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岩見優司のリア充(?)な日常  作者: 霧島こう
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第八十五話 テスト勝負の顛末

第八十五話 テスト勝負の顛末


 休日にテストを受けるなどと言う禁忌を犯してしまったので、十分な休養もないまま、月曜の朝を迎えることになってしまった。登校していても、疲れを感じる。


 もう当分テストはやらない。小テストも、抜き打ち以外は、仮病にかかって保健室へ移動して躱してやろう。


 などと、自分勝手なことを考えていると、いつもプラス思考なのに、今日はけだるそうな早智がぼそっと呟いた。


「あ~あ! あと二週間もしない内に定期テストがあるのよね~。夏休み前の最大の難関って言うのかしら。とにかく憂鬱だわ」


 忘れていた。定期テストの存在を完全に失念していた。定期テストだけは、進級にも関わることなので逃げられない。もうテストはしないって誓ったばかりなのに!


「お前の一言でさらにやる気がなくなった。もう帰りたいよ……」


「え~、私のせいなの?」


 やる気がなくなり過ぎて、もうバタンキューしそうだ。どこかに俺のやる気を復活させてくれる癒し系はいないものかね。


 投げやりでそんなことを考えていると、教室内がざわつく。いや、いつもざわついているのだが、それとは違う。何かに注目が集まっている。……言い換えると、有名人がいきなり来た時の感じに近い。


 そして、それは俺に向かって近づいてくる。今日もそうだった。これは今までにも何回か経験したことのある空気だ。


「あはは! いたいた~!」


 よりによって妹会長か……。俺がリクエストしたのは、癒し系であって、うるさいお子様じゃない。わざわざ来なくても、前みたいに校内アナウンスで呼んでくれて構わないのに……。


「優司、お客さん!」


 また面白いことが起きると、嬉しそうな顔で見つめながら早智が言ってきた。早く私を楽しませろと目が言っている。他人事だと思いやがって、この女~!


「優司~?」


「言い返さなくても聞こえているよ」


 死ぬほど気が向かなかったが、にこにこと俺を見ている妹会長と向き合う。


「よお」


「うん、おはよう!」


 生徒会長らしく威厳に満ちた……と言えば聞こえはいいが、実際はお子様が大人ぶっているだけなので、生意気に見えてしまうのが物悲しい。


「元気そうだな……」


「うん! なんなら分けてやろうか?」


「いいよ……」


 それより早く教室から立ち去ってほしい。そうしたら、また愚痴りながらだらけてやるのだ。


「え~とね、昨日の結果をみんなで見ようって誘いに来たの!」


 昨日のテストのことを言っているのか。


「三人で仲良くあんなことやこんなことをしたじゃない」


 「あんなことやこんなこと?」という声が、教室のあちこちから上がった。続いて「遂に子供にまで手を出したか……」という声も聞こえた。


「私は子供じゃな~い!」


 すぐさま妹会長が言い返してきたが、突っ込んでほしいところはそこじゃない。ああ……、妹会長の舌足らずな発言のせいで、また俺の悪い評判が広まってしまう。陽菜に、俺が妹に良からぬことをしていると根も葉もないことを言う奴が絶対にいるよ……。


「何も三人で見ることもないだろう……」


「そうしないと誤魔化すでしょ。特にあんたは!」


 何故分かった。実際の順位から百は引く予定だったのに、一緒に確認するとなると、不可能だ。


「そういう訳で、今日の放課後に集合ね! 日直や掃除当番でも来るんだよ!」


 用件を言い終えると、妹会長はさっさと帰っていった。


 宙を仰いで、大げさにため息をついていると、早智が面白がって話しかけてきた。


「いつの間に生徒会長まで落としたの?」


「落としてねえよ。今のを見ただろ。どう考えても襲撃じゃないか」


「会長なりの照れ隠しかも……」


「ない。決してない! あってはいけない!」


 あの妹会長に限って、俺にデレることはない。万が一あっても、俺は姉の彼氏なのだ。絶対に揉める。まゆや弥生と付き合った時とは比べ物にならないくらいに揉める。付き合うことになっても、お子様すぎて、絶対に面倒くさい。


 予想していた通り、この日から、俺が妹会長もハーレムメンバーに加えたという噂が立つようになった。さすがに今回は妹の様子から、デマだと判断して、陽菜が取り乱すようなことはなかった(ただし噂を聞いた妹会長の方が取り乱していたらしいが)。


 思い返せば、女子が俺を訪ねてきた直後に、必ず噂が立っている。今度早智にでも頼んで、女子は俺に用があっても教室に来ては駄目だという指令でも広めてやろうか。




 放課後、陽菜に一緒に帰ろうと誘うも(日直や掃除当番は欠席の理由にならなくても、大好きな姉との約束なら、妹会長も諦めるだろうという目論見があった)、妹と約束があるでしょうと(野次馬共が陽菜に告げ口したので、いつものように全て知られてしまっていたのだ)、笑って断られた。


 断る理由がないので、妹会長の元に出向くことにした。生徒会室ではなく、コンピュータールームで結果を確認するという。俺は出来ることなら、結果を知らないまま、テストを受けた出来事を記憶の彼方に抹消してしまいたかったというのに。


 俺がコンピュータールームに行くと、まゆと妹会長が待っていた。


「お疲れ❤」


「お疲れ」


 まゆは元気心なしかテストの結果を見るのがそんなに楽しいのだろうか。小学生の時からずっと思っていることだが、成績の良い奴は得だな。


「携帯から確認しても良くないか?」


「それだと画面が小さすぎて、同時に見られないでしょ」


「同時?」


「結果と、悔しがる様を同時に見たいじゃない」


 そう言って、互いの顔を見合わせた。ここまで来ると、息が合っていると褒めてやりたい。あと、二人とも、すごい自信だ。


「じゃあ行くよお。一斉のせぇで一緒に見るよ!」


 見たくなくて仕方がないテストの結果など、誰が周りを出し抜いてまで確認するものか。言われなくても一緒に見てやる(一番後でも構わないぞ)。


「「一斉のせぇ」」


 まゆと妹会長の掛け声で、パソコンの画面に視線が注目した。


 結果はどちらも四百九十七点。仲良く引き分けだった。


「そ、そんな馬鹿な! 嘘でしょ!」


「うう……。あそこで凡ミスさえしなければ……」


 勝利を確信していたまゆはもちろん、妹会長も悔しがっている。負けた訳じゃないから、ここまで悔しがることもないと思うけど。


 まゆも、妹会長も、ガッカリして画面から目を反らしている。俺の順位には興味もないようなので、自分で確認すると、そそくさと右上の「×」マークをクリックして画面を閉じた。


「そこまで落ち込むことか?」


 パソコンを片づけながら、まゆを励ました。まゆは力なく、ぼそぼそしゃべっている。


「今回はご褒美なしだから、楽勝だと思ったのに……」


「ご褒美?」


「あの会長は元々頭の回転が速くて、一年ではトップクラスの成績の持ち主なんだけど、ご褒美付きだとさらに上がって、碓氷副会長を超えるほどの能力に……って、そんな話はいいのよ。今は私が勝てなくて悔しいって話よ!」


 中途半端で切り上げられてしまった。妹会長の話に、ちょっと興味を持っていたのに。それにしても、勝てなくて悔しがるとは。俺なら負けて悔しいなのに。


 妹会長の方にも声をかけようとすると、彼女は俯いていた顔をパッと上げた。


「こうなったら決着がつくまでやるよ!」


「いいねえ♪」


 まだやるつもりなのか? いや、決着がつくまでやるつもりだというのだろうか。


「もうこれでいいだろ。引き分けでもいいじゃないか」


「「冗談じゃないよ!」」


 二人に同時に大声を出された。付き合わされるこっちに身にもなってくれよと、俺は泣きそうになる。




 密かに楽しみにしていたのだろう。帰宅して自室に入るとすぐに俺の部屋の壁をバンバン叩いてきた。内容はもちろん、放課後に何をしてきたのか、ということだった。俺は省略を交えながら話してやった。


「うげ! あんた、塾なんて行ってきたの?」


「行かされたんだよ! 俺の意思じゃない!」


「行かされたって、おばさんに? おばさんって、いつの間に教育熱心になったの? 放任主義の権化みたいな人だったじゃない!」


 人の母親に対して、ずいぶんな評価をしてくれているな。


「それで? あんたは何点取ったの?」


「さあ! 忘れたよ!」


 生憎、自分に都合の悪いことは三歩歩くとすぐに忘れてしまうから、覚えてないのだ。パソコンで調べると早智が言い出したので、部外者は確認できないようになっているから、無理だと言っておいた。無論、全て嘘だ。しばらくしたら、隣から早智が爆笑している声が聞こえてきたので、結局見られてしまったのだろう。畜生め!


本日、サッカーの試合がありますね。執筆のお供として、作業用BGM代わりに観賞したいと思っています。本大会出場をしっかりと決めてもらいたいところですね。

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