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岩見優司のリア充(?)な日常  作者: 霧島こう
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第百四話 生徒会とビキニ狂想曲

第百四話 生徒会とビキニ狂想曲


 当初は悪友二人と映画を観に来ていたのだが、ひょんなことから七海とも会い、一緒に映画鑑賞に行くことになった。


「それで? 今日は何の映画を観るの?」


 七海に聞かれたが、特に観る映画を決めているわけではない。わいわい騒ぐのが好きなので、どうせアクションものを観ることになるだろうなとは思うが。


 その旨を説明しようとすると、早智が先に説明した。


「皇一さんに見初められるために魅力について研究したいから、恋愛映画」


「却下!」


 早智の案を七海が一蹴した。ただ恋愛映画を観たいと言うだけなら、同意したかもしれないが、皇一の名前を聞いて不機嫌になったようだ。


「そんなつっけんどんにしなくてもいいじゃない。面白いわよ、恋愛映画。ねえ、優司。あと、ホイケル」


「俺に振るな。ていうか、俺が恋愛映画を観たがるように見えるか?」


「俺に至っては、こいつのついでか?」


 口々に恋愛映画に興味がない旨を伝えた。諦めきれない早智は尚も食い下がる。


「じゃあ、多数決で決めましょうか?」


 たった今、俺とホイケルが遺憾の意を表明したばかりなのに、多数決を申し込むとは。負けると分かっている勝負を挑む神経が分からない。


 見る映画が決まらないまま、映画館に着いた。今公開中の映画の看板が飾られていた。その中に、恋愛映画の看板を発見すると、早智はそこに俺たちを誘導した。


「あ、あれよ。あの映画。タイトルが英語だから読めないけど、面白い映画よ。たぶん……」


 お前、絶対に知らないだろ、その映画。あらすじどころか、タイトルも分からないって、どんだけだよ。


 呆れながら、恋愛映画の看板を見ていると、あることを思い出した。


「あ、この映画、陽菜と見たことがある」


「え?」


 以前、陽菜の別荘で一緒に観た恋愛映画だった。そうか。今一般公開されているのか。


「陽菜の親父さんが、映画会社のお偉いさんに頼んで、公開前にフィルムを貰ってきたらしくて、それを陽菜と一緒に観たんだよ」


「そんなことがあったのか……」


「公開前の作品を観れるなんて、金持ちってやっぱりすごい」


「相変わらず娘に甘いおやじね……」


 七海以外は、金持ちの人並み外れた生活ぶりに感嘆の声を上げていた。


「一度観たことのある映画より、観たことのない映画の方が観たいな」


 俺の一言がとどめの一撃だったらしい。早智は悔しそうにしていたが、アクション映画を観ることに同意した。いくら早智でも三対一ではさすがに諦める他あるまい。


 そういう訳で、この日は(というかいつものことだが)アクション映画を鑑賞した。最初はぶつぶつ不満を漏らしていたが、本来はアクション(というか爆発シーン)が大好物なのだ。




「なかなかの映画だったわね!」


 本質はアクション映画好きの早智は上機嫌で感想を言っていた。恋愛映画を観ていたら、今頃眠たい目をこすって、欠伸をしていたに違いない。


 映画館を出ると、ちょうど腹が空いてきていたので、ゲームセンターに向かう前に、腹ごなしをしようと言う話になった。


「ビキニの店の近くに美味しそうなイタリアンレストランがあったわ。そこで食べない?」


「ビキニ言うな」


 悪気はないのだろう。七海を攻撃しようと言うのではなく、ただビキニの店と言った方が、早智的にしっくりくるから言っているだけだろう。七海本人は気を悪くしているみたいだが。


「じゃあ、そこでいいんじゃないか? その……、水着の店で」


 ビキニの店と直接言うのはためらったらしいが、水着の店って……。もう少し他の呼び名は思いつかんか、ホイケルよ。


「もういいわよ。ビキニの店で……。気を遣ってくれてありがとうね、保池くん」


 早智と先生と母親以外の女子にあまり免疫のないホイケルが顔を赤くしながら、「お、おう」と答えていた。モテない男にありがちな、ちょっと優しくしてもらえるだけで、勘違いしてしまう病気にかかっているので、下手に優しい言葉をホイケルにかけるのは不用心だぞ、七海。ほら見ろ、早速ホイケルが顔を赤くしている。


 そんな訳でビキニの店の付近まで戻ってきたが、そこで早智が何かを見つけた。


「ねえ、あれって、あんたのところの会計じゃないの?」


「は? ……嘘でしょ」


 嘘ではなかった。ビキニの店の中で、水着を選んでいる夏凛がいた。しかも、手に取っているのは七海がさっき選んでいたビキニだった。


「会計までビキニに興味があるなんて……」


「ま、まだ買うとは決まっていないわ。気の迷いで、手に取っただけかもしれないし」


「気の迷いねえ……」


「な、何よ。文句あるの?」


 自棄を起こしているのか、七海が興奮気味に早智に突っかかっている。


 夏凛はというと、そのままビキニを持って、試着室に向かいそうな雰囲気だ。


「そろそろ止めてこようか」


「ええ……」


 別に人の趣味にいちゃもんをつける気はないが、七海の様子が痛々しかったので、夏凛に声をかけてストップをかけることにした。と、そこで夏凛と目が合った。




「いやあ~。買い物をしているところを見られていたなんて、恥ずかしいな」


 夏凛はそんなに熱中していなかったらしく、窓ガラス越しの視線にすぐ気付いて、向こうから店を出て、俺たちのところにやって来た。


「優司たちは何をしているんだ?」


「映画を観に来たんだ」


 七海はビキニを買いに来ていたんだぜ、とは言わない。俺だって、その程度の優しさは持ち合わせている。


「お~! いいな、映画。俺も一緒に観に行っていいか?」


「いや……、もう観てきたんだ」


「何だ、残念だな。……なあ、優司だけ、俺と二人でもう一本観に行かないか。話題のアクション映画とか、面白いぞ」


「いや、結構。しかも、その映画なら、さっき観てきたばかりだし」


「あらら……」


 映画の誘いが不発に終わって、夏凛はしょんぼりしてしまった。何かかわいそうに見えたので、この後、ゲーセンに行くけど、お前もどうだと誘った。無論、二つ返事でOKしてきた。


「よし! 夏凛も仲間になったし、まずは腹ごしらえだな」


 ビキニのことは忘れて、楽しむことにした。


 しかし、ビキニの脅威は去っていなかった。本当に見なきゃよかったのに、何気なく見てしまったのだ。例の水着売り場を。


「どうしたの? 目をカッと見開いたりなんかして」


 早智が聞いてきたので、水着売り場にまたも知り合いがいることを伝えた。


「か、会長が例の売り場にいる……」


「……は?」


 生徒会の人間だけでなく、その場に全員が絶句した。ここまで来ると、空いた口が塞がらない。


「うわあ、よりにもよって、またあのビキニじゃない」


 妹会長が手にしていたのは、七海と夏凛が手に取っていたものだった。


「ねえ、同じビキニを手に取っていたけど、そんなにあれがいいの?」


「な、何となくよ……」


「七海に同じく」


 夏凛が七海に「お前もあのビキニを買おうとしていたのか?」と言った後で、返事してくれた。


 あまり大した理由はないらしい。本当に何気なく手に取っただけなのだ。それで知り合いと一致してしまうとは。本当に恐ろしい偶然だ。


「ビキニ生徒会……」


 早智が呆れた様な、馬鹿にしたような一言をボソリと呟いた。それを聞いたのだろう。生徒会役員たちの顔が一斉に赤くなった。


 俺たちに見られているとは、夢にも思わない妹会長はビキニを持ったまま、どこかに電話をかけた。


「あ! お姉ちゃん、私、私!」


 人前だと言うことを意識していないのか、いつものボリュームで話していたおかげで、妹会長の声が、ガラス越しにも関わらずにはっきりと伝わってきた。電話の相手は陽菜だった。


「え~とね。今、水着売り場に来ているんだけど、すごいビキニを見つけたんだよ。これさえ着れば、お兄ちゃんもメロメロだよ。どうする?」


 みんなから一斉に白い目で見られた。自分は何も悪いことをしていないのに、どうしてこんな悪者みたいな扱いを受けなければいけないのだろうか。


「え? 駄目なの。恥ずかしい? お姉ちゃん、駄目だよ!」


「雲行きが怪しいわね」


「もっとプッシュすれば着るんじゃないのか?」


 両サイドから、悪友二人が悪魔の囁きを向けて来るが、俺は無視を通した。


 妹会長が熱心に陽菜にビキニを勧めていたが、結局、陽菜に買わせることは出来なかったようだ。「面白くないな!」と口をとがらせて電話を切っていた。早智に「残念だったわね」と慰められたが、それに対して、どんな反応を示せばいいのだろうか。


「優司としては彼女がビキニにならなくてショック?」


「どうだろうな……」


 見たい見たくないは別にして、もしこの場で妹会長に、「ビキニを買ってくるように」とか言われていたら、俺は相当気まずくなっていただろう。仏頂面を保っていても、汚らわしいものを見る目で睨まれそうな気がする。


「ん? ありゃりゃ! 優司と愉快な仲間たちだ!」


 ビキニ談議で盛り上がっていると、妹会長に気付かれた。「誰が愉快な仲間たちだ!」というツッコミが一斉に上がったが、俺は流した。


「こんなところで会うなんて偶然だね!」


 人懐っこい子犬のように、こっちに走ってきた。しっぽがあったら、振り切れんばかりの勢いで振られていたんじゃなかろうか。俺のところまで来ると、自分がここに水着を買いに来たことを聞いてもいないのに、一方的に話し出した。


「それでね。ビキニを見つけたから、お姉ちゃんなら似合うんじゃないかなって思って、電話で聞いてみたの。断られちゃったけど」


 ああ、知っているよ。お前の口から教えてもらったから。


 その後はお約束のように、「お兄ちゃんたちがここで何をしているの?」と聞かれたので、映画鑑賞と答えていた。ビキニを物色している生徒会員を見に来ましたとは言わない。


 問題のビキニだが、いつの間にか売り場からなくなっていた。俺たちが見てない時に、誰かが買っていったらしい。


昨日、本日の17時台に投稿すると予告しましたが、今はまだ17時台ですので、セーフということでよろしいでしょうか?

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