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岩見優司のリア充(?)な日常  作者: 霧島こう
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第九十話 家に生徒会がやってきた

第九十話 家に生徒会がやってきた


 前にも述べたことだが、定期テストが迫ってきている。俺の成績はそんなに良いとは言えない方なので、必死になって勉強しなくてはならない。


 しかし、テスト前に限って、机に座った途端、そうじや部屋の模様替えが無性にしたくなってしまう。日頃から勉強していない人間の悲しい性だ。


「そう言えばさあ。この間七海の顔面に蹴りを入れた日、帰りが遅かったじゃない。何をしていたの?」


「蹴りを入れたんじゃなくて、サッカーボールをぶつけたんだ。誤解を招くような物言いは止めろ」


「どっちも同じようなものでしょ。それより何をしていたのか教えなさいよ」


「……」


 キッチンで掃除をしている早智が暇つぶしに聞いてきた。何故早智が俺の家にいるかと言うと、俺と同じ理由である。早智の場合、家事が得意なので、あっという間に自分の家の分が片づいてしまい、手持無沙汰になってしまったので、俺の家に汚れた個所を探してやってきたのだ。「掃除が終わったんだから、観念して勉強しろって話よね」と笑っていたが、勉強する気は一向に起きないようだ。


「どこをほっつき歩いていたのかしら? まさか健全な男子高校生がやっていることじゃないでしょうね。お母さんに全部話しなさい」


 言葉だけ聞けば、帰りの遅い息子を説教する母親の言葉にも聞こえるが、こいつは単に面白い話を聞きたがっているだけなので、騙されないように。


「生徒会の仕事を手伝わされていただけだよ。それより、健全な男子高校生がよくやることって何だよ。意味は分かるけど、堂々と聞いてくるな」


 早智に作らせたコーヒーを飲みながら、先日体験した災難話を話して聞かせた。


「え? テスト前なのに、勉強もしないで生徒会の仕事を手伝っていたんだ。余裕を感じるね!」


「茶化すな! 七海にボールをぶつけた罪滅ぼしだよ」


 全く! 少し帰りが遅くなったくらいで根掘り葉掘り聞いてくるな。本当の母親よりうるさいくらいじゃないか。


「それより腹が減ったな。そうじが忙しくて、何も食べていなかったからな。話を聞かせたんだから、何か作れ!」


 時計の針は午後七時を指していた。


 結局、ほとんど勉強をすることなく、夜になってしまった。家の中も、頭の中も、真っ白の状態で、さすがにやばいなとか思ったりした。もちろん、勉強する気はまだ起きない。赤点街道まっしぐらだ。


「もうコーヒーを作ってあげたでしょ。出前を頼みましょうよ。私、カツ丼で良いから!」


 何でお前の分まで注文しなきゃいけないんだよ。などと文句を言いながらも、出前の一覧を探し出した。勉強は腹が膨れた後にでも始めればいいや。


 早智がカツ丼なら、俺は天丼がいいかなと考えていると、ピンポーンとチャイムが鳴った。


「誰か尋ねてきたのかな?」


「もう夜だぞ」


 こんな時間に尋ねてくるような知り合いなど俺にはいない。わざわざチャイムを鳴らすくらいだから、泥棒の類でもないだろう。訪問販売か、新聞の勧誘だろうか。


 返事をする前に、早智と覗き穴から外の様子を確認する。丸いガラスの向こうにいたのは……。


「こんな時間に何の用事だ?」


 開錠してドアを開けると、陽菜、妹会長、七海、夏凛の四人が立っていた。四人共、スーパーの袋を両手に持っていた。


「来ちゃった❤」


 突然の事態に呆然としている俺に向かって、陽菜は笑いかけた。いやいや、それは見れば分かるよ。俺が聞きたいのは、どうして来たのかと言うことだよ。


「優司くんたちと鍋をしたいと思って。迷惑だった?」


 見ると、食材がパンパンに積みいれられたスーパーの袋を複数持ってきていた。


「全然迷惑じゃないよ。むしろグッドタイミング!」


 俺が答えるより先に早智が答えた。どうして俺が答えるより先に……。


「どうして岩見くんより先にあなたが答えるのよ、馬鹿内」


 今度は七海に先に言われてしまった……。


「早智がもう言ったけど、迷惑じゃないよ。母さんも今夜はいないから、俺だけだし」


「そうなんだ……」


 母さんと会えなかったのが残念のようだった。俺の母さんはタレントでも、権力者でもないで、会ったところで何も得しないぞ。


「あなたの家って、いつも母親が不在よね。家庭の事情か何か?」


「仕事が遅いだけだよ!」


 余計なお世話だ!


「ほらほら! こんなところで立ち話もなんだから、上がって上がって」


 おっと! うっかりしていた。ドアを開けてから玄関で話し込んでしまっていた。本当に気が利かないな、俺も。いやいや、そういうことじゃなくて、どうして早智が入れるかどうかを判断しているんだ? この家の人間は俺だぞ?


 不満もあったが、断る理由もこれといってなく、鍋を食べたかったというのもあり、上げることに同意した。


 早智の厚顔ぶりは、陽菜たちを家に上げてからも続いた。


「狭い家だけど、寛いてよ」


「自分の家みたいに言うんじゃねえよ」


 大体俺の家とお前の家は同じ構造なんだから、人の家を馬鹿に出来るような広さじゃないだろ。


 俺は本気で怒っていたが、陽菜には相変わらず仲が良いねと、羨ましがられた。どこをどう見間違えれば仲良く見えるのか謎だ。


 妹会長は俺の家に特に突っ込みを淹れずに、姉の後ろで大人しくしている。てっきり妹会長の性格から考えて、「本当に狭い家だね!」とか憎まれ口を叩くとばかり思っていたんだが、意外だ。


 そんなことを想っていると、「肉、肉……」と呟いているのが聞こえてきた。どうやら食べ物のことで頭が一杯だったらしい。


 逆に夏凛は興味津々で、特に俺の部屋に案内しろとうるさかった。


「なあなあ、俺は優司の部屋が見たいな。ベッドの下とか、クローゼットの奥とかを探してみたい」


 明らかにエロ本探しじゃないか。そんなことを言われて、案内する訳ないだろ!


 そう言えば、陽菜たちが前回来た時もこっそり探していたな。昔、早智が初めて来たときもエロ本探しに躍起になっていたと母さんに聞いたし(物心つく前だったので、俺は覚えていない)、俺の周りに来る女がこんなのばかりだ。まゆや弥生を連れてきても、同じことをするのだろうか。


「それで? 本当のところ、何で来たんだ?」


 鍋をしたいだけで来るとも考えられなかったので、リビングの案内したところで、もう一度来た理由を聞いてみた。


「先日、生徒会の仕事を手伝ってくれたでしょ! 生徒会の人間でもないのに!」


 あれは七海を怪我させた罪滅ぼしと言いかけて口をつぐんだ。そういえば、七海を怪我させたことは内緒になっているのだ。


「借りを作ったままにしておく訳にはいかないからね!」


 理由は分かったが、どうして俺の家でやるのか。これでは俺の家で遊んだということで、また俺に借りを作ってしまうぞ。


「でも、来るなら来ると事前に連絡してほしかったな」


 見られて困る物はないが、準備くらいはしておきたい。掃除はしていたから、中はきれいになっているとはいえ、いきなり来られるのは気分が良いものではない。だが、陽菜はきょとんとした顔で言った。


「? したよ?」


「え?」


 何回も連絡したが、留守電になってばかりでつながらなかったらしい。


 そんな馬鹿なと思いつつも確認してみると、確かに登録していない番号から、着信があった。留守電にメッセージも入っている。


「は~い❤ あなたの美咲陽菜からだよ。あなたに会えなくて寂しいの。今から行くから待っててね❤」


「こら~! 夏凛の馬鹿! お姉ちゃんの真似なんかするな!」


「わわわ……。違うから、今のは私じゃないから!」


「…………」


 何気なく再生してみると、アホなメッセージが残されていた。もし、陽菜たちが来る前に聞いていたら、居留守を使っていたかもしれない。


「え~とね。留守電にも入っていたけど……」


「大丈夫! お前じゃないことは声で分かるから」


 陽菜が赤面しながら言って来たので、はっきり言い切ってやった。


「本当は蓮杖君も誘っていたんだけどね」


 蓮杖と言えば、生徒会の庶務か。妹会長の話によれば、今日午後七時に俺のアパートの前に集合する旨(迷惑な内容だ!)を生徒会室で伝えると、「わ、悪い。今夜は彼女との予定が……」と言って帰ってしまったそうだ。妹会長の見た感じでは、かなり怯えていたらしい。あいつもなかなかの女難の持ち主だな。


 陽菜たちがとりあえずテーブルの上に買ってきた食材を置こうとしたが、その時にテーブルの上にはやりかけの勉強道具が置きっぱなしになっていることに気付いた。実際はほとんどしていないので、これからやる予定だったと言うのが正しい気もするが。とにかくさっさと片付けよう。万が一真っ白なノートを見られでもしたら、何を言われるか分からない。……って、思い切り白紙の部分が開かれているし~!


「机の上のノートは優司くんの部屋に運んでおけばいいよね」


「あ……、うん」


 誰も何の反応もしてくれなかった。あの七海でさえ、うんともすんとも言わない。いつもなら、「相変わらず真っ白なのね」といった皮肉を浴びせられるのに。言われなきゃ言われないで、何となく物足りなく感じてしまう。


 やるせない気分になったので、止せばいいのに、七海にそれとなく聞いてみた。


「やってないんでしょ? そんな分かりきったことを今更言ってもねえ……」


 などと困った顔で言われてしまった。こういうまともな反応が返ってくると、もう何も言い返せない。でも、自分が勉強をしない人間だとみんなに思われていることが分かったので、その点は猛省。


勉強中にそうじをしたくなるという現象に、学生時代は悩まされました。今では執筆中に漫画を読みたくなる現象に悩まされています。

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