲の毒攻撃。半分くらい消えた。その時、蒼一郎が師匠を連れて戻ってきた。「お前ら!大丈夫か?」
「はい、なんとか。」
「これは……サルモネラじゃないな。」
「はい、おそらく狂ったサルモネラです。」
「わかった。お前らは休んでいろ。」
「いえ、まだいけます!」
「いや、お前らに倒せるような相手じゃない。」
「それでも!」
「わかった。そこまで言うならお前らに任せよう。しかし、困ったら俺を頼るんだぞ。」
「はい、師匠!」
俺らはサルモネラたちを一点に集め、一気に倒す戦法を考えた。早速実行に移す。「みんな、行くぞ!」
「おう!」
「おう!」
みんなが一斉に飛びかかる。
「うぉーっ!!」
「うおおおおおお!」
みんなの風圧でサルモネラが集まった。俺は急いで硫酸と過酸化水素水の混合液を作り、一点に集中して吹く。はずしたら失敗。だが、俺にためらいはない。吹いた瞬間、サルモネラたちが消滅した。そして、そのままサルモネラの親玉の元へ飛んでいく。
「うおおお!」
「はあぁっ!」
「おりゃあっ!」
「せいやああ!」
みんながサルモネラの親玉を倒すと、俺らは声を上げて喜んだ。これでサルモネラの件は一件落着。
それからというもの、アカデミー内の消毒を徹底するようにした。これで、アカデミー内のサルモネラはいなくなったであろう。良かった、良かった。
その日は突然やってきた。
「緊急警報発令!アカデミー内に狂者が現れました。ただちに避難してください。」
「なに!?」
狂者の侵入を許しただと?一体誰が……。まあいい。俺が直々にぶっ潰してやるぜ!
だが、「何!?催眠術が効かないだと?」
ヤバい。催眠術が効かないと手段はない。どういうことだ、考えろ!斎!(奥義!人任せ)
「恐らくサルモネラの上層部かつ熱心な信者なので、自分の意志でサルモネラを体内にとどめているのだろう。」と齋。
それにしても、こいつの顔、なんだか見覚えがある。一体、何だ?
そうか、思い出したぜ…俺の両親を殺した爆弾魔だな…整形手術したからって、俺の目は簡単には欺けない。その時、ふつふつと怒りが湧いてきた。
「おい、お前。俺を覚えてるか」
「さあ、興味ないね。いちいち人の顔なんか覚えて無いや」
「俺はお前に両親を殺されたリムリンだ。覚えてるか?」
「ああ、思い出したよ。死んだ両親を前に泣きじゃくる君の姿、見ていて面白かったなぁ」
「許さねぇ…」
「ん?どうした?」
「お前の脳髄まで八つ裂きにしてやる!!!!」
それは、三年前のことだった。俺が小学五年生になったばかりのとき。両親とゲームを買いにデパートに行く途中の話だ。結構な雨の日だった。デパートの帰りに、雨が強くなってきて雨宿りのために交差点を過ぎて入った小さな路地。そこであの爆弾魔に出会った。両親の知り合いに化けて。
「こんにちは」
「あらこんにちは。今日はいい天気ですね。」
「今、雨降ってますけど…」
「あらすみませんでした。天気良くなかったですね」
こんな他愛もない会話を繰り返しているうちに、突然爆発が起きた。
「何ぃ!?」俺は瞬時に避けた。幸いにも当たりどころが良かったので火傷だけで住んだが、両親は致命傷を負った。倒れている両親を前に理性を失う俺。その俺にあいつはこう言った。
「クククッ、無様ですねぇ。どうです、何もできない無力感を存分に味わえましたか?」
俺の眼の前が真っ赤になった。俺は無言で立ち上がり、そいつの顔を殴った。殴り続けた。体力が切れるまで。だが、けんもほろろに突き飛ばされ、俺も骨折をすることになったのだ。怒りと怪我でそこから先は覚えてない。近所の親切なおじさんが見つけてくれて救急車を呼んだところから俺の記憶は途切れている。
気がつくと病院のベットの上だった。どうやら一日中眠っていたらしい。俺が起きると医師からこう伝えられた。
「左腕を骨折しています。あなたの回復力なら二週間で全治すると思いますが、それまでは動かさないように。」
俺のことなどどうでも良かった。それより、父と母はどうなったのだろう。
「なあ、俺の母さんは?父さんは?どうなんだ。」
「あなたの両親は、一日中昏睡していますが、手術をすればすぐに元のように治るでしょう。」
「嘘つけ!本当のことを言ってくれ!頼む!」
死んでいたとしても、一生植物状態だったとしても、正直に話してほしかったのだ。
「では、お話しましょう。あなたの両親は、かなり大きな損傷を受けています。手術がうまく行けば生きていけますが、あなたの母は一生車椅子での生活となるでしょう。」
俺は、両親が生きていられるということにホッとした。そして、両親が生きて戻ってくるということを励みにリハビリを頑張った。それなのに。病院に怪しげな人が入り込み、俺の親にお見舞いのヤクルトだと言ってサルモネラを大量に飲ませたと話を効いた。俺は両親の病室に走って向かった。その時にはもう手遅れだった。医師から「手術が成功する確率は限りなく低いです」と聞いたとき、思わず俺は泣き崩れた。そしてその様子を遠くから見て笑っているやつがいた。その時、俺は心に誓った。たとえ刑務所送りになろうと、サルモネラをどこまでも追いかけて殺すと。
そして今、偶然巡り合った。俺は即座に攻撃を始める。今俺が出せるすべての技を、全身全霊を込めて。地面を蹴る。空を舞う。踏み潰す。氷漬けにする。魔力は、使えるだけ使って、殺しにかかっているのだ。だが、俺もダメージを食らう。爆弾魔が波動を放ってきたのだ。『サルモネラ流奥義:サルモネラ拳!』波動に俺は吹き飛び、左足に傷を負う。俺はよろよろと立ち上がる。みんなが俺を助けようとするが、俺は断る。
「こいつは俺が直々に殺してやりてえんだ。手を出さないでくれ。」
みんなは不満そうに後ろに下がった。
刹那、波動の連撃が来る。演算子起動。最適解を見つけた。攻撃にはパターンがある。それを読み切り、爆弾魔の首へ迫る。瞬時に結界を張られた。くそ。こいつの反応速度、半端じゃない。だが、俺は結界ごと『ブラックホール』でそいつを飲み込んだ。ホワイトホールなど放出系の技をすべて組み合わせる。それが、俺の編み出した新技だ。
「これで終わりだ!サルモネラ爆弾魔!」
俺がそう叫ぶと同時に、爆弾魔は消えた。
「やったぞ!」
「勝ったんだな俺たち」
「やったな!」
みんなが喜び合う中、俺は背中に違和感を覚えた。
「まさかッッ!!」
後ろには爆弾魔。どうやら致命傷を負ったが、まだ俺を殺そうとするらしい。全てが、スローに見える。くそ、俺は何もできないままここで死ぬのか?
いや、まだ死ねない。脊髄反射で能力を発動する。俺は爆弾魔を洛天依で吹き飛ばした。首を落とし、戦闘終了。
みじん切りにしてやったぜ。
俺は、自分で定めた義務を果たしたのだった。
爆弾魔を倒し、復讐を遂げた余韻に使っていた刹那、背後に気配を感じた。「!?」こっちには音波がある、それなのになぜだ?考える間もなく迫ってくる。反射的に避けたが、そいつは方向を変えすぐに戻ってくる。「狂者」だろう。いや、狂者の進化種族、狂鉄者だった。鉄属性か。やっかいだな。顔を見ると、まだ子供のようだった。「これぐらいなら、俺一人ですぐ潰せる。」ユウキはそう言い、「彩玉」を使う。そんなときになって、最悪なことがわかった。
「あいつの超能力は想像をはるかに超えるぞ!」斎からの切羽詰まったテレパシー。「彩玉」はダメージ量が少ない。その分身体にも負担は少なく連続で出せるというメリットはあるものの、今回それを使おうとしたことはとんでもない間違いだったようだ。ユウキは慌てて「獅子玉」に変更しようとするも、ときすでに遅し。むしろ中途半端になり、ユウキは吹き飛ばされた。少し厄介だな。「大丈夫か!」「あ〜あ、こんな初歩的なミスしてさ、俺って馬鹿だなぁ。」なんて軽く言っていたが、全身痺れている。俺の回復を使って即回復させ、なんとか事なきを得た。「迷惑かけちゃったから、こっからは活躍していくぞ!」とユウキは意気込み、体勢を整えた。ここで齋からのテレパシーで新しい情報が出てくる。「あいつは刺客京。奇襲を使ってくるようだ。気をつけろよ!」まずはお手並み拝見。人の(しかもただ吹き飛ばされただけの)戦いをみても、ほとんどなにも分からなかった。「亜米利加鞘」を発動し、刺客京にパンチを食らわせる。当たった!コイツ弱ない?そう思ったとき、刺客京のオーラが変わった。猫が鼠を食う構図が、一気に逆転したかのようだった。そりゃあユウキもこうなるわ。俺も強い衝撃を受け、飛ばされながら回復と「サイ・ヴァーチカル」を発動させ受け身をとる。齋も驚いたようだった。「相当だなコイツ・・・」3人は同じ意見でまとま2る。齋からのテレパシー。「奇襲ってのは、相手が油断してるときほどやりやすいんだ!首を落とすまで気を引き締めていけ!」齋が「演算:四則」を発動。ダメージは入ったようだ。すると刺客京は、なにやらぶつぶつとつぶやきはじめた。なんだ?まあいいや。「このまま行くぞ!」と声をかけ、蹴り技「サイ・ヒール」を発動。命中する直前、刺客京の周りに無数の白い立方体のパーティクルが出現し、刺客京が見えなくなった。だがすぐに遠くには行けない。サイヒールは続行だ。足の甲に感触が。当たったようだ。よし!しばらくして、パーティクルが晴れてきた。中から刺客京が出てきたとき、さっきまでとは見間違えるほどデカくなっていた。その分体力も増えたようだ。「ふ〜ん、なかなかやるじゃん。まあここで遺書ぐらいは書かせてあげるけど、どうする?」上から声がする。「お前こそ、遺書がいるんじゃねえのか?ああ、字もかけないのか、可哀想に」と挑発してみたが、体の大きさに圧倒され声が震えた。ユウキが「読心」を使った結果、あいつのレベルはランクで言うと六段らしい。まあそういうことで俺らを騙そうとしているのかもしれないが。「さあ、今度は僕の番さ。」刺客京はそういい、俺の所へと向かう。手を広げて、その手を上にむけると、次にはその手に岩が乗っていた。「『クラッシュ・ロック』、発動!」物理攻撃なんぞ、俺には効かないぞ!俺は「ブラックホール」を作り出し、岩を取り込んだ。「ははっ。それで終わりとでも思ってるの?」上から声がした。まさか!岩はブラックホールから出てきたのだ。「光さえ出られない」からブラックホールなのに…。なんとか「サイ・ライフル」を使い、破壊することができた。「へえ、よくあの『クラッシュ・ロック』を破壊できたね。横のやつはどうかな?」次は齋のもとへ。齋は結界を張ったが、いとも簡単に破壊されてしまった。「サイ・ネット」を何十にも貼ったが、破壊は時間の問題だろう。と思っていたところ、刺客京が動けなくなった。齋が言う。「あれは『サイ・ネット:解』だ!こっちだって色々できるんだよ!」
「ちぇっ、つまんないの。もう一人のところへ行こうっと。」刺客京は、自分が引っかかった「サイ・ネット:解」の一枚目だけ破壊して、ユウキに近づいていった。「ああ、最初に吹き飛ばしたやつか。ならつぶせるや。」すぐに「サイ・バリア」を使うユウキ。だがそのバリアはとても脆弱で、もはや意味をなしていなかった。そんなとき、ユウキからテレパシーが届く。わかった。それなら行ける!「そんなので大丈夫かい?今回は見逃すよ。もう少し強くないと、こっちも楽しくないからね。」と刺客京が言い、ユウキは悔しそうな顔で戦線離脱した。「もう一度、俺たちのターンだ!行くぞ!」まずはさっきの岩を「ヒーリング・サイ」で修復。「サイコキネシス」で上空まで持ち上げ、刺客京の脳天へと直撃させる。刺客京の体力が少しだけ減った。よし!これを延々とやる。「姑息な…。」刺客京もイライラしてきた。俺にしかヘイトが向かなくなってきている。次は齋の番。「サイ・ブレイク」という連続で発動できる技で刺客京の体力は削られていっているのだが、刺客京はそんなことお構いなし。俺にばかり注意が向いている。(ちなみにずっと岩攻撃はやりつづけている)齋はじりじりと刺客京の横まで動いた。
テレパシーでみんなに合図を送る。「今だ!全員総攻撃!」うなだれていたユウキもすぐに戦いに参加して、三人が一斉に構えをとった。「どういうこと?勝てないとわかっていながらなんでそんなことをするんだ?」と驚く刺客京。「ユウキ、大活躍だ!」
ユウキはこういった。「まず俺がとてつもなく弱いフリをして、戦線離脱する。そこで二人で、少しずつ体力を減らしていってくれ。そしてどっちかだけに注意が向くようにして、もう一人は横に動いて、ある程度まで体力が減ったら総攻撃だ!」最初に吹き飛ばされてから、ユウキは活躍できるときを探していたのだ。ユウキがこれまでで一番強いだろうサイ・ボール、「最災団塊」を俺がブラックホールで吸い込む。齋が弾道を計算して、俺に伝える。伝えられた球の速さ、角度で俺がホワイトホールから「最再団塊」を放出する。「これが俺たちの技!『放物線』だあああ!!」刺客京は最再団塊をモロに喰らった。すぐに死ぬだろう。炎斬で首をきり、ジ・エンド。今日は特に疲れた。早くアカデミーに戻ろう。みんなが待っている。少しの間、休憩させてもらえるよう、師匠に頼もう。なにせ、今日は長すぎたからな。あーあ、疲れた。ダル。