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岩見優司のリア充(?)な日常  作者: 霧島こう
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第四十五話 アイドルとメール

第四十五話 アイドルとメール


 ライブ会場となった第二体育館は人混みですごいことになっていた。ただ突っ立っているだけでも、人と何度もぶつかってしまう。山手線の朝の通勤ラッシュに匹敵する混雑だ。


 前の席に座りたいと思っていたが、既に熱烈なファンたちによって陣取られていて、仕方なく、唯一空いていた最後尾に座った。俺たちが座って間もなくして、満席になったので、座れたのは運が良かったのかもしれない。


「こんなに混んじゃって。まるでアイドルのライブね」


「いや、これから始まるのはまさにアイドルのライブなんだけど」


 テレビにも出ているアイドルだと、さっき話したじゃないか。しかも、俺にそれを教えたのはお前自身だろ。皇一のことばかり考えていたせいで、早智の頭がボケたのだろうか。


「あははは! そりゃそうだわ。こんな意味不明の冗談を言うなんて、嫌だわ、全く!」


 特に気にする素振りもなく、早智は豪快に笑い飛ばした。


「おっ! そろそろアイドルたちが入場してくるようだぞ」


 そう言うホイケルの手には、マーメイドの四人が印刷されたうちわが握られていた。入口で売っていたのを、金を出して買ったのか……。さっき興味がないようなことを言ってなかったっけ?


 そんな俺の疑問をよそに、会場のボルテージは徐々に高まっていった。


 早く始まってほしいと言う期待。ヒートアップしていく会場の熱気。何かを期待する空気。膨らんだボルテージが一気に爆発したのは、主役の四人が登場した時だった。マーメイドの四人が出てくると、会場は一気に歓声に包まれる。アイドルたちは満面の笑みで、それに応える。


 四人の身体的な特徴を述べると、一般の女子高生と変わらない背丈の子が二人、長身でモデル並みにスタイルの良い子が一人、小学生と見間違いそうになるくらい幼児体型の子が一人だった。性格などの内面的なものは直接彼女たちと話してないので、不明。


 アイドルたちの簡単な自己紹介の後、歌が始まる。


 どうせかわいいだけの美少女がアイドルの真似事をしているだけだろうと、半分馬鹿にしていたら、相当練習しているらしく、なかなかの歌声だった。


「すごいな……」


 お化け屋敷の恐竜ゾンビに続いて、心から感心した。本日二度目だ。


「はん! たいしたことないわよ。私の方がかわいいし!」


「いや、それはない!」


 早智が世迷言をまだ言っていたので、即座に否定した。会場いっぱいに、マーメイド命の連中が詰めかけているのだから、彼らを敵に回すような発言は慎んでもらいたい。


 気が付くと、マーメイドなどたいしたことないと高をくくっていたホイケルも、大声でマーメイドを応援している。いつの間に買ったのか、マーメイドの写真入りメガホンで叫んでいる。


 俺は黙って大人しく聞いていると、早智が右ひじを小突いてきた。


「マーメイドの四人はなかなか美人だけど、自慢の彼女と比べてどうかしら?」


「どうって?」


「鈍いわね。どっちが可愛いかを聞いているの! 皆まで言わせるな」


 どっちが可愛いかって? そんなこと野暮なことを聞くなよ。


「陽菜の方が可愛いかな」


 正直、どちらも可愛いし、優劣を決める気もなかったが、俺は陽菜の彼氏だったので、彼女を推した。彼氏としての回答はこれで問題あるまい。


「惚気ちゃって!」


 囃し立てるな。恥ずかしいだろ、早智。


「惚気ちゃって……」


 感情のない目で言うな。マジで怖い。聞かれたことに答えただけで他意はないから。お前に対する当て付けとかないから睨むな、ホイケル。


 その後も熱狂の時間は続き、ライブは大盛況のうちに終了した。




 ライブ会場を出て、自販機で買ったジュースで、ライブで火照った喉を潤していると、早智があるものを発見した。


「あれ……、七海じゃない?」


 指された方を見ると、確かに七海がいた。傍らには、同じ王泉の生徒が数人と、皇一もいた。


「本当だ。あいつ、来ないって言っていたくせに」


「やっぱり来たくなっちゃったのかしら。でも、変なプライドが邪魔をして、やっぱり行きたいとは言えず、こそこそ来たってところかしらね」


 招待主の生徒会長と堂々と話していて、どのあたりがこそこそしているのだろうか。後、七海と一緒にいる生徒たちだが、どこかで見た様な顔ばかりなんだよな。はて、どこで見たんだっけ? 思い出せない。


 しばらく見ていたが、何の話が分からない。本人に聞いてみれば分かるかと思い、「ここで何をしているんだ?」と入力して、七海にメールを送る。


 消音設定にしていたためか、着信音は鳴らなかったが、電源は切っていなかったみたいで、俺からのメールで七海の携帯電話が着信していた。


 驚くようなことはしなかったが、携帯電話としばらくにらめっこした後、急に辺りを見回しだした。会話に割り込むようで、好い気はしないが、ここにいる旨を伝えようとすると、早智に止められた。


「あははは! 見て。七海ったら、私たちを探しているわ」


 七海が辺りをきょろきょろと見回している様子がおかしいのか、声を上げて大笑いした。もう少し控えめに行動しないと見つかるぞ。


「次は私がメールを送るわ!」


「馬鹿か。お前がメールを送ったら、絶対に喧嘩になる。他校で喧嘩なんて勘弁してくれ!」


 俺は自制を求めたが、完全に悪ノリモードに入った早智の耳に、俺の忠告など最早届くわけがない。


「知っているわ。だから、あんたの携帯を貸してちょうだい!」


 こいつ、俺の携帯から、メールを送るつもりか。他人の携帯から送信すれば、自分が送ったとばれないから? でも、それだと、俺が疑われるじゃないか。断然拒否だ! ……と思い、要求を突っぱねようとしたら、既に俺の携帯は早智の手に収められていた。いつの間に掠め取ったというのだろう。俺が制止する間もなく、早智はさっさとメールを送信してしまった。


 慌てて、早智の手から携帯を取り返して、メールの内容を確認すると、「ほらほら! 早く俺を見つけてみろよ! ペチャパイ委員長w」と書かれていた。確か、胸の話題は、早智と同様にタブーだったはずなので、非常によろしくない内容だった。


 早智を睨むと、ブイサインをして、得意がっている。俺の心情など知ろうともしていない。恐る恐る七海を見ると、外見からは変化が確認できなかったが、内心は怒り狂っているに違いない。すぐに七海から返信が届く。


 息を飲んで、不良グループに特攻をかけるような心境で、内容を確認すると、「今のメールは馬鹿内からの物で間違いないわね?」とあった。俺の携帯から送信したのに分かるものなんだな。怒りの矛先が自分に向かなくてホッとした一方で、「明日、学校で覚えてなさいよ……」と怒りの文面が続く。明日、修羅場になるのは必至だった。


 幸いなことに、俺たちが七海に見つかることはなかった。七海は周囲に気を配りながら、皇一たちと人ごみの中に消えていった。大方、生徒会室にでも、行ったのだろう。


 七海たちの姿が見えなくなってしばらくすると、またも俺の携帯がメールを受信した。七海からの呼び出しだと思っていたら、皇一からだった。後一時間ほどで、用事が終わるので、二年C組で待っていてくれ、とのことだった。


「よし! 私の玉の輿フラグが来た~」


 早智が勢いよく叫んだ。ライブの時より、テンションが高いようだ。早智にとっては、こちらの方が目的だから、当然と言える。


 ホイケルはやや不満そうだったが、乗り気な早智に押されて、皇一の指定通りに待つことにした。


 一時間後、二年C組で言われたとおり、三人揃って大人しく待っていた。ここは喫茶スペースだったので(断じてメイド喫茶ではない。接客している生徒も学校指定の制服のまま)、コーヒーを一杯だけ頼んで、水と交互に飲みながら時間を潰した。今、思うと、迷惑な客だったと思う。


「やあ! 待たせたね」


 指定通りの時間に、皇一の声がした。


 ああ、来たかと思って、顔を上げると、皇一の隣に七海も立っていた。


「彼女も君たちと学園祭を見て回りたいそうなんだ。僕としては、一人でも多くの人に楽しんでもらいたいから、喜んで引き受けたんだけど、君たちも構わないよね」


「よろしく……」


 挨拶してくる七海の目は完全に据わっていた。楽しむ気など毛頭ないのが分かる。胸を罵倒された恨みを晴らすために、毛嫌いしている皇一に頼み込んでまで、俺たちを探すとは。その執念、恐れ入る。


 早智とのバトルはもう避けられそうになかった。もちろん、泥仕合でも繰り広げようものなら、皇一との玉の輿はおじゃんだ(元々望みなど存在しないが)。


 さあ、どうする。幼馴染み!


 ちなみに、俺は傍らでお前の恋とバトルの顛末をじっくりと高みの見物をさせてもらおう。


今回、登場したアイドルグループのマーメイドですが、CDも出していて、結構売れているという設定になっています。ただ、握手会はしていないので、CDを箱買いしても、メリットはないですw

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