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岩見優司のリア充(?)な日常  作者: 霧島こう
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第七十八話 イタズラの火は消えない

第七十八話 イタズラの火は消えない


 山火事騒ぎはたいした被害にならなかった。ボヤで済んだから、と言うのもあったが、皇一の家の力も大きいだろう。


「どういうことなの!」


 別荘に戻ると、陽菜は妹会長に詰め寄った。あの状況では、自分の妹を犯人だと思っても仕方がない。何も知らない妹会長は小さくなって怯えていた。事情を知っているのに、黙って見ているのは気が引けた。ちくっているような気がしたが、皇一の自業自得なので、心を鬼にして真実を話すことにした。


「陽菜! 妹は犯人じゃない!」


「? 爆発を引き起こしたのはこの子でしょ?」


「違う! え~と、あの中に花火が含まれていたんだ……」


「どうして花火が入っているの? ……まさか」


 陽菜の視線が皇一に注がれる。皇一は悪びれることもなく、自供した。


 皇一は俺にした時と同じように、「うっかり」と言う単語を繰り返して故意ではない旨を話した。「イタズラのつもりだったんだけどね♪」とも言っていた。陽菜は苦虫をかみ砕いたような顔をして、皇一を睨んでいたが、あまりにも飄々とした態度に、何も言わずにプイッと顔を背けてしまった。


 妹に疑ったことを詫びると、俺と妹の手を引いて、自分の部屋に移動した。


 どうして陽菜や七海が皇一を嫌うのかが、今では俺もすっかり理解していた。




 その日の夕食は、また早智が作った。昼間の爆発騒ぎの犯人が皇一と言うことを知らない早智は終始ご機嫌で料理を作っていた(知っていたとしても、同じく上機嫌だった可能性もあり)。


 早智が作ったのは、山菜のパスタと、マルガリータピザと、簡単なサラダだった。妹会長がお代わりをしてくることも想定してか、量は多めに作っていた。


「ねえ、夕食の後に花火をしないか?」


 まだ熱いピザを頬張りながら、皇一は夕食後のレクリエーションを提案してきた。昼間に花火で痛い目を見た人間の発言とは思えん。


「全部燃えたんじゃなかったのか?」


「僕もそう思っていたんだけどね。燃え残りがあったんだ」


 皇一は運が良かったと無邪気に喜んでいるふりをして笑っているが、陽菜は面白くなさそうにしている。


 自由参加ということなので、嫌なら断ることが出来たが、他にやることもないので、きな臭いものを感じつつも、花火を楽しむことにした。


 陽菜は行きたくないと言っていたが、他のメンバーがみんな行く中で、一人で残ることになってしまう。


「花火なんか止めて私とここに残ろう!」


 右腕を引っ張られながら、嬉しいことを言われたが、俺と姉の密会を断固阻止しようとする妹会長の猛反発にあい、頓挫した。


 結局、陽菜も泣く泣く花火に行くことを決めた。本来、仲間内でやる花火はすごく楽しいものであるはずだ。それがどうして忌み嫌われる対象になるのだ。まあ、原因は一つしかないんだけどね。


 原因である皇一が両手一杯に花火を抱えて屋敷から出てきた。他にもあると言っていたので、俺も手伝った。忌まわしい花火を今夜のうちに一掃してしまおうと、妙な使命感が沸いていた。


「しかし、すごい量だな。一晩で消化するつもりなのがすごいな。もし、余ったらどうするんだよ……」


「そうしたら、昼間のバーベキューみたいに、一気に爆破させよう!」


「冗談もほどほどにしないと、俺も本気で怒るぞ」


「ははは……」


 別荘の外でやればいいものを、広いところでやりたいという皇一の希望で、昼間バーベキューをした河原で行うことにした。もちろん、またヘリコプターの出番だ。これだけ頻繁に使うのなら、もう旅行の間中、待機してもらっている方が良いような気さえしてきた


「すごい量だな……」


 ヘリを待っている間、大量の花火を見ながら、夏凛が感嘆の声を上げた。


「余ったらどうするんだろうな?」


 俺と同じ疑問をお持ちの様だった。


「持ち帰ればいいだけだろ」


 素っ気ない気もしたが、他に応えようもないだろ。まさか、山に捨てていく訳にもいくまい。


 河原に着くと、早速大量の花火を消化する作業に移った。


 妹会長はロケット花火を5つくらい同時に火を点けて、派手なスタートを切った。俺は大人なので、線香花火をちまちま楽しむことにした。


「昔はよくやったね」


 線香花火の乱暴に扱ったら、すぐに消えてしまいそうな火を見つめながら、早智が呟いた。


「そうだな。まあ、やったと言っても、小学生の時までだけどな」


 陽菜が隣で面白くなさそうな顔をしている。思い出話に自分が出てこないことが面白くないのか、早智と二人で楽しく遊んでいたのが面白くないのか、どっちにせよ、昔の話なんだから、別にいいじゃないか。


 次に夏凛が話しかけてきた。


「線香花火を見ていると、物哀しい気分になるってよく言うよな」


「最後に火がポトリと落ちる瞬間のことを言っているのか? 俺はそうでもないけどな」


 昔、花火で遊んだ後、早智の母親が切ったスイカを食べるのが習慣になっていたから、これが終わればスイカが食べられると、ウキウキしていたものだ。


 打ち上げ花火が派手な音を立てて、夜空に爆ぜた。


 向こうで皇一が会長を相手に、次の打ち上げ花火に火を点けていた。


「あいつはああいうのが好きだよな」


「でも、すぐに飽きるの。もう五分もすれば、ロケット花火を振り回しだすんじゃないかしら」


 陽菜の予想は見事に的中した。本当に五分もしない内に、妹会長はロケット花火に興味を移したのだ。一人取り残された皇一はまだ打ち上げ花火を楽しんでいた。しばらく陽菜は、妹が遊ぶのを見ていたが、だんだん調子に乗ってヒートアップしてくると、「そろそろ叱り時かしら」と言って立ち上がった。思えば旅行に来てから、妹会長は怒られてばかりだな。ここまで威厳のない生徒会長って一体……。


 その時、妹会長の手から花火がすっぽ抜けてしまった。しかも、飛んで行ったのは花火の山の中……。最悪だ。急いで駆け寄ろうとするが、遅かった。あっという間に燃え移っていき、無数の花火が乱れ咲いた。


 打ち上げ花火も多数あった上に、横を向いていたので、俺たちに向かって発射される物まであった。


 昼間のバーベキューの惨劇の再来だった、昼間と同じように、必死にその場から逃げた。


「もう! どうしてこうなっちゃうのよ!」


「誰か日ごろの行いが悪い奴でもいるんじゃないのか?」


 夏凛が冗談で言った途端、陽菜が皇一をキッと睨んだ。早智は俺を見て睨んでいる。


「おい! どうして俺を見る!?」


「自分の胸に手を当てて良く考えな……」


「そのセリフをそっくりそのままお前に返すよ」


 早智と言い争いながら、ふと視線をずらすと、妹会長が崖と見間違うほどの急斜面に向かって走っているのが見えた。しかも、あのスピードではすぐには止まれそうにない。


「おい、そっちは急斜面……!」


 妹会長にストップを呼びかけるが、パニックに陥っているようで、俺の言葉を振り切って、猛ダッシュを続けた。当然、転げ落ちる。


「ひぃっ!」


 小さな悲鳴を上げながら、小さくて軽い体は斜面を転がり、そして、頭から激突……。


「だから、こっちは急斜面だって、さっきからいっているだろう……」


 頭から激突する直前に。俺は妹会長の手を引っ張って、事故を阻止した。


 とりあえず、断崖絶壁でなくて良かった。あそこから落ちていたら、いくら俺でも命はなかった。急斜面とはいえ、慎重に上がれば、戻れない距離ではない。


「とりあえず登れない角度じゃないな? 歩けるか?」


「うん……」


 特に怪我はしていないようだったが、妹会長は元気がないようだった。仕方がないか。昼間と違って、今のは妹会長に責任がある。大目玉は避けられそうにない。


 その時、ガサリ……と言う音が茂みの方からした。暗い中、急に音がしたので、ビックリしたが、姿を現したのはウサギだった。


「何だ、ウサギか。ビックリさせやがって……」


 ため息交じりに強がると、恥ずかしい姿を見られたと横を確認した。だが、妹会長の姿が横になかった。ウサギの立てた物音に怯えて、駆けだしていたらしい。俺が妹会長の姿を確認した時は、もう視界から消えそうなところにいた。


「おい、待て! 今の物音の正体はウサギだ。怖くないぞ」


「わあああぁぁぁぁ!!! お化けだ~~~~!!」


 本来なら、お化けなどいないと笑うところだが、今は妹会長を見失わないように追いかけることに集中した。




「何だ、ウサギだったのか……。ビックリした……」


 十分後、ようやく追いついた妹会長に、物音の正体を説明すると、途端に強気になって胸を張って答えた。今更、強がったところでもう遅いのに。


「俺はお前の恐がり方にビックリしたけどな」


「さて、早くお姉ちゃんのところに戻らないと!」


 あ、無視した。都合が悪いから、俺の話を無視した。


 見え見えで見苦しい妹会長の芝居に内心苦笑いをする。向こうも気付いているようで、強がりつつも、顔をほんのりと赤く染めていた。


「ところで……」


 俺は辺りを見回した。目に入ってくるのは、見覚えのない光景ばかりだった(もっとも仮に何回か通ったことのある道でも、夜で真っ暗と言うことで、雰囲気は全然違っていたことだろう)。


「どこだ、ここ……?」


 俺たちは暗い森の中で迷子になっていた。


少し皇一を嫌な奴に書きすぎた気がします。反省。

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