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修学旅行 寝言

 

 〈四宮 葵(男)目線〉


 村雨さんを送り届けた後、しばらくの間外で四宮さんのことを待っていた。

 しかし、いつまで経っても四宮さんは現れなかった。

 あの後何かに巻き込まれてしまったのかもしれない、そう思うと居ても立っても居られなくなってしまい再びあの場所へ戻った。辺りを見渡しても見つからず、夜中に申し訳ないと思いながらも水谷さんに電話をした。

『水谷です。蒼井さん、どうか致しましたか?』

「夜分遅くに申し訳ございません。四宮さんの姿が確認できておらず、水谷さんならば何かご存知かと思い連絡させていただきました」

『かしこまりました。四宮さんの居場所が分かれば良いのですね?』

「はい」

 そう言うとパソコンのタイピングの音が聞こえてきた。

『四宮さんは……すぐ側にいますね。半径十三メートル以内といったところでしょうか』

「そうですか」

『はい。方位は北西の辺りです』

「ありがとうございます。助かりました」

『見つかるまで繋げてても大丈夫です。何かあった時に動きやすいかと』

「何から何までありがとうございます。そうさせていただきます」

 本当に一つ一つの行動が丁寧な人だ。こんな夜遅くに電話をしたというのに。

 水谷さんが四宮さんの居場所を知っていたのはGPSをつけているからだろうか。

 護衛に人権は存在しないということだろうか。まあ、村雨さんにも自分にもGPSはつけられているが。


 水谷さんに言われたように北西の方向を中心に探していると見つかった。

「寝てる?」

 電話が繋がっていることも忘れ、そう呟くと水谷さんから返事があった。

『見つかったようですね。今回、お嬢様が連れ去られて精神的にも肉体的にも疲労が溜まってしまったのでしょう。近づく時は気をつけてください』

「何故ですか?」

『四宮さんは自分の信頼、信用していない人が寝ている時に近づくと睡眠針を刺すよう訓練されているので』

 それを聞き、思わず唾を飲み込んだ。

『運が悪ければ麻痺毒ですね。でも何もなかったようなのでここで失礼します』

「ありがとうございました」

 そう言い電話を切り携帯をしまう。

 そして四宮さんに向き直った。

 四宮さんは近くの木に寄りかかっており、寝顔もとても綺麗だった。

 睡眠針なら刺されても仕方がないと自分に言い聞かせ近づく。そっと四宮さんの隣に座るも起きる気配もなく、刺されることもなかった。

 四宮さんを探しに来て、見つかり隣に座ったのは良かったもののこれからどうすれば良いだろうか。

 何も考えずに行動してしまったせいで何をすれば良いか分からない。

 隣から聞こえる規則正しい寝息を聞くと、起こすという選択肢も起こしてしまう可能性のあるここから離れるという選択肢も選べなくなってしまう。

 いっそのこと自分もここで寝てしまおうか、そう思ったところで肩に何か重さを感じた。

 横目で見ると四宮さんが寄りかかってきていた。

 ——四宮さん!?

 そう声を上げそうになり慌てて口を手で塞いだ。

 四宮さんを起こしてしまう。 それに今は夜明け前だ。近隣の方に迷惑もかかってしまう。

 今日はこのまま四宮さんが起きるまで待つしかない。

「心臓、大丈夫かなぁ」

 そう小さく呟く。肩に好きな子が寄りかかっている状態は中々に緊張する。

 その時、隣から小さな声が聞こえてきた。

「……しのみや、くん…………ふふっ」

 それを聞き心臓よりも理性の方がもたない気がしてきた。

 好きな子が寝言で自分の名前を言い、その後にとても柔らかい笑みを浮かべているのはとても嬉しい。

 それに『ふふっ』というのは可愛すぎる。

 昨日の朝、少し気まずくなってしまい、顔が合わせられなかっただけにとても嬉しい。

 一昨日に四宮さんの手にキスをした時の反応、それに今の様子でもう誰にも渡したく無くなってしまった。

 自分のものにしたい。その美しい瞳も癖のない綺麗な髪も、手も足もその身体全てを。そしてその心も自分の虜にして離したくない。本当ならばその瞳に別の男の姿を入れて欲しくない。

 それは毒針も持って次々に男たちを倒していく四宮さんの様子を見ても変わらない。

 思わずそれを呟いてしまったことを井上に聞かれた時はドン引きされ、軽く説教みたいなことをされた。

 こんな下心、四宮さんに知られたら井上と同じように引かれてしまうのだろう。

 そもそも四宮さんは自分のものにはならない。別の人と婚約をした。

 旦那様には別に婚約者から奪っても良いと言われたが、四宮さんは奪わせてはくれないのだろう。

 自分が今しているのはただ今にも居なくなってしまいそうな四宮さんの手を掴もうとし、時間を稼ごうとしているだけ。その手も未だに掴めていないが。

 君が婚約をやめると言ってくれるまでは君のことを追いかけ、手を掴もうとさせて欲しい。

 そして許されるならそのまま君を自分ものに……


 そこまで思考がたどり着いたところで一度大きく息を吸った。

 これから自分がすることは四宮さんを惚れさせ、婚約を断らせること。

 自分でも最低な考えだとは思うがそれしか方法は無い。

 もし四宮さんが心から望んだ婚約ならば喜んで身を引こう。

 そうではなく、村雨さんの代わりや村雨さんへの罪悪感があってその道を選んだならば、身は引かない。


 君を必ず手に入れる。


 何があってもだ。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

あと二回程で修学旅行編も終わりを迎えます。

また次回も読んでいただけると嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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