接客
今回はキリが良くなかったので長めです。
読んでて不快な気分になられたら次話からまた読んでいただけると良いと思われます。
今更ですがR15に設定しました。
本当に今更ですみません。
文化祭当日、午前中はクラスのメイド喫茶を手伝っていた。
劇は昼過ぎからなので劇の時間と最後に行われる「美男美女コンテスト」の時間以外は全てシフトを入れ、接客をしていた。
本番までに間に合うか心配だった内装やメイド服もなんとか間に合い形になっていた。私のメイド服は陽夜の勧めもあったがみんなと同様、ミニスカのメイド服になった。
ミニスカといっても普段私が着ているメイド服の丈よりも短いというだけでそこまで丈が短いわけではない。
私としては普段から着ているようなロングスカートでハートが飛び交わないくらいの接客をしたかったが、一人だけ異なる服装で雰囲気を壊さないようにといつもと同じにはならなかった。
「葵さん、こっちもお願いします」
「はい」
陽夜の学校の休んだあの日からクラスの人たちの私への態度が大きく変わった。
あの罰ゲームのようなことが意味を成したのかは分からない。しかし、主に女子がだが、話しかけてくれるようになったのは嬉しい。
いじめられたことを忘れたわけではないが、主犯の女子は居づらくなったのか学校を転校していった。
だいぶ性格の悪いところが目立つ人だったので、人に脅すようなことも簡単にするようだった。
きっとクラスの人たちは軽く脅されていたのだろう。ファンクラブの人から恨みを買ったのはあるかもしれないが、最近話すようになってあそこまでのことをできる人たちではないということが分かった。
なのであのことは無かった事として扱うことにしている。もう一度あっても返り討ちにする自信はあるけどね。
外で宣伝をしてくれているのもあるのか人が集まってきた。
「葵さん、これ三番です」
「はい」
そう言いお盆に飲み物とお菓子を載せて三番テーブルに向かう。
「お嬢様方、お待たせ致しました。にゃんにゃんロールケーキとセットのにゃんにゃんコーヒーです」
机の上にお客さんから見て見やすいように並べる。
本当はコーヒーもインスタントコーヒーではなく豆から挽いて淹れたい。
ロールケーキも安っぽいものではなく見栄えも綺麗に盛り付けたいが、その辺りは男子と一部の女子がしているので何も言えない。文化祭の予算があまりないというのも安っぽくなっている理由の一つだ。
「今から魔法をかけますね」
そう言いお客さんの顔を見ると転校していった元同じクラスの女の子だった。どうしてここに?と思いつつも仕事はしっかりとこなす。
「萌え萌えキュン」
正直恥ずかしいが仕事だからと割り切ってやる。きちんと手でハートを作り、言い終わった後に「にゃんにゃん」と付け加えることも忘れない。
「ふっ」
今鼻で笑われた気がする。名前は……Aさんと心の中では読んでいた気がするが、覚えていない。
「それではお召し上がり下さい、どうぞごゆっくり」
そう言い早めに立ち去ろうとすると呼び止められてしまった。
「メイドさん……いや、四宮さん。服をよく見たいから後ろ向いてくれない?」
「後ろですか、分かりました」
何をしようとしているのかわからないが素直に従っておく。あくまでも今は店員と客。何か起こすと決まったわけでもない。
スカートのあたりが触れられた気がするが気のせいだろうか。間違いではないだろうが行動が読めない。
「もういいです。ありがとうございます、とっても綺麗な服ですね。前の方も見せていただきたいので前かがみになってもらえますか?」
言われた通りに前かがみになるといきなり胸元を掴まれハサミを向けられた。
咄嗟のことで驚いたが周囲の安全を確認して手を払う。案の定、誰もいないところにハサミは飛んでいった。
胸元を掴まれている手も無理矢理離させる。
「何の御用でしょうか」
ここには陽夜もいる。陽夜の護衛の一人としては陽夜に影響がありそうなものは無くすに限る。
「もう一度言います、お応え下さい。今度は分かりやすく言います。何をしたかったのですか」
少し低い声を出すと睨まれてしまった。
ハサミを持っていた辺りから予想し、スカートに軽く手を触れると少し切られていた。上の二、三枚だけ。
スカート部分にはレースを多く使い、何重にも重ねたため、切られても全くと言っても良いほど影響は無かった。思ったより切りづらかったで胸元を掴み切ろうとしたのだろう。
胸元も切られてもリボンが切られるだけで影響は無い。そもそも目の前で切られるようなことはしない。
「もう一度言った方が良いですか?」
先程よりも低い声で言うと渋々口を開いた。
「あんた……ムカつくのよ……見た目も行動も、何もかもが」
「私が相当嫌われているのは分かりましたが、営業妨害です。出て行ってください。それにハサミなどの道具は危険があるので持ち込んでも出さないでください」
淡々と告げると相手はこくこくと頷いた。少し強く言いすぎたようだ。
「お出口はあちらです」
そう言い出口を指し、速やかにご退場していただいた。
しばらくの間沈黙が続いた。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
そう言い裾を軽く上げ、クラス中に礼をする。
まだシーンとしていたが、ハサミを拾い裁縫道具を片手に人通りの少ないところへ向かった。
流石にメイド服を脱いで縫うわけにはいかないので、余っていた材料で作ったリボンに安全ピンをつけ、スカートにとめた。
余っていた材料を使ってリボンを作っておいたのが役立つとは思わなかった。
そもそもAさんが文化祭にやって来るかもしれないと頭に入れておけばもう少し警戒できたかもしれない。そこは少し反省をしなくてはいけないだろう。
仕事中に抜け出してきてしまったので急いで戻らないと迷惑をかけてしまう。そう思い早足で歩いた。
ちなみにハサミは学校の落し物置き場に置いておくことにした。
教室に戻ると先程までのシーンとした空気はなくなり、元の状態に戻っていた。
「葵、大丈夫?」
「大丈夫、心配しすぎだよ陽夜は」
「でも……」
昔から私に何かあると陽夜は泣いていた。今も涙目になっている。
当の私は泣くことは無く、それほどかなといつも思っていた。
「陽夜は変わらないね」
そう思わず言うと頭上にはてなマークが見えそうな顔をしていた。
「折角クラスの人たちに化粧をしてもらったのに泣いてはもったいないよ」
そう言いハンカチを渡すと納得したのかもう涙は無くなっていた。
「じゃあ仕事に戻らないとね」
「……うん」
そう言いお盆を持ちテーブルに向かった。
「ご主人様、お嬢様、お待たせいたしました。にゃんにゃんコーヒーです」
そう言うと聞いたことのある声が聞こえた。
「ありがとうございます」
お客さんの顔を見るとよく知っている人だった。
「四宮さん、頑張ってるね」
「水谷さん……それに鈴木さん……」
「さっきは見事な対応だったよ」
「恐れ入ります」
鈴木さんから声をかけてもらえることは滅多にないので少し嬉しい。
「今は仕事中ではないから良いんだよ」
「四宮さんは……魔法をかけてくれないの?」
水谷さんがニヤリとして言った。一瞬水谷さんのことが鬼に見えてしまった。危ない。きっと水谷さんや鈴木さんには思ったことがバレてしまう。
「そうですね、お時間をとらせてしまい申し訳ありません」
なんとか誤魔化したかったがそうもいかず知り合い……仕事の先輩の前ですることになってしまった。
そこは陽夜が担当して欲しかった。
私がするよりも絵になり、ほのぼのしただろう。同僚がこんなことをしているところを誰も見たいと思うわけがない。
新たに黒歴史が出来た瞬間だった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回はいじめの主犯が再び登場しました。
メイド喫茶の商品名と魔法は、作者の語彙力が無いためあのようになってしまいました。
語彙力が欲しいです……
次回は劇を中心として出来たら良いなと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




