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岩見優司のリア充(?)な日常  作者: 霧島こう
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第七十二話 秘密が暴露する瞬間

第七十二話 秘密が暴露する瞬間


 生徒会に呼び出されて、会長からいきなり陽菜と別れるように強要されて、もし断れば早智とのキスシーンを盗撮した写真を陽菜にばらすと脅されつつも、陽菜と仲良く下校した翌日。いつも通りの時間に目が覚めた。朝の身支度を整えて、朝食を摂って、学校に行くために家を出ると、珍しく早智の母親であるおばさんと会った。


 何でもない世間話でしばし時間を潰していたが、突然、早智の話に移った。何でも、自室に閉じこもって夜遅くまでパソコンをいじっていたかと思えば、今朝早く家を出ていったとのこと。言われてみれば、早智の部屋から、一晩中、キーボードを打つ音が聞こえてきたような気がする。何か知らないか聞かれたが、知らないと白を切っておいた。恐らく、俺とのキス写真を盗撮した奴を血眼になって探していたのだろう。本気でキレた早智は幽霊より怖いので、盗撮した奴には同情する。


 おばさんの様子を見るに、早智とキスしたことはばれていないようだ。もし、ばれるようなことがあれば、今朝みたいに笑って接してくれることはないのだろうな。男で苦労した過去があるから、例え事故であろうと、女で遊ぶ輩が大嫌いだからだ。叔母さんとはそのまま笑って別れた。


 登校すると、真っ先に七海に会いに行き、俺が帰った後の顛末を聞いた。


「大変だったわよ。しばらく暴れて、押さえつけるのに蓮杖と二人がかりで苦労したんだから。古賀は面白がって見ているだけだし」


 あまり表情を変えないで淡々と話しているところから、そんなに面倒事にはならなかったみたいだ。


「でも、最終的には落ち着いたんだろ」


「どうにかね。それにしても、あなたの落ち着きぶりには私の方が驚かされたわ」


 特に慌てることもなかっただけだ。


「見せるなと言って慌てても会長を喜ばせるだけだ。かといって、下手に出てもやっぱり付け上がるだろうし、それなら落ち着いて対応するだけだ」


「落ち着こうと思っても、なかなか落ち着けるものじゃないわよ」


 俺の度胸に、七海は呆れているようだった。


「会長は写真を見せると思うか?」


「見せるでしょうね。あの性格でしょ。私ならもう少し焦らして、あなたの精神を揺さぶってからにするけど、うちの会長はお子様だから、駆け引きなんて出来ないし」


 七海の手にあの写真が渡っていないことに心底安心しつつ、自分のところの生徒会長なのに、ずいぶんひどい言い草だと思った。


 駆け引きを知らないと言うことは、会長はたぶん写真を見せるだろう。早ければ、今日の内に。どういう結果になるのだろうか。


 もし、別れるようなことがあれば、他の女子と付き合えばいいなどと、古賀が他人事みたいに言っていたのを思い出す。そういえば、自分とも付き合えばいいとも言っていたな。


「昨日、古賀が俺に告白したじゃん。あれ、本当かな?」


「どうかしら? 冗談にも聞こえるけど、時々冗談っぽく真面目な話をするやつだから、分からないわ」


 つまり、常に冗談じみた口調で話すと言うことか。同じ生徒会役員の七海ですらこんな状態なのだから、表面上の態度から、真偽を判断するのは難しそうだ。


「後ね。その後で古賀が言っていた話は全部無視していいから」


 七海と付き合うことを勧めていたことか。無視するも何も、全然気にしていない。


「そんなこと、気にする訳ないだろ。お前が俺に惚れる訳ないからな」


「そ、そうよ……。そうに決まっているじゃない」


 だから、何故そこで顔を赤くして俯くのだろうか。いつもの七海なら、強烈な皮肉を言って、その通りだと一刀両断するところだろうに。


 その後、陽菜が登校してきて俺に話しかけてきたが、様子から察するに、まだ写真は見ていないようだった。




 事態が急変したのは、その日の昼休みだった。昼食をどうしようか考えていると、勝ち誇った顔で早智がやってきた。


「やったわ! 私、やったわよ、優司!」


「何をやったって?」


 得意顔の早智を問い詰めると、盗撮した奴を見つけてとっちめたらしい。昨日の夜に言ったばかりだと言うのに、もう犯人を割り出すとは。あいつの情報網には敬服させられる。


「ま! 私の手にかかればこんなものよ!」


 早智が言うには、犯人は特進クラスの男子生徒で、密かに恋心を持っていたまゆを俺に盗られたと逆恨みしていたらしい。偶然、俺と早智がキスしているところを目撃したので、今回の犯行を思い付いたとのこと。


 まゆに今回のことをばらすぞと脅すと、男子生徒はそれだけは止めてほしいと泣いて懇願してきたので、黙っておく見返りとしてこれから卒業するまで早智に昼飯を奢り続けることを約束させたらしい。人を陥れようとして、逆に自分が陥れられることになってしまったのだ。


 早智は早速奢らせたというカツサンドを上手そうに頬張っている。これから毎日、高いものを買わせてやると意気込んでいた。男子生徒の経済事情を考えると、何とも哀れな末路だが、自業自得なので、同情はしない。


「残るは会長が握っている一枚のみか!」


 後一枚処分してしまえば、俺と早智のスキャンダルは揉み消せる。しかし、昨日強引に掠め取ろうとしたので、会長には警戒されている。俺が実行するのは難しいだろう。そうなると、内部の人間の手助けがいるな……。


「念のために言っておくけど、手伝わないわよ」


 俺と早智の話を黙って聞いていた七海が、俺の期待する視線を感じて、冷たく共闘の願いを断ち切った。


「駄目か!」


「当たり前でしょう!」


 吐き捨てるように言い切ると、教室を出ていってしまった。つれないな……。


「ねえ、優司くん! お昼がまだなら一緒に食べよう❤」


 一人でやるしかないかと思っていると、陽菜が弁当箱を二つ持ってやってきた。恐らく、自分の分と俺の分なのだろう。


 まだ購買で昼食のパンを買っていなかったので、ラッキーと手放しで喜んだが、ふと目線を下にずらした時に、自分の迂闊さに思い至った。


 写真が机の上に置かれたままだったのだ。陽菜の接近が思ったより早くて、隠すのも間に合わない。今からだろ、無理に隠しても、却って怪しまれてしまう。


「ん? これは……」


 陽菜の目が、机の上に置かれていた早智とのキスを写した写真に注がれた。何てことだ。せっかく盗撮犯を捕まえたと言うのに。


 陽菜に見られてしまった以上、もう隠せまい。観念して陽菜に全てを説明することにした。


「一昨日、七海とキスした後に、全く同じ状況で早智ともキスしてしまったんだ。黙っていてごめん……」


「うん、知ってる!」


 陽菜の意外な回答に、俺だけではなく、早智も固まった。


「……知っていたのか」


「うん! その日の内に名前も知らない男子生徒が教えてくれたの! しばらくどうしてやろうか、生徒会室で悩んだ結果、故意じゃないみたいだから、許してあげることにしたの!」


 つまり、七海ばかりではなく、早智とのキスを知った上で、一昨日許してくれたわけか。陽菜の懐の大きさには改めて驚かされるな。


 何はともあれ、会長からの別れ話の件はこれで解決した訳だ。自分の身から出た錆とはいえ、これからは気を付けないとな。


 ……などと言ってみたところで、近いうちに新たな女難に巻き込まれそうな気もするので、それが不気味ではある。




 その日の放課後、廊下で会長とバッタリ会った。俺が気付くより先に、俺を見つけていたらしく、低い身長にも関わらず、大股で近寄ってきた。


「ふふん! 昨日の返事を聞かせてもらおうかな!」


 挨拶もそこそこに、昨日の返事を迫ってきた。俺は「見せたければ見せればいい。ただし、陽菜とは別れない」と言ったと思うのだが。どうしても、俺の口から「別れる」の言葉が聞きたいらしい。


「陽菜とは別れないよ」


 会長の意図を読んだ俺は短く言ってやった。それを見苦しい抵抗と見た会長は、口元を緩めながら、脅してきた。


「そんな強気なことを言っていいのかな~?」


 まだ陽菜が例の写真を見たことを知らない会長が、得意げに話す姿は、俺からすれば、かなり痛々しいものがある。あまりにも痛々しいので、さっさと教えてあげることにした。


「あの写真だけどな。さっき陽菜に見られた」


 俺から予想外の反撃にあった会長は一瞬たじろいだが、すぐに持ち直し、反撃し返してきた。


「え? そんな筈ないよ! だって、胸ポケットにしっかり仕舞っているもん! また騙そうとしたって、そうはいかないんだから!」


 そう言いつつも不安だったらしい。俺に悪態をつきながら、胸ポケットの写真を確認していた。


「いや、そっちの方じゃなくて、現場を盗撮したやつが持っていた元の写真ね。それを机の上に広げていたら、やってきた陽菜に見られた」


「そんな馬鹿な!」


 会長の気持ちも分かるが、紛れもない真実なのだ。しかし、今話していて改めて思うが、俺って間抜けだな。


「じゃあ、もう別れた後なの?」


 すがるような目で俺を見つめてくる会長に、残酷な真実を告げた。


「いや、別れてないよ。早智とキスしたことももう知っていて、ケロッとしていた」


「嘘だ……」


 信じられないようで、陽菜に電話をかけて確認していたが、姉の口から、俺の言ったことが真実だと言われると力なく電話を切った。


 事の成り行きを知った会長は電池の切れたロボットのように固まってしまった。下書きの人物絵のようにぼやけて見えるのは気のせいだと信じたい。


「その写真はもう処分した方が良いぞ。もう持っている意味もなくなったし、このまま持っていても良いことなんてないし……」


 唖然としている会長をおいて、俺はその場を後にした。そのままにしておくことには、何となく抵抗を感じたので、七海に会長が立ったまま気絶していると告げた。本当は気絶なんかしていないが、こういった方が七海も心配して早く駆けつけるだろう。七海は面倒くさそうにしながらも、会長の元に歩いて行く。その背中を見ながら、俺は帰宅することにした。


最近、急激に暑くなってきていますね。USB扇風機をフル稼働させて執筆していますが、そろそろ大きい方の扇風機も出そうかと思っています。

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