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岩見優司のリア充(?)な日常  作者: 霧島こう
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第三十九話 陽菜の知り合いはプレイボーイ?

第三十九話 陽菜の知り合いはプレイボーイ?


 最終的には、まゆに手伝ってもらう形で、ストーカーの事件は解決した。


「私がいないときに解決するなんてつまらない!」


 事の顛末を話すと、ストーカーに自慢のキックを叩きこみたかった早智は、不満を隠そうともしないで唸っていた。


「ホイケルも同じことを言っていたよ」


 ホイケルキックなどと言う珍妙な蹴りを放った日には、ストーカーと一緒に警察の厄介になるに決まっているので、披露することにならなくて良かったと思っているけどね。


「優司くん、お待たせ!」


 早智とキック談義に花を咲かせていると、用事を済ませた陽菜が、七海とやってきた。ストーカーの件は彼女たちには内緒なので、この話はここで打ち切りになった。


「今日は真っ直ぐ帰るか? それとも、途中でどこかに寄るか?」


 席を立ちながら、それとなく陽菜に聞いてみる。


「駅前のファミレスなんて、どうかしら? あそこのフルーツタルトは甘くて、私の好物なの!」


 甘いもの好きな陽菜が、媚びるように甘い目で訴えてくる。分かった、ちゃんと寄るから。


「駅前のファミレスに寄っていくの? それなら私もついていきたい!」


 早智も食べたいものがあるのか、懇願してきた。断る理由もなかったので、奢らないと釘を刺した上で、了承する。




 俺と陽菜、七海、早智の四人で、帰路に着く。特に口論することもなく、穏やかに歩いていたのだが、校門のところで陽菜と七海の表情が曇った。


「やあ!」


 軽そうな男子高校生が門のところに立っていた。端正な顔立ちに、爽やかな笑顔。女性受けしそうなルックスだ。来ている制服から判断すると、六聖館の生徒らしい。


 六聖館と言うのは、俺たちの通う王泉高校から、歩いて三十分くらいのところにある進学校で、T大にも毎年合格者を出している。


「全く! 馬鹿内だけでも一杯一杯なのに、もう一人馬鹿がいる……」


 七海は周りにはばかることなく、毒づいた。馬鹿と言うのは、目の前の男子高生のことだろうか。一見すると、好青年風で、頭が悪そうには見えない。


「久しぶり! 会いたかったよ、陽菜!」


 向こうは陽菜に話があるらしい。陽菜を見ると、彼女にしては珍しく嫌なものを見る目をしていて、顔を歪めている。


 そして、目線を合わせることもなく、そのまま歩き続けた。相手にしないで、通り過ぎるつもりだろうか。


「おいおい! つれないな。反応なしかい?」


「……」


 男子高校生はまた声をかけてきたが、陽菜は無言のままだ。いたたまれなくなったので、陽菜に耳打ちした。


「いいのか? 向こうはお前に用があるみたいだぞ」


「いいの! 私は顔も見たくないから」


 誰だか知らないが、ずいぶん嫌われているな。基本的に、陽菜は人を嫌ったりしない。恋敵のまゆですら、廊下ですれ違った時は笑顔であいさつするくらいなのだ。ひょっとして、陽菜にしつこくアタックしている男だろうか。それなら、陽菜の反応も理解できる。


 俺たちは無言で、男子高校生の横をすり抜けたが、向こうもめげることなく、横にぴったり食いついてきた。


「無視かい。冷たいね~。でも、そういう陽菜も嫌いじゃないな。ひょっとして、ツンデレってやつかい? これが君なりの愛情表現?」


 返事が返ってこないのに、軽快に話し続ける。


「うるさいよ!」


 突然、立ち止まると、陽菜は大声で怒鳴った。


「無視しているのが分からないの? 私ね、あなたとは話したくないの! だから話しかけてこないで!」


 俺と早智はビックリして固まってしまった。怒鳴られた男子高校生は涼しい顔のままだったけど。


「そういうことよ。陽菜は諦めて、今日は帰りなさい」


 七海が冷静に促したが、相手は「そんなこと言わずに」と退く気配はない。


「その人は知り合いなのか?」


 口を出すべきかどうか迷ったが、とりあえずこの男が何者かくらいは教えてほしかったので、会話に割り込んだ。


 陽菜はどう説明したものか考えあぐねているようで、男子高校生の方が先に口を開いた。


「僕はね。陽菜の……」


「彼はね。麻生皇一くんって言って、ただの知り合いよ」


 皇一の話を遮って、陽菜が大声で断言した。


「ただの知り合い?」


「そう! 決してそれ以上の関係ではないわ」


 陽菜は強く断言していたが、ただの知り合いを強調しているところが返って不自然で、浅い関係ではないと言うことを強調しているように思えた。


「今日は何しに来たのよ?」


 七海がため息交じりに話しかける。


「これといった用事はないよ。ふと、陽菜と遊びたくなってね。こうして誘いに来たのさ」


 体がなまっているからジョギングに行くか、くらいの軽い気持ちで、陽菜を誘ってきているらしい。皇一と言う男のことは全然知らないが、プレイボーイであることは間違いないと見た。


「ほら! 送迎用の車も用意しているよ」


 こちらの返事を待たずに、皇一は話を進めた。


 さっきまで気付かなかったが、車が一台後ろに停まっていた。中には運転手も乗っているようだ。陽菜の知り合いは、金持ちが多いと素直に感心した。


 そこまでは俺も警戒していなかったが、運転席に乗っているドライバーの顔を確認して驚いた。


「お前……!」


「え? 何、知り合いなの?」


 早智が俺の後ろから抱きついてきた。彼女の前だと言うのに、最近はスキンシップを遠慮しなくなってきた。


「……日向をストーキングしていたやつだよ」


 周りに聞こえないほどの小声で呟く。


「やあ! この間は楽しかったねえ」


 悪びれる様子も、慌てる素振りも見せずに、ストーカー女はさらっと挨拶してきた。


「へえ~、君は春日さんの知り合いなの?」


「知っているも何も……」


 どうする? この際、何もかもぶちまけてしまうか? でも、黙っていると光たちと約束しているし……。


「そちらのかわいいお嬢さんも行くよね?」


「え? 可愛いって私のこと?」


「他に誰がいるんだい?」


 俺が悩んでいるうちに、早智まで誘い始めた。もう間違いない。こいつ、絶対にプレイボーイだよ、動かぬ事実だよ。


「しかも胸まで大きいなんて、反則だよ!」


「あはは~、よく言われるの~!」


 お前がよく言われているのは逆のことだろ。簡単に見え透いたお世辞に騙されやがって! 今すぐ自分の胸に手を当ててみろ。考えるまでもなく、否定しようのない事実が突き付けられるから。


「もう! 正直なんだから」


「どうだい? 僕の車に乗って、楽しい一時を過ごさないかい?」


「いいねえ!」


 可愛い発言にテンションが上がったのか、早智は全く疑う素振りもなく、我先にと乗車した。


 馬鹿が……。乗せられやがって。陽菜も呆れ顔だ。七海に至っては、痴漢を見るような冷たい目で睨んでいる。自分が可愛くないことくらい自覚しろよ……って、無理か。日頃から、自分のことを早智ちゃんって言っているくらいだからな。おだてられれば、喜んで自分から拉致だってされる女だ。


「どうする?」


「良いんじゃない? 馬鹿内なんて放っておけば」


「そういうわけにもいかないでしょ!」


 結局、俺達も皇一の車に乗ることにした。


 車に乗り込む前に、春日の素性を皇一に教えることにした。他人の恥部を告げ口するのは好きではないが、警察の厄介になるようなやつなので、構わないだろう。向こうがあまりにも余裕ぶっている姿を見て、気分を害したというのもあった。


「おい、お前の運転手をしている春日って女なんだけど……」


「知っているよ。この間、ストーカーやっているところを捕まったんだろ?」


「知っていたのか!」


「そりゃあ、知っているよ。彼女が警察から早く自由になるように便宜を図ったんだから」


 知っていて雇っているのか……。しかも、便宜まで図っただと? 余計なことをしやがって……。


「いろいろ困った性癖を持っているけど、彼女は秘書として優秀でね。そういうのは重要だと思わないかい?」


 日向が知ったら、さぞかし仰天するだろうな。次に、この能天気なプレイボーイに殺意を抱くに違いない。


 口止めされていたが、ストーカーの件を陽菜たちに説明してしまうことにした。元々陽菜も、七海も、皇一とは関係を持ちたくないようだし、早智だって、話を聞けば、遊びに行こう等と言うまい。


「おっと! 途中下車は認めないよ。せっかく陽菜と遊びに行けるのに、台無しにされちゃたまらないな」


 俺の表情の微妙な変化を読み取ったのか、少々強引に皇一が俺たちを車に乗せた。全員が車に乗り込んだのを確認すると、春日は車を出発させた。


「行き先はどちらへ?」


「駅前のカラオケで」


 こっちに反撃の隙を与えずに、皇一のペースで事が進んでいく。


 駅前までは信号がたくさんある筈なのに、一度も停車することなく、車はすいすい進んだ。


「ストーカーなだけあって、上手いわね」と、早智はよく分からない理屈で感心していた。


「どうなっても知らないよ……」


 仏頂面のままで、陽菜は言った。俺も皇一の誘いに乗ったのは失敗だったかなと薄々感づいていた。


新キャラがまた一人登場です。しかも、男です。当然ながら、岩見優司との間にフラグが立つことはありません! でも、結構重要なキャラですので、楽しんで読んでいただければ幸いです。

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