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図書館と誘い


久しぶりの図書館は夏休みだからか混んでいた。

 目的の本と何冊か気になったものを借りて図書館を出た。本当ならば図書館内のスペースで本を読みたかったが、全て埋まっており座ることは出来なかった。

 どの本から読もうかと考えながら帰っていると背後から声をかけられた。

「葵さん」

「葵くん!?どうしてここに?」

「この辺りに住んでいるのと、買い物にね」

 言われてみればこの辺りに住んでいると以前も言っていた気がする。

「葵さんは?」

「図書館へ本を借りに」

「何の本を借りたのか聞いても良い?」

 とりあえず頷いたが、四宮くんはもう帰るところだったのだろうか。同じ方向に歩いているということはそういうことだろう。

 今更突っ込むのも違う気がし、スルーした。

「経営についての本と小説が何冊か、それと童話が一冊かな」

「童話?」

「そう、『シンデレラ』。何故か急に読みたくなって……」

 絵本の棚にあり、気になってつい借りてしまった。

「童話が好きなの?」

「好きだけど、少し違うかな。童話とかそれ以外の物語でも、登場人物が本来のストーリーとは違った行動をとったらどうなっていたのか、そのストーリー後はどうなるのか、ということを考えるのが好きなの」

「じゃあシンデレラの場合はどう思う?」




話し終わってからはしばらく沈黙が続いた。

「ラスト、キリも悪いし暗くてごめんね」

普段なら少しは心地よく感じるはずの沈黙が苦しかった。

四宮くんに気まずい反応をさせるくらいならば話さない方が良かった。

「……物語は暗い展開があってこそ明るい展開のものが映えるから、そこは全然良いと思うよ」

どんな話であろうと基本的には言葉を返してくれる。今回もそうだ。

「やっぱり葵くんは優しい……」

「そんなことは無いと思うけど」

「優しいよ。すごく」

無い物ねだりは良くないと分かってはいるが、純粋な気持ちで人に優しく出来るようになりたかった。いつも陽夜や『村雨』家に関する損得で動いてばかりいる。

だからこそ誰に対しても平等な四宮くんや陽夜はすごい。

「ありがとう。でも好きな子に優しくするのは当然の事だよ」

「当たり前の事として優しく出来るのは誰にでも出来る事では無いと思うよ」

そんなことを話して居るうちに村雨家の御屋敷に着いた。

「送ってくれてありがとう」

「こちらこそ話せて楽しかった……その良かったらだけど……」

「ん?」

「夏休みの間、どこか出かけない?……一緒に」

これから一週間程度は何も予定が無い。

今日、お墓参りも行けたからしたいことも特にない。身体を動かすことくらいは一緒に出かけたとしても十分出来るはず。

それならば断る理由は無い。

「行きたいです」

「じゃあ二日後のお昼過ぎに駅で待ち合わせでもいいかな?」

「うん、じゃあまた二日後に」

「詳細は連絡するね」

そこで四宮くんと別れた。

付き合ってから初めて一緒に出かける。

これはデートと言うのだろうか。

そう思うと何だか緊張してきた。

服装にメイク、髪型等、色々と考えなくてはならない。初デートで変な格好をして四宮くんに恥をかかせる訳にはいかない。

心の中で()()()と復唱するだけで顔が熱くなる。

「戻らないと……」

いつまでも門の前で立っている訳にもいかず、そう呟いて部屋に戻った。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回のは投稿してあると勝手に思い込み、投稿し忘れてしまっていたものです。

既に初デート編も書き終えているため次回は今夜投稿予定です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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