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タイムリープするお嬢様――二度目の婚約破棄はもう遅い。あなたが破滅する始まりです  作者: 御咲花 すゆ花
4話 リディア・ウルペッカ

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26 届け、この声を

 レナは怒っていた。

 燃えるような怒りではない。

 冷たく澄んだ怒りだった。

 理由は単純明快。

 お世話になっている薬師のリディアが、理不尽な目に遭っていることを知ったからだ。

 レナの本業は研究者であり、リディアと関わることは少ないが、それでも薬草の仕入れ先として頻繁に利用させてもらっている。


 それに同じ経歴を持つ者として、少なからずシンパシーも感じていた。

 どうにかして力になりたい。

 だが、自分に何ができるだろうか。


「……」


 浮かない顔をして研究室に入って来たレナに、ソフィアは心配になって声をかけていた。


「どうしたの? まさか、またあなたの記録帳が?」

「いえ……自分のことではないんです」

「じゃあ、いったい何?」

「実は――」


 レナから事情を聴いたソフィアが、沈鬱な表情でうなずく。


「なるほどね……」

「助けてあげたいんですけど、どうしていいのかわからなくて」


 ソフィアは考えこむ。

 研究者と薬師では分野が違う。

 自分が動いても、正直、大したことはできないだろう。

 だからといって、見て見ぬふりをすることはできなかった。


「……あてが全くないわけじゃないわ」

「本当ですか!?」


 レナが驚いたようにソフィアを見る。


「さすがに、婚約の問題や薬師側の不正は私の手に余るわ。でも、そういうことに得意な知り合いがいるの。彼女に助けを求めましょう」


「彼女って……」

「エルフェルト公爵家のキャサリン嬢よ」


 平民のレナでさえ、その名前は知っていた。

 濡れ衣を着せようしたジェームズ殿下を、返り討ちにしたという女傑である。


「お知り合いなんですか……?」


 レナは目を白黒とさせて、ソフィアに尋ねる。


「以前、少しお世話になったことがあるの」


 それ以上の詳細は語らなかったが、ソフィアの言葉には確信があった。




✿✿✿❀✿✿✿




 数日後、キャサリンのもとをソフィアが訪ねていた。

 屋敷の応接室で向かい合い、キャサリンはレナからの話をソフィア経由で伝えられる。

 申請の経緯。

 セリーヌの動き。

 リディアの感じているだろう焦りと、それでも薬を完成させようとしていること。

 キャサリンは黙って聞いていた。

 時折、紅茶のカップを口につけたが、最後まで言葉を話さなかった。


 ――確かに、これはソフィア嬢だけではどうしようもないわね。


「事情はわかりましたわ。とにかく、やれるだけのことはやってみましょう」

「ありがとうございます」


 ソフィアがキャサリンに頭を下げた。


 ――薬の功績を取り戻すことと、セリーヌ嬢の不穏な動き……。とりあえず、発表当日に何が起こるのかは見ておかないとまずいわね。


「発表は私も同席できるかしら?」

「もちろんです。エルフェルト家であれば、現場にいても何も不自然ではないと思います」


 ソフィアの返事に、キャサリンはうなずき、少しの間考えるように目を閉じた。


「リディアさんという方は、今どういう状態ですか?」

「薬の完成を急いでいます。申請が出てしまった以上、一刻も早く副作用を解消しなければと」

「……そうですか」


 キャサリンが窓の外に視線を向ける。

 ソフィアも釣られて外に目を向けるが、すぐにキャサリンは口を開いていた。


「動けるかどうかは、当日次第ですわ。証拠が足りなければ、できることも限られてしまいます」

「……はい、承知しています」


 ソフィアがもう一度、キャサリンに頭を下げた。

 それを見るにつき、キャサリンは立ち上がる。


「エマ」

「はい、お嬢様」


 そばで控えていた侍女が、静かに前に出る。


「セリーヌ嬢について、調べられるだけ調べておいて」

「かしこまりました」


 エマが一礼して下がっていく。

 屋敷を去っていくソフィアの後ろ姿を眺めながら、キャサリンはすでに頭の中で道筋を考えはじめていた。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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