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【WEB版】私はただの侍女ですので(大嘘) ~ひっそり暮らしたいのに公爵騎士様が逃がしてくれません~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第六章

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バレバレよ

 王城での話が終わった後、私は屋敷に戻らなかった。

 アスノトにお願いして、一人で街のほうへと向かっている。

 リク王子の一件に関して、必要な材料を街で集めたいから、という理由で。


「少し強引過ぎたかしら」


 でも、大丈夫。

 私が求める材料はきっと集まる。

 街中を歩き、商店街へ続く道は混むから、近道をする。

 人通りの少ない道を意図的に、誘うように。


「――ずっと、視線は感じていたのよ」


 黒い影が建物の間を飛び交う。

 暗殺者……。

 私たちが王城に向かう時からずっと、誰かの視線は感じていた。


「上手く魔法で気配を消していたみたいね。でも肝心の魔力を消せていないわ」


 魔力には感情が乗る。

 怒り、悲しみ、歓喜、それぞれが魔力に与える影響は異なる。

 私は感じていた。

 私たちを観察し、隙を窺っている嫌な魔力を。

 仮にも女王として君臨し、見られ続けてきた私だ。

 彼らの視線に、敵意に気付かぬはずもない。


「来るなら来なさい。逃げも隠れもしないわよ」

「――馬鹿な女だ」


 黒い影が私の背後に迫る。


「死ね」

「――生憎ね」

「ぐっ!」


 首元にナイフを振ろうとした暗殺者が動きを止める。

 彼の身体には影の手が巻き付いていた。


「これは……シャドウバインド!?」

「正解よ。自分から間合いに踏み込んでくれてありがとう。いろいろ聞かせてもらうわ」


 随分とマヌケな暗殺者たちだ。

 自分たちが誘い込まれているとも気づかずに……。

 時代が流れ、刺客の程度も下がったのかしら?

 だったら悪い時代じゃないわね。

 

「くっ、動けん……いつのまに詠唱を……」

「何を言っているのかしら? 一流の魔法使いなら、詠唱も魔法陣も省略するものよ」

「なっ……貴様、ただの侍女ではなかったのか?」


 本当にマヌケな暗殺者ね。

 この状況でそんな悠長なことを口にするなんて。

 それとも、残っている仲間がなんとかしてくれると思っているのかしら?


「やれ! 生け捕りは中止だ!」

「滑稽ね」


 一斉に襲い掛かる暗殺者たち。

 五人同時に、別々の方向から襲い掛かってくる。

 そして全員、私の影で拘束された。


「どこまでマヌケなのかしら。見えていなかったの? お仲間の失敗から何も学習していないようね」


 近づけば影に捕まる。

 そんなことも気づかずつっこんでくるなんて。


「馬鹿な! この人数を一度に拘束だと? シャドウバインドは一人に対してしか」

「ああ、そうなっているのね、今は」


 暗殺者の程度だけじゃない。

 現代では魔法の技術も、千年前より退化しているのかもしれない。

 平和になったことが理由だろうか。

 私が生きた時代は、魔法がなければ何も守れない。

 戦うために最も必要な力だったのに。


「けどそうね。もう限界かしら?」

「そうだろう! これほどの魔法、長くは維持できまい! いずれ限界がくれば貴様は終わりだ。いいや、今この瞬間に終わる!」

「――! もう一人」


 隠れていた。

 ことは当然知っていた。

 勝機があると思い込み、真上から暗殺者が落下してくる。

 演技に決まっているじゃない。

 このまま最後の一人も拘束して――


 と、思ったけど必要なさそうだ。


「おい。俺の婚約者に武器を向けるな」

「なっ、ぐあ!」

「まだ婚約者ではありませんよ? アスノト様」


 空中で暗殺者はアスノトに殴られ、壁に叩きつけられた。

 彼らは驚愕する。

 さすがに、彼のことを知らぬはずもない。


「騎士王!? なぜここに? 屋敷へ向かったのでは……」

「そう報告したお前たちの仲間なら、とっくに拘束済みだ」

「気づいていらしたのですね。ご自身も観察されていることに」

「当然だ。君が何を考えているかまではわからなかったが、念のために追いかけて正解だったよ」


 アスノトは拘束されている暗殺者たちを次々と殴り、昏倒させていく。


「危ないことをする」

「申し訳ありません。これが一番効率的でした」

「だとしても、俺にも話してほしかったな。次からはそうしてくれ」

「かしこまりました。それと、一人は眠らせずに残してください」


 最後の一人を殴ろうとして、アスノトの拳が止まる。

 怯えた暗殺者は目を閉じる。

 再び目を開けた時、私と視線が合う。


「さぁ、教えてもらいましょう。あなたが知っていることを全て」

「話すと思うのか?」

「いいえ、だから無理やり聞き出します」


 私は暗殺者の額へ人差し指を向ける。

 相手の脳内から情報を吸い上げる魔法を発動させた。

 この魔法は、相手が眠っていると使えない。


「や、やめろ……お前は一体……!」

「――そういうことですか」


 記憶の抜き取りは終わった。

 暗殺者を仕向けたのは誰なのか、彼らの目的も含めて理解する。

 そしてため息をこぼす。

 どうやら、私が予想した通り、ありきたりな筋書きが待っているようだ。


「私はただの侍女です」

「ふざけ――」

 

 暗殺者の額を指ではじく。

 その衝撃で脳が揺れ、暗殺者はふらつき倒れた。


「何をしたんだ?」

「魔法で記憶を抜き取りました」

「そうか。じゃあ何かわかったんだな?」

「はい。お話しする前に、まずは彼らを運ぶべきかと」


 路上に暗殺者が転がっている。

 この状況はよくない。

 いろんな意味で危険だ。


「わかった。騎士団をここに向かわせる。話は屋敷に戻ってから聞くとしよう」

「かしこまりました。では私は屋敷に戻ります」

「ダメだ。また一人にしたら危険なことをするだろう? ここにいるんだ」

「……かしこまりました」


 過保護な人だ。

 暗殺者に襲われても傷一つなく、完封して見せたばかりなのに。

 彼だって気づいているはずだ。

 私なら大丈夫だと。


「イレイナ」

「なんでしょう?」

「信頼することは、心配しない理由にはならない。よく覚えておいてくれ」

「……かしこまりました」


 本当に、心配性な人だ。


  ◇◇◇


 暗殺者たちは駆けつけた騎士が対応してくれた。

 その後の処理も彼らに任せるとのことだ。

 私とアスノトが帰宅するときには、すっかり日も暮れてしまった。

 夕食に入浴も済ませて、ようやく時間ができる。

 私はアスノトと共に、屋敷のベランダで話す。


「王城の関係者に、反王族を掲げる勢力が紛れ込んでいます」

「――! それは事実か?」

「はい。間違いありません。あの暗殺者を裏で操っているのは、反王族の勢力です」

「……そうか」


 アスノトは静かに頷く。

 驚きが薄いところを見るに、何となく察していたのかもしれない。

 彼は続けて語る。


「反王族を掲げる者たちの存在は、これまでにもたびたび問題になっている。俺も何度か反王族を名乗る者たちと剣を交えた。王城内にもいるとはな……」

「具体的に誰か、まではわかりませんでした。彼らは姿を隠して暗殺者に接触しています。ただ王城内の事情をある程度は把握している所から見ても、かなり近くに潜り込んでいると思います」

「危険だな。その気になれば陛下に刃を届かせられるということじゃないか」

「はい。ただ、そうなっていない現状、陛下の近くではないでしょう」


 国王陛下がどういう人物か知らない。

 ただ、反王族勢力の存在を知っているなら、易々と近づかせはしないだろう。

 そうなると陛下の周囲ではなく、姫様や王子様の……。


「はぁ……」


 ここまで情報が揃えばもはや確信が持てる。

 候補は一人しかいない。

 むしろなぜ、誰もその可能性に触れてこなかったのか。

 お人好しが過ぎる。

 というより、そういう甘さを上手く利用されて、付け込まれていたのだろう。

 だけど、私には通じない。

 信頼が確実なものではないことを、私は嫌というほど知っているから。


「アスノト様、リク王子ですが、やはり病ではないと思われます」

「……わかったんだな? 黒幕が」

「はい。ですので少しお時間を――」

「もちろん俺も協力させてもらう。これは主人としての命令だ」


 私のセリフを先んじて潰してきた。

 ずるい人だ。

 こういう時だけ、主人としての命令権を主張するなんて。


「ご安心ください。最初から一人で動くつもりはございません。どうか、アスノト様のお力も貸していただきたいと思っております」

「――そうか。ぜひとも頼ってくれ」

「はい」


 今度は嬉しそうに。

 剣を振るっている時は凛々しいのに、時折見せる子供っぽさは何なのだろう。

 

「では今夜、今から動きます。お手伝い頂けますか?」

「もちろんだ。国に潜む脅威を放置することなど、騎士としてできない。君に刃を向ける者も、俺は許さない」

 

 さぁ、心強い味方もいる。

 今は一人じゃない。

 過去の失敗は繰り返させない。

 王族は恨まれて当然?

 違う。

 恨まれていい理由なんて、当然なんて思わせない。

 彼らは気づくべきだ。

 私たちも、一人の人間なのだということに。


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