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タイムリープするお嬢様――二度目の婚約破棄はもう遅い。あなたが破滅する始まりです  作者: 御咲花 すゆ花
4話 リディア・ウルペッカ

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27 発表の当日

 発表当日の朝、リディアは診療所に寄った。

 習慣だからという理由だけではない。

 今日という日を前にして、もう一度、子供たちの顔を見ておきたかったのだ。


「……」


 少年カイムのベッドの前。

 椅子を引いて、リディアはしゃがみこむ。

 顔色は、先週より少しだけいい気がした。


「今日、発表があるの」


 リディアが声をかけると、カイムは目を丸くした。


「もう完成したのか?」

「ホントはあと少し……なんだけどね」


 正直に答えた。

 嘘をつくつもりはない。


「でも、必ず完成させるわ。約束する」


 カイムがゆっくりとうなずく。

 その顔がリディアの胸に深く刻まれた。


「……」


 診療所をあとにして王宮へと向かう道すがら、リディアは少しの間だけ足を止めた。

 空は高く晴れている。

 風が髪を軽くなでた。

 今日、何かが起きてしまうかもしれない。

 そんな不安が数日前からずっとあった。

 心配しすぎだろうか。

 具体的なことはわからなかったが、気がかりなことは多かった。


「きっと大丈夫よね」


 リディアが静かに息を吸う。

 足を踏み出す。

 王宮への道を、一歩ずつ歩いていった。




✿✿✿❀✿✿✿




 王宮の発表会場は、すでに多くの人で埋まっていた。

 貴族、医師、王宮の関係者。

 錚々たる顔ぶれが席につき、ざわめきが会場全体を包んでいる。

 新薬の発表というだけあって現場の空気には、濃密な期待が含まれていた。


「思ったより人が多いですね」


 その端の席に、目立たないように座っている2人の人物がある。

 キャサリンと、その侍女のエマだ。


「こんなものじゃないかしら? まあ、それだけ注目されているのかもしれないわね」


 エマが尋ねれば、キャサリンが会場を見渡しながら答える。

 医師たちの表情。

 貴族の身振り。

 そして壇上の近くに座っている、ヴィクターの姿。


「……」


 端整な顔立ちに、自信がめいっぱい表れている。

 今日の発表を心から楽しみにしているようだった。

 悪意のかけらもない、晴れやかな顔だ。


 ――それが一番、始末に悪いのよ……。


 キャサリンが首を振って、胸中でため息をつく。

 視線を動かし、キャサリンがリディアを探す。


 ――見つけた。


 顔を合わせたことはまだないが、ソフィアから特徴は聞いている。

 関係者席に腰を下ろしているので、間違いないだろう。

 会場のやや端で、背筋を伸ばして座っているのがリディアだ。


「……」


 緊張しているのか、あるいは覚悟を決めているのか。

 その横顔からは、どちらとも読み取れるために判別がつかない。

 確かなのは、今日の発表をリディアが楽しみにしていないという点だけだろう。


「エマ、セリーヌ嬢はいる?」

「はい。右手後方、3列目です」


 即答だった。

 キャサリンは視線をそちらに向けないまま、うなずく。


「動きに注意しておいて」

「もちろんです」


 頼もしい侍女の返事に、キャサリンはようやく口元を緩ませた。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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