奴隷傭兵、因縁の戦い1
「なるほどな、そういうことか」
「そういうことです」
エルはニヤッと笑って続ける。
「このままここで引き続き待機です。相手の反応を待ちましょう」
アニーの創り出した強風によって、炎の壁は敵陣へ向かって火の粉を飛ばしながら瞬く間に広がり始めた。
「アンドレさま、これは!?」
「風の魔法だ。くっ、相手陣営に魔法士もいたのか。これじゃ火計を仕掛けた我々のほうが窮地になってしまってる」
アンドレが思案していると、後方から伝令兵が走って来る。
「アンドレさま、ミレーヌさまからの伝令です。中央に合流せよとのことです」
「どうするつもりだ、ミレーヌ」
アンドレが急いで戻るとミレーヌが部隊長であるキールとニールに指示を出しているところだった。
「ミレーヌ」
「アンドレか、敵に風使いの魔法士がいるのは誤算だった」
「後退はしないのか?」
「敵もそう願ってるだろうよ。だけど、敵がそのつもりなら好都合だ。このまま炎の壁を利用して両脇に分かれて挟撃してやる!」
なるほど、ミレーヌは私が思っていたより冷静だな。これならこの戦い、必ず勝てる。
「キングオークもいるようだが、私なら対処出来る。フフ、喧嘩を売る相手を間違えたことを悔いるがいいわ」
ミレーヌは窮地にあって、逆に普段の冷静さを取り戻せる。この団長だからこそ、私たちは最速でBランクにまで駆け上がったんだ。
「アンドレ、おまえはここで弓兵を率いて敵が近づいたら矢を斉射しろ。キール、ニールは私とは反対方向から回り込め」
「わかった。あとで会おう」
「そうね、薄汚い妖魔兵どもをぶち殺してやるわ。では後で」
これだけ話すと『高潔の薔薇』は部隊を二手に分けて急速に炎の壁を回り込むようにして動き始めた。それをいち早く察知したのはエルだ。注意深く敵の動きを観察していたエルはすぐに指示を出す。
「バーン、敵は左右に分かれ挟撃を狙って動き出しました!僕らもすぐに動きましょう」
「動くってどっちへどう動くんだ?」
「左の方が近いですね。バーンとキングオーク、それにレオを加えて、僕らの最大戦力を左翼に当てて短時間での各個撃破を狙います。残りの僕たちは、ここに残って敵右翼を引き受けます。ですから急いでください!」
「なるほど、わかった!」
俺は左から炎の壁を全速で回り込むよう指示を出す。
「バーン、会敵したらそのまま全速で片づけてください」
「んなゴミ片づけるみたいに言われてもな。まぁ、やるけどよ」
「頼りにしてますよ」
左からの回り込んだ敵とは距離が近く、すぐに激突した。
「敵の動きに釣られて炎の壁に近づかないように注意してください!矢の餌食になります!」
敵傭兵部隊は、妖魔兵と会敵すると、そのまま炎の壁方向に移動していく。その動きに釣られて、まだ接敵してない後方部隊の一部に矢の被害が出た。だが、それも束の間だ。すぐに敵も味方も全軍が混戦状態となり、炎の壁の向こうにいた弓矢部隊も同士討ちを恐れて矢を放てなくなる。
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