63 義賊という不快(4)
数日後の午後。
キャサリンは手帳を机の上に広げていた。
エマが整理した情報が、そこには端的にまとめられている。
グリーンフィールド夫人の動き。
ヒューゴの置かれた立場。
アンネの周辺に出入りする人物。
「エマ、一つ確認させてちょうだい」
顔を上げずにキャサリンが言う。
部屋の端に控えていたエマが、静かに前に出た。
「夫人が次に仕掛けようとしていること、何かつかめた?」
「はい。少し込み入った話になりますが……」
エマが手元の書類に目を落とした。
「夫人はレイチェル・ソーントン嬢との縁談を、ヒューゴ様に納得させる算段を立てているようです。ただ、ヒューゴ様がなかなか首を縦に振らないために、業を煮やしているようで……」
「アンネ嬢への嫌がらせは、その一環ということね」
「恐らくは。拠り所から切り崩すつもりなのでしょう。アンネ様の評判を少しずつ落とし、ヒューゴ様を諦めさせる。それと並行して、縁談の条件を整えていく形なのだと思われます」
キャサリンは手帳を閉じた。
「レイチェル嬢はどんな方?」
「表向きの評判は穏やかです。ただ――」
エマが一拍置いた。
「家の財政が、かなり苦しいようです。ここ数年で動きが大きく、使い道の不明瞭な出費も確認されています」
「……。独自の蓄財をしているのかもしれないわね」
「そう疑っています。ただ、まだ確証は取れていません」
「引き続き調べておいて」
エマが一礼して下がろうとすると、キャサリンが思い出したように声をかける。
「それともう一つ。アンネ嬢に会いに行くわ。自然な形で場を作れるかしら」
「すでに考えております」
侍女が振り返る。
その表情はいつもと変わらないが、用意が整っているということだけははっきりと伝わってきた。
「フィリップ様が懇意にしている音楽家の方がおります。その方を通じてならば可能でしょう。後援者として繋いでもらう形であれば、不自然ではございません」
「お願いするわ」
キャサリンが窓の外に目をやった。
雪曇りの空だ。
今日あたりにまた降り出しそうだと思っていたら、案の定、白いものがちらつきはじめた。
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