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浴衣

今回は文字数の関係で少しキリが悪いです。


 とうとう夏祭り当日となった。

 髪をアップにし、今日の為に買った白に紺や淡い水色やピンクの花が描かれた浴衣を着ている。化粧も少しだけし、人に見せられるくらいにはなったはずだ。決してデート前の子みたいに浮かれている訳ではない。

「今日は少しテンション高めかな。少し緊張してる?」

「そういう訳ではないのですが」

「敬語なのに?」

「そうだね。少し緊張しているかもしれない」

「仕方がないよ。今日は葵が自覚して初めて学校の外で会うからね」

 そう言われると余計に緊張してしまう。念入りに確認したはずだが、もう一度鏡でおかしいところがないか確認したくなってしまった。

 今更どうしようもなくて俯いていると前から下駄の音が聞こえた。

 顔を上げると四宮くんと井上くんがいた。

「ごめん、待たせてしまったかな」

「大丈夫、今来たところ」

 本当は十五分以上前から待っていたのを隠し、陽夜がお決まりの台詞を言っていたがそれを気にする余裕もないくらい四宮くんの浴衣姿に目を奪われてしまっていた。

 いつもとあまり変わらないはずなのにとてもかっこよく見える。ずっと見ていたいくらいだが流石にあまり見ても失礼なのでそろそろ会話に混ざることにする。

「葵は何かしたいことでもある?」

「特にこれっていうことは無いからみんなに合わせるよ」

「そっか。じゃあ井上くん、どうする?」

「適当に遊んでから何か食べ物を買ってゆっくり花火でも見ようか」

「うん。それが良いと思う」

「四宮はそれで良いか?……おーい」

 珍しく四宮くんがぼーっとしていたようだ。「ごめん」と謝罪を伝える四宮くんと目が合ったような気がしたのは気のせいだろうか。

 記憶がはっきりする中でお祭りに来るのが初めてなのでテンションが普段より上がり、細かいことも気にしてしまっているだけだろうか。


 またしてもぼーっとしてしまい三人が歩き出していることに気がついたのは四宮くんに声をかけられてからだった。

「葵さん」

「ごめんなさい」

 距離は四メートル程。遅れてしまったので小走りで向かった。

 しかし履き慣れない下駄ということもあり、四宮くんのところまであと少しというところでつまずいてしまった。

 せっかくの浴衣が汚れてしまう。顔から倒れなければ良いか、くらいで両手を振って前に出したがそもそも体が傾かなかった。何かに寄りかかるという体制の方が近い。

 思わず瞑っていた目を開け上を向くと四宮くんと目が合った。

「葵さん、大丈夫?」

「あっ、はい。大丈夫です。ありがとうございます」

 そこまで言い慌てて離れる。少し気まずい空気が流れたが四宮くんがすぐにそれをなくした。

「二人も待ってくれているし、そろそろ行こうか」

「うん」


 歩き出した後も無言が続いた。

 修学旅行のときもあのようなことがあった気がする。

 何回も助けられていて申し訳ない。今度何かお礼でもするべきだろうか。自分に出来るお礼が何かよく分からないがお昼ご飯くらいなら奢れるだろうか。そう考えていると四宮くんが沈黙を破った。

「葵さん」

「どうかした?」

「さっきは言い忘れちゃったけど浴衣、似合ってる。可愛い、というよりかは綺麗かな」

「あ、アリガトウゴザイマス」

 さらっと言えるあたりは四宮くんだからだろう。中々ここまでさらりと言える人はいない。褒められ慣れてないせいで言葉がおかしくなったのは見逃して欲しい。

 今四宮くんと目が合わないのはきっと下を向いて歩くのは危険で、顔が赤く見えるのは既に打ち上げが始まっている花火のせいだろう。

「四宮くんも浴衣似合ってるよ……やっぱりカッコいいな」

 最後の方は小さく独り言のようになってしまったが、似合っているということは伝えられただけ良かっただろうか。

 またもやお互い無言になってしまいどうしようかと思っていると前を歩いていた二人が急に止まった。

「そろそろ屋台も多くなって来たし、この辺で遊ぼうか」

 井上くんの提案もありそこからは屋台を見て回った。

 射的や金魚すくいをしたり、たこ焼きやイチゴ飴を食べたりした。

 イチゴ飴は初めて食べたがとても美味しかった。少し飴が硬かったのが気になるが今度は他のフルーツのものも食べてみたいと思うような美味しさだった。

「葵が射的が苦手だったなんて意外!」

 イチゴ飴の余韻に浸っていたら急に名前が呼ばれた。

「確かに四宮さんは何でも出来るイメージだったから」

「誰でも得意、不得意はあるよ」

 好き勝手に言われているが反応すると余計に盛り上がってしまう気がするので軽くスルーをする。

 どのようなイメージを持たれているのかは知らないが、私でも苦手なことはある。この国で銃の所持が認められていれば少しは練習をした。けれど実際は認められていないのだから仕方がない。

 吹き矢で良いならば全てに的中させる自信はあったがそれではいけないのだろう。やはりゲームは難しい……普段はしないからだろうか。何事も慣れが大切だということがよく分かる。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

しばらくは二週間ごとに投稿すると思います。

次回は二週間後、年末年始あたりの予定です。

また次回も読んでいただけると嬉しいです。


コスプレ展開を無くすと言いつつ、まだ訂正してなくてすみません。

リアルが落ち着き次第訂正する予定です。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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