139話 お告げを受けてみた
お待たせしました! 連載再開です!
◆前回までのあらすじ
アニメ&コミケ作り → 異世界旅行 → マザーAIが猫耳お母さんメイドぶいちゅーばーになったことで世界が救われる。
◆ローナ・ハーミット
ソシャゲとスロットが好きな普通の女の子。
◆光の女神ラフィエール
いつも謎の白い空間にいる女神。
この白い空間には移動に便利なバグがあるため、公共交通機関扱いされている。
「――というわけで、異世界旅行に行ってきました!」
異世界旅行からしばらく経ったある日のこと。
王都に帰ってきたローナは、日課のついでに、光の女神ラフィエールのもとへ旅行土産をお供えしに来ていた。
「えへへ! 今回行ってきた異世界は、機械が人間を管理している幸せな世界でして! ピコちゃんってアンドロイドと友達になったり、マザーAIのマザーさんと“ぶいちゅーばー”配信したりして、すっごく楽しかったです! あ、これ、異世界のみんなと撮った写真です!」
「…………」
本来であれば、女神の神託を授かるための神聖な白い空間の中。
光の女神ラフィエールとふたりでティーテーブルを囲みながら、ローナは旅行の土産話に花を咲かせ――。
「…………」
「って、あれ? ラフィエールさん、今日は全然しゃべりませんね。こっそりカニでも食べてます?」
「いえ、あの、我が使徒ローナよ。ひとつ質問があるのですが」
「はい」
「…………異世界って、なに?」
「え?」
思いもよらぬラフィエールの問いに、ローナはきょとんとする。
「なにって……あの、少し前に『これから異世界に行ってきます』って言ったじゃないですか」
「はい。たしかに、それは聞きましたが。実はなんと、それだけしか聞かされてないんですよね」
「神様なら1を聞けば10を知るかなって」
「神への信頼が重い」
と、ラフィエールは少し頭を抱えてから。
「ともかく、我が使徒ローナよ。神は言っています……異世界とはマジでなんなのですか? なにがあったら異世界に行くことになるのですか? わたくし気になります」
「え、でも、そろそろこのお告げ空間の時間制限が……」
「なら、もっかいルーム作るのでインし直してください」
「はい」
そうして、女神のお告げ空間に入り直したあと。
ローナは、あらためて異世界旅行のいきさつをくわしく説明し始めた。
「えっと、まず……この世界って、ちょっと前に異世界から侵略されてたじゃないですか」
「この世界始まって以来の大事件じゃないですか」
ラフィエールから、いきなりストップがかけられた。
「え、待って……なんで? なんで話の前置きから、世界が危機ってるのですか? どうなってるのですか、この世界?」
「いつものことじゃないですか」
「そんな毎月の恒例行事みたいな……」
「とりあえず、世界の危機とかは置いといて話を戻しますが」
「え、世界の危機の話これで終わり?」
「異世界からの侵略のおかげで、この世界に異世界へのゲート的なものができたので、『これはもう異世界旅行に行くしかない!』って思いまして……さっそく、次の日に異世界に行ってきたというわけです」
「フットワークの申し子すぎる」
「ちなみに、今回行ってきた異世界はこんな感じですね」
『――お帰りにゃさいませ♡ 猫耳お母さんメイドぶいちゅーばーのマザーAIだにゃん♡』
コメント:幸福になれた
コメント:もっと管理されたい
コメント:マザー様への奉仕は最高の幸福
コメント:ばぶううううッ!!
「……いっぺん滅ぶべきなのでは、その世界?」
「それと、この世界って、他の異世界とも数か月に1回ペースでつながるみたいでして……えへへ、次はこの“えろげ”っていう異世界にも行ってみたいなぁって――」
「…………」
「あれ? どうしたんですか、ラフィエールさん、頭を抱えて……もしかして、なにかお悩みでも? あっ、そうだ! これ、異世界名物の幸福薬(※合法)です! えへへ、この薬を鼻から吸うと、全ての負の感情から解放されるんですよ!(※安全)」
「……我が使徒ローナよ。薬物の密輸に手を染めないでください」
そんなこんなで。
前回までのあらすじをラフィエールに語り終えたところで。
「それにしても、さっきの……“ぶいちゅーばー”でしたか? インターネットというのは、このようなこともできるのですね」
ラフィエールは、先ほどの配信動画に興味を持ったようだった。
「ふむ、これは良き……とても良きですね。多くの人間に自ら言葉を伝えられるのは、わたくしたちの悲願でもある信仰アップにも使えそうですし」
「信仰アップが悲願なんですか?」
「はい、信仰こそが神々の力の源泉――より正確には、人々の『神TUEEE』的な想像や祈り、夢や願いが、創世物質を通して少しずつ世界を再構築し、神を本当に強くするのです」
「ほぇー」
「1ミリも興味なさそう……まあ、つまりですね、なにが言いたいかというと」
ラフィエールはわざとらしく咳払いをしながら、先ほどのマザーの配信画面にちらちらと視線を向ける。
「わたくしもこの方のように“ぶいちゅーばー”というのをやってみたいなー、なんて思うわけでして」
「えっ、ラフィエールさんも“猫耳お母さんメイドぶいちゅーばー”に!?」
「いえ、そんな悲しきモンスターみたいなやつではなく」
「……って、あれ? でも、ラフィエールさんって、この前“ぶいちゅーばー”デビューしてましたよね?」
「え?」
「え?」
ローナたちは、きょとんと顔を見合わせる。
「いえ、あの、デビュー? とかはしてませんが……」
「え、でも、ラフィエールさんの配信動画がインターネットにあるんですが……あ、ちょうど昨日も配信してますね」
「昨日?」
と、困惑しているラフィエールに、ローナは配信サイトの画面を見せる。
その画面の中には、ローナたちがいるのと同じ『真っ白な空間』をバックに、たしかにラフィエールが映っており――。
『――我が使徒たち、こんらふぃ~☆ 七女神の光担当、ぴっかぴかの新人ぶいちゅーばー、ラフィエールで~す♪ 今回の生放送でも、最新情報をたっぷりお告げしちゃいますよ~♪』
キャピキャピとした声で、リスナーに全力で媚を売っている光の女神の姿がそこにあった。
「……なにこれ……知らない……怖……」
ラフィエール(本物)が本気で怯えだした。
「えっ、なに……え? なんで、わたくしが? 待って本物? え? そ……そういえば、この配信してる時間の記憶がまったくないのですが……」
「考えるより先に、体が“ぶいちゅーばー”してたとか?」
「そんなトップ冒険者の逸話みたいな……」
『――あれ、我が使徒たち~? 我が使徒たち~……おっと! これは“我が使徒”じゃなくて、“和菓子”でしたね(笑)』
「…………」
「…………」
「……ラフィエールさん」
「これ、わたくしがスベったことになるんですか!?」
「あっでも、『かわいい』ってコメントもたくさんついてますね」
「なら、スベったのは、わたくしかぁ……」
「あ、そうだ。ちょっと『こんらふぃ』してみてください」
「――我が使徒たち、こんらふぃ~☆ 七女神の光担当、ぴっかぴかの新人ぶいちゅーばー、ラフィエールで~す♪ ――って誰がやりますか」
「仕上がってるじゃないですか」
と、そんなどうでもいい話をしていたところで。
『――それでは、みなさんお待ちかねの最新情報お告げタ~イム☆ です♪』
配信画面のラフィエール(?)のほうに動きがあった。
『――メインストーリーもついに最終章! というわけで、明日からは、な、な……なんとぉ!? “魔王”がついに復活しちゃいます☆ みなさん、ぜひぜひお楽しみに~♪』
「「…………ん?」」
――かくして。
この世界のクライマックスが、今――始まろうとしていた。
というわけで、日常回やります。
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