夏休みのある日
いつもより短めです。
〈四宮 葵(女)目線〉
夏休みに入って何週間か経った頃には約束した夏祭りの日が近づいていた。
いつも通り一日中仕事に明け暮れていると陽夜に呼び止められた。
「葵」
「どういたしましたか?」
「葵っていつ勉強しているの?夏休みの宿題多いのにやってるそぶりはないし」
陽夜は夏休みだが、村雨の令嬢という立ち位置からか中々外に出かけられず、ずっと勉強をしていた。
いくら集中力が長続きする陽夜でも三時間休憩無しではキツかったようだ。
「流石に仕事中には勉強はしません。夏休みの課題は予め手を付けていただけです」
手を付けていただけそう言ったものの既に大半の課題は終わっている。
「そっか……ところで葵は夏祭りは何で行く?浴衣?私服?」
「私はメイ——」
「メイド服とかは無しだよ」
「しかし、私はお嬢様のメイドです。お嬢様と出かけるならばそれが相応しいかと」
「目立って、むしろ狙われやすくなるんじゃない?」
「では暗や——」
「暗闇に紛れられるように全身黒のはダメ!」
いつものように優しく語りかけるようではなく、焦りが混ざったような強い否定だった。
「よく分かりますね」
「まあ、葵のことならね。葵には黒とかよりも白とか他の淡い色の方が似合うよ」
「参考にさせていただきます」
「でも黒が似合わないというわけではないからね……それで浴衣は持ってる?四宮くんも来るんだよ。良いの?」
そう言われてしまうと弱い。正直四宮くんも来るならば浴衣で行きたい。
けれど、それだけのために休みを貰うのは申し訳ない。それに浴衣だと動きづらく、きちんと仕事をこなせる気がしない。
悩んでいるのを見て押せばいける、と思ったのか陽夜は言葉を続けた。
「四宮くんも着てくると思うよ。きっと浴衣似合うだろうな。四宮くんも葵の浴衣姿を楽しみにしてるだろうし、私も葵が浴衣着ているところ見たいな」
そこまで言われたら断れない。
多少動きづらくても何とかすれば良いだけだ。陽夜の希望ならばそうするしかない。
「分かりました。浴衣、買ってきますのでお休みをいただきたいのですが……」
「分かった……最終的に買わせるみたいになっちゃってごめんなさい」
「お気になさらず」
「……ちなみに、水着は?」
特別に用意はしていない。上にラッシュガードを着てしまえば見えないので何でも良い気がする。
「その反応だと何も考えてなさそうだね。せっかくお父様からの許しを得られたんだから楽しもうよ。ね?」
「分かりました。当日までに買っておきます」
「ありがとう」
そう言い笑みを浮かべる陽夜を見ていると、全てがどうなっても気にするほどのことではないように思えてくる。
陽夜が喜んでくれるならそれなりのものを選ぼう。そう決めて後日休みを貰い買いに行った。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回用を含む1.5回分の内容のデータが消えてしまったため更新が遅れてしまいます。
多少前後はするかと思いますが二週間程間が空いてしまうかと思われます。
また次回も読んでいただけると幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




