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電話

「葵さん、本屋に着いたよ」

 そう言い先に入ってしまった四宮くんの後を追って本屋に入る。

「葵くん。私、奥の方で見たいのがあるから少し別行動でも良い?」

 そう言うと四宮くんは振り返り笑顔で了承してくれた。

「うん、大丈夫だよ」

「ありがとう」

 そう言い目当ての参考書を探すことにした。



 探していたものは見つかったが本棚の一番高い棚にあり届かない。脚立が近くにないか見渡すと近くにありすぐに見つけることができた。

 位置を確かめ脚立の上に乗り参考書に手をかけたところで四宮くんの声が聞こえた。

「葵さん」

 そこには笑顔の四宮くんがいた。手には何冊かの本を持っている。

 自分の用事が済み探しに来たのか。そう思い自分の本を取ろうと向きなおした瞬間バランスを崩してしまい脚立から落ちてしまった。あまり高さがないとはいえ思わず目をつぶってしまった。

 しばらくしても衝撃がなくそっと目を開けると四宮くんに抱きついていた。どうやら四宮くんが受け止めてくれたようだった。

「あ、ありがとう」

 顔が赤くなるのを感じつつそう言い離れようとすると抱きしめられていて離れられない。

「葵くん、ありがとう」

 もう一度言い離れようとしてもより強く抱きしめられ、離れられなくなってしまった。飽きらめされるがままにしていると急に離された。

「ごめん……つい」

 そう言いうつむいた四宮くんの耳は真っ赤になっていた。

「大丈夫だよ、助けてくれてありがとう」

 何も思わなかったかのように言えただろうか。いくら何とも思っていないとはいえ、流石に恥ずかしい。

 そこで私と四宮くんの携帯が同時に鳴った。

「ごめん、出るね」

 そう言い少し離れてから電話に出る。

 用件は同じく陽夜のメイドをしている水谷先輩からだった。旦那様からの連絡があるのですぐに戻りなさいとのことだった。

 四宮くんの場所に戻るとまだ電話中のようだった。軽く頭を下げ先に帰らせてもらう。学校で謝っておけば良いだろう。

 先輩は電話で出かけている私と蒼井さんが戻るまで待ってくれると言っていたが旦那様に長時間待っていただくわけにはいかない。そう思い急いで戻った。



 屋敷に戻り急いで髪型と服装を整える。正直コンタクトを外す時間も惜しいが外しメガネに変え旦那様や先輩のいる部屋へと向かう。

 入る前に一回息を落ち着かせてからノックをする。

「入りなさい」

「失礼します」

 扉を閉めご夫妻、そしてお嬢様に頭を下げる。

「そんなに緊張しなくても良い。私たちは娘のように思っているんだから」

「ありがとうございます」

 そう言ってもらえたが使用人が全員集まる時に遅れてしまったのは申し訳ない。

 そこに蒼井さんが入ってきた。

「失礼します、遅れてしまい申し訳ございません」

 そう言い頭を下げた。

「二人とも遅れてないから大丈夫だよ、そもそも約束の時間までまだ十五分以上もある」

「お気遣いありがとうございます」

 蒼井さんはそう言うと旦那様の近くに行き鈴木さんの横に並んだ。

「全員揃ったね、今日集まってもらったのは明日から一週間ほどここをあけなくてはならなくなってしまってね。いつもは鈴木について来てもらっているんだが、今回は蒼井に頼もうかと思ってね」

 旦那様がそう言うと蒼井さんは一歩前に出て、旦那様に頭を下げた。

「そう固くならなくても大丈夫だ。そこで、蒼井が抜ける代わりにここでのことは四宮さんに任せられないかと思ってね、基本的にはいつもと変わらないから大丈夫だとは思うけど陽夜の方も頼みたいから水谷さんもフォローしてあげて」

「かしこまりました」

 そう言い頭を下げる。

「そのくらいかな、蒼井はもう下がっていいぞ、鈴木も手伝ってやってくれ。他も四宮さん以外は下がって良い」

「失礼します」

 そう言い蒼井さんと鈴木さん、他の人は部屋から出て行った。

「さて、今回ここをあけるのは出張ついでに蒼井には仕事に慣れてもらおうかと思ってね。鈴木も年だ。それに雇用期間もそろそろ切れる。延長するかは本人次第だがな。陽夜も婚約者探しも始めないと。陽夜の婚約者探しも四宮さんに頼みたいけどな。あと大学はどこに行きたいか?」

「もうそんな時期ですね、私はこれからもお願いしたいと思っているのでお嬢様と同じところに行きたいと思っています」

「だが、陽夜よりも成績が良いと聞く。四宮さんならどこでも行けると思うぞ」

「ですが……」

「別のところに行ったからって追い出すわけじゃないしクビにするわけじゃない。こちらからすればいてくれて助かっているから望まない限りは辞めてもらおうとも思ってない。そのことも考えておいてくれるかな」

「分かりました」

「もう下がって良い」

「では、失礼します」

「他の人がいない時はかしこまらなくて良いんだよ」

 そう言ってくれたが深く頭を下げ部屋を出た。



 婚約者選びに大学か……もっと先のことだと思っていたけれどもうそんな時期になってしまったようだ。

「葵」

「お嬢様、どういたしましたか」

「その、お願いがあるんだけど」



最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回は陽夜の家の事情も少し絡んでくるような回となりました。

これからも三人の関係を見守っていただけると光栄です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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