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岩見優司のリア充(?)な日常  作者: 霧島こう
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第十話 遊園地デート 後編 陽菜の告白

数日ばかり空けてしまいましたが、遊園地デートの後篇です。感想をお待ちしております。

第十話 遊園地デート 後編 陽菜の告白


 絶叫系のアトラクションばかり乗り続け、さすがに叫び疲れた俺たちは、バンジージャンプを体験した後、喫茶スペースで休憩することにした。


 休日の遊園地らしくどの飲食店も満員だった。かなり並んで、ようやくアイスカフェオレを二つ買うと、建物の外に設置されている喫茶スペースに座った。これだけ混んでいるのに、座れたのは運が良かったとしか言いようがない。


「えへへ! 今日は絶叫系ばかり乗っているよね。おかげで叫び疲れちゃったよ」


 そう言いながら、アイスカフェオレでのどを潤す陽菜に、疲れは全然見られず、あと十回は乗れそうに見えた。


 俺もまだ余裕があったが、さすがに同じ系統のアトラクションに乗り続けるのに、飽きてきた。いいかげん他のアトラクションにも乗りたい。


 後ろを見ると、お兄さんたちも席に座っていた。あの人たちの周りの席だけ誰も座っていなかった。強面で、スーツ姿なんだから、そりゃ浮くわ。気にしていないのは陽菜だけか。彼女の呑気な性格もここまで来ると尊敬するものがある。


「もう! さっきから優司君の様子がおかしいよ。まさかかわいい女の子を見つけて、その子に目が奪われたとか言わないよね!」


 お兄さんたちのことばかり考えて、陽菜に対して、おざなりな返事ばかりしていたら、陽菜が口をとがらせた。何か勘違いをしたのか、俺の浮気を疑っている。ここで変に慌てたら、誤解を強めることになっていただろうが、こういうところでは肝が据わってくれるので、落ち着いて、そんなことはないと弁解した。


 「そうだよね。優司君がそんなことするわけないものね」と陽菜は以外にもすんなりと納得してくれた。その後で、自分と話しているときに適当な態度を取らないでほしいと付け加えられた。俺は苦笑いをして、了承する。


 心配しなくても、俺が陽菜以外の女に目を奪われることはないよ。俺、基本的に草食系だから。草食過ぎて、たまにしか陽菜にも目を奪われないから。でも、適当な態度はとらないように気を付けるから。ごめんな、こんな彼氏で。


 その時、隣の席に女子二人組が座ってきて、話し始めた。何気なく聞いていると、女子の一人が最近、ストーカー被害に遭って困っているということだった。


「ストーカーだって! 怖いねえ」


「う、うん」


 同じく聞き耳を立てていた陽菜が、隣に聞こえないように、小声で話しかけてきた。俺は表面上は陽菜に同意したが、内心、ストーカーのことをあざ笑っていた。


 ストーカーがなんぼのもんじゃい。俺は今、ストーカーより怖いお兄さんたちに朝から付きまとわれてんだ。


「ねえ、優司君はさ。私がストーカーの被害にあったら、守ってくれる?」


「ああ、身を挺して守り抜くよ」


 格好つけているわけじゃない。最近の他の男子からの厳しい視線や、後ろのお兄さんたちのおかげで、恐怖に関する感覚がすっかり摩耗してしまい、ストーカーが襲ってくるくらいでは怖がらなくなったのだ。


「ありがとう! やっぱり優司君、頼りになる! 喧嘩も強くて、彼女のピンチを救ってくれる。おまけに優しい。理想の彼氏だよ♪」


 褒め過ぎだ。俺は自分がそんな人間じゃないことは痛いほど分かっている。誤解にしても、ぶっ飛び過ぎだ。しかも、喧嘩が強いって、どんな勘違いだ? 喧嘩したことがない訳はないけど、少なくとも、陽菜の前でやったことはないぞ。あまりにも疑問だったので、陽菜に質問してみることにした。


「喧嘩? 俺、そんなに強くないぞ」


「もう! 謙遜しちゃって! 以前、私を助けてくれたじゃない。隠しても無駄なんだから」


 陽菜は笑って答えるが、俺には心当たりがなかった。第一、屋上でホイケルと早智の陰謀に嵌って告白するまで、陽菜とは会話らしい会話もしたことがなかったのだ。大方、別の人間と勘違いしているのだろう。


「あの時の優司君、本当に格好良かったんだから♪ また見てみたいなあ。どこかにストーカーいないかな。そしたら、また助けてもらえるんだけど」


 そう言って、やらなくてもいいストーカー探しを始めてしまった。むしろ、ストーカー被害に遭いたがっているようにも見える。守るとは言ったが、積極的に厄介ごとへ巻き込まれていくのは困る。人間、平穏な日々が一番なのだ。


 しかし、あの時の俺とは一体誰なんだろう。俺に双子の兄弟はいないし、どうなっているのかサッパリだ。話を聞いていると、その出来事が元で、陽菜は俺に惚れたような素振りさえある。もし、他人の手柄を知らず知らずのうちに横取りしているのだとしたら、早めにハッキリさせなければならない。今度早智や七海に頼んで、詳細を聞いてもらおう。


 そんなことを考えている間も、陽菜はストーカー探しを続けた。そして、見つけてしまったのだ。後方に陣取るお兄さんたちを。


「…………」


 さっきまでの笑顔がものの見事に凍り付き、黙り込んでしまった。


「…………ちょっと待っててね」


 目をカッと見開いたまま、怒りの表情で、席を立とうとした陽菜を慌てて制す。


「お、おい。待てって」


 慌てて陽菜を制する。


「大丈夫! すぐに終わらせるから。優司君には迷惑をかけないから」


 お兄さんたちもまずいと思ったのか、相変わらずの仏頂面の中にも、心なしか困惑しているのを感じた。


「い、良いじゃないか。守られているみたいで。もちろん、何かあったら、俺も守るけど、人出は多い方が良いし」


 自分は何を言っているのだろうか。とにかく陽菜を止めないと、何をしでかすか分からない恐怖を感じた。今朝のお兄さんたちへの接し方から察するに、周りを凍り付かせることになろうことは想像できた。あまり人ごみで騒ぎを起こしたくない。


「だって、せっかくのデートだったのよ。私、本当に楽しんでいたのに……。あんなのにつきまとわれたら、台無しじゃない!」


 今にも泣きだしそうな顔で、陽菜はポツリポツリと文句を言った。


「いいじゃないか。後ろにお兄さんたちがいようと楽しめば。俺は別に気にしないぞ」


 なんで俺がお兄さんたちの肩を持っているのか不明だが、いつの間にかこうなってしまっていた。ちなみにお兄さんたちはどこかに消えていた。雇い主をこれ以上怒らせないようにと、配慮したのかもしれない。陽菜に見つかる前から、配慮してくれれば助かったのに。次回からは尾行の上手い人をボディガードに寄越すべきだ。


「ほら! お兄さんたちももういないぞ。これでデートの邪魔されることもない。ここから挽回すればいいじゃないか」


「う、うん……」


 陽菜は渋々納得したが、家に帰った後で、絶対に一悶着あるんだろうな。仕事熱心なばかりに雇い主に睨まれたお兄さんたちの行く末がちょっと心配になった。絶対に揉めるな。でも、俺には関係がないことだと思い直し、これ以上考えるのを止めた。


 あと、今の一件で、ストーカーに狙われた際、俺が守る前に、二人の時間を邪魔されたことにより激怒した陽菜がストーカーに制裁を加える確率の方が高いことを何となく感じ取っていた。




 半ば強引に休憩を終わらせると、遊園地巡りを再開した。休憩前は絶叫系ばっかりだったので、お化け屋敷や、迷路、観覧車など絶叫とは無縁のアトラクションを中心に遊んで行った。お化け屋敷も絶叫系だという方もいると思うが、俺も陽菜もお化けには強く、お化け役の人が驚かしてきても、落ち着き払った声で、「お疲れ様です」と言い、向こうを困らせたほどだ。お化け役の人、頑張って脅かしてきたのに、淡白な反応しか出来なくてごめんなさい。


 俺は出来る限り、柄にもなく、笑える話題をどんどん提供して、陽菜を笑わせるように努めた。


 その甲斐もあってか、だんだんとお兄さんたちのことを忘れていったのか、陽菜にも笑顔が戻っていった。


 その後は何も起きずに、無事楽しい時間を過ごすことが出来た。お兄さんたちも、空気を読んでくれたのか、もう姿を目にすることはなかった。


 時間は瞬く間に過ぎていき、あっという間に帰る時間になってしまった。




「私ね。泊まってもいいように、準備をしてきたんだよ」


 別れ際に、意味ありげな視線を俺に向けてきた。もっと連れ回してほしそうな目で俺を見つめている。


 あんまり遅くまで陽菜と遊んで家の人を心配させたくなかったので(というか、心配させて、またお兄さんたちを送られても困るので)、まだ不完全燃焼気味の陽菜の意図に気づかないふりをして、やんわりと延長戦の提案を断った。


 しばらく残念そうな顔をしていたが、陽菜は大人しく従ってくれた。


 だいぶ暗くなっていたので、家まで送ると申し出たが、迎えが来ていると断られ、遊園地の前で別れることになった。


 遊園地を出たところに、いかにも高級そうな黒塗りの車が停まっていた。確認する必要もないと思ったが、一応陽菜に確認する。帰ってきた答えは、やはり彼女の家の車とのことだった。


 車の中から笑顔で手を振ってくる陽菜と別れた後、遊園地の前で俺は一人佇んでいた。どっと疲れが出て、俺は近くにあったベンチに崩れ落ちるようにもたれかかる。


「疲れた……」


 今日一日で、お嬢様と付き合うことの大変さを嫌というほど痛感した。肉体的にかなり疲れたけど、楽しかったな。数日したら、陽菜はまたデートしたいとか言ってきそうだ。またあのお兄さんたちとも顔を合わせることになるかもしれない(もう二度と会わないかもしれないけど)。陽菜を食い物にしようという邪まな気持ちはないので、また会ったらせめて笑顔で接してきてくれれば嬉しいな。


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