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修学旅行 御守り

 

 三人のところへ戻ると話している途中だったようで、近づくにつれて会話が聞こえてきた。

 流石に盗聴的なことはしたくないので出来るだけ会話は聞かないよう、周りの音に集中する。

「女の子を見て微笑んでいるのが可愛いというか綺麗すぎる。女神と言っても過言ではないでしょ」

「四宮、にやけすぎだ」

「でも分かるよ!私でもあの表情は惚れそうになるし」

「本当に可愛い……」

 陽夜の声あたりからはっきりとは聞こえてきてしまったが、何について話していたのだろうか。今戻っても大丈夫そうなタイミングかよく分からず、少し離れたところから声をかける。

「お待たせしてごめんなさい」

「葵!お帰り」

 無意識なのかもしれないが、陽夜が手招きをしてくれたおかげで何も考えずに戻ることが出来た。

「四宮さん、お疲れ様」

「あの女の子は大丈夫そうだった?」

「女の子は大丈夫そうかな。お母さんに会えたみたいだし……それより四宮くん、大丈夫?」

「どうしたの?」

「顔、赤いから。熱中症?水でも買ってこようか?」

 思わず顔を真っ赤にした四宮くんにそう声をかけると井上くんが笑いだした。

「四宮、ドンマイ」

「ドンマイじゃないから……四宮さん。気遣ってくれてありがとう。大丈夫だよ」

「体調が悪いなら言ってね」

「ありがとう」

 気がつくと陽夜も笑っていた。笑い方も可愛いなと思いつつ、何故笑っているのかは分からなかった。

 ちなみに四宮くんはより顔を赤くさせ、井上くんの背中を痛みを感じるギリギリの強さで叩いていた。

 痛みを感じないギリギリの強さではあったが、結構いい音がなっていた。

「そろそろゲームを再開しようか」

 陽夜のその声でゲームの再開が決まった。



 決めた順番通り初めに陽夜、その次に私と来たので次に四宮くん。その次に井上くんという順番でゲームを行った。

 四宮くんは目隠しをしているのかと疑う程、見えているかのように歩いた。

 目隠しをしても顔が綺麗なのは変わらないようで、ファンクラブの人たちはみんなカメラを構えていた。

 また、動きもとても自然で品があった。


 井上くんはというと四宮くんと真逆と言ってもいいような結果だった。

 そもそも目隠しをした瞬間から怪しかった。歩けば変な方向へ歩き転びそうになっていた為、ハラハラしてまともに見れなかった。

 ファンクラブの子たちは「ギャプが!!」と言い、四宮くんの時と同様に写真や動画を撮っていた。

 普段は運動神経が良いのに珍しいなと思いつつ、普通は視界が暗い中でもいつもと変わるところなく動ける人の方が少ないのだと、ひとりでに納得していた。




「結果は……一応言うね。一位が四宮くん、二位が陽夜、三位が私で四位が井上くんです」

「じゃあ、何か買ってくる」

「井上、一人で大丈夫か?」

「子供じゃないからね」

 井上くんが罰ゲームである飲み物を買いに行った。自動販売機は近くには見当たらなかったが大丈夫だろうか。

 心配して待っていたが、思いの外早く戻ってきた。

「じゃあ村雨さんと四宮さんにはお守り。四宮もお守りにしたけど良かった?」

「大丈夫、ありがとう」

「買ってきてから言うのもだけど、二人ともそれで大丈夫だった?女子は恋愛もののお守りとかが好きかと思ったんだけど」

「ありがとう。後で自分で買おうと思っていたからすごく嬉しいです!」

「私も、こういうお守りは持っていなかったから嬉しいです。ありがとう」

 井上くんから貰った薄い桃色のお守りを見る。持っているお守りは勉強関連のものしか無かったのでとても嬉しい。

 好きな人のいない私が持っていて良いのかと少し思うが、貰ったからには大切にしようと思い鞄にしまう。

「井上くん、お守りはいくらだった?飲み物みたいに百円とかじゃなくてもっとするよね?」

「気にしないで。俺が好きで買ってきただけだから」

 余計にお金を払わせてしまったのは申し訳ないが、人の好意を無下にするのも良くない。ここは素直にお礼を言う方がどちらも気持ちがいいだろう。

「ありがとう。大切にします」

「私も大切にするね。ありがとう、井上くん」

「どういたしまして……じゃあ四宮は千円な」

「何で俺だけ……五百円は渡すけど、これ千円もしないだろ」

「冗談だよ」

 冗談には聞こえなかったが井上くんなりの冗談なのだろう。


 井上くんが『四宮』と四宮くんを呼ぶたびにドキッとする。『葵』と呼んでいても、余計にドキッとするのは分かっているが、自分のことかと毎回思ってしまう。

 四宮くんは、陽夜が私のことを『葵』と呼ぶ時にドキッとするのだろうか。こんな可愛い子に自分の名前を呼ばれている疑似体験が出来るのは中々無いことだと思う。

 井上くんが気になるからドキッとするということは全くもってないので、ファンクラブの子と名前を交換してあげたいと思ったことは何回もある。


 四宮くんと異性同名で井上くんには名前を呼ばれている疑似体験が出来る。人からしたら恵まれているのだろうがさほど私は感じない。

 有り難みが分からない。

 話しかけられない状況にでもなれば分かるのだろうが、そうなるのは少し寂しくも感じる。

 このままみんなと仲良く出来ればいいのだが。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回で神社でのことは最後になります。

今はそろそろ一日目の終わりが見えて来たかな、という状態です。

修学旅行編はまだまだ続くと思いますので、次回以降も読んでいただけると嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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