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第22話:僕の決意

「この子達を買おうと思うんだが、今は手持ちが240万しか無くてな。先程、数日なら待つと言ったであろう。ならば何日まで待てる?」


二人と話が終わったタイミングで奴隷商を呼び、僕は姉妹を買う意思を伝えた。

正直、奴隷商に対する印象はかなり悪くなっているので、口調はそのままでも怒気を含んでしまっている。

冒険者ギルドの二の舞にならないように気を付けないといけないな。


「おや、ハイポーションを使われたのですか?」


「ん?あぁそうだ。買うつもりだからな。まぁそんなことはどうでもいい。それで、何日待てる?」


「そうですねぇ………」


奴隷商はしばらく考えた後、口を開いた。


「姉の方は一週間程ならば待つことは可能ですが、妹の方は保証しかねますねぇ」


「はぁ?なんだと?」


「ひっ!」


おっと、奴隷商が怯えてしまった。

いけない。平常心。平常心。


「シルビアは待てるのに、マリーは待てない理由を教えろ」


「………姉の方は価値が決まっておりますからねぇ。売れなかったら値下げして一般向けにすれば、最低でも200万の価値はあるので。ですが妹の場合は、タイムリミットがあるんですよねぇ。15歳に近い方から売っていくので、保証はできませんねぇ」


「僕は別に≪スキル≫目的でマリーが欲しい訳じゃない。だから15歳になろうが言い値で買ってやる」


「………分かりました。ですが、時々14歳以下の奴隷をまとめて買って下さるお得意様が居りまして…」


とんでもない金持ちの奴がいるんだな。


「で?」


「お客様はその方に負けないほどのネームバリューをお持ちではないでしょう?」


「何が言いたいんだ?」


「私どもとしては、その方を優先したい訳でして…」




………。

あぁそうかよ。

こっちの世界でも結局、有名人が偉いのかよ。

ちやほやされやがって。


だったら…。


僕もなってやるよ。有名にな。


後で絶対見返してやるからな!




「………分かった。それで、マリーはいくらだ?」


僕は胸に決意をしまいこみ、現実に向き合うことにした。


「300万ですねぇ。二人合わせると550万になりますねぇ。………失礼ですが、貯えはありますか?」


なん…だと…!

300万とか…ぼったくり過ぎだろ!


だが…

稼げない額ではない!


「そうか…」


ここから先は、脅迫………いや、交渉だ。


僕は立ち上がり、鞄から教祖のローブを出す。

被っていたフードを脱いで、魔法使いのローブから教祖の怪しげなローブに変える。


突然着替え出した僕に、他の三人は唖然としていた。

だがそんなことは関係ない。

この目立つ黒髪も、怪しげなローブも、もう隠さない。

有名になると決めたのだから。


この姿は僕に自信を与えてくれるんだ。

落ち着いてから、ゆっくりと話し出す。


「………貯えなどない。そもそも5日前には無一文だった。手持ちの金はここ数日で稼いだものだ。だから3日待て!3日で300万など余裕で稼げる!」


「待てと言われましてもねぇ…」


奴隷商が口答えするが、無視する。


「そしてマリー。言いたいことがある」


「…なんですか?」




「僕が見てるこの世界。


僕を視点として紡がれる物語。


この人生という物語の主人公は僕だ。


僕こそが!僕の世界の中心なんだ!



同様に、君には君の世界があり物語がある。


君が世界を悲観して、物語を紡げないのなら、僕が一緒に紡いであげよう。


だって君はもう僕の物語に登場してしまったのだから。


主人公が助けた女の子を見捨てるなんて、そんな格好悪い真似をする訳がないだろう?


僕が、君に、生きる喜びを与えてあげるよ」


「………」


マリーは僕の言葉をしっかりと聞いてくれたみたいだ。

言葉とは、聞くつもりがないと耳を通り抜けてしまうものだからね。

今は僕の言葉が信じられなくてもいい。

これからの行動で示せばいいだけだ。



僕は奴隷商の方へ顔を向ける。


「………僕の世界では、人はいくつかの種類にカテゴライズされる。僕の大切な人達、知り合い、その他大勢。そして、敵。


………僕は敵には容赦しない。持てる力の全てを使って、必ず、叩き潰す。知名度が足りないなら、それすらも上げてやる」


「わ、分かりましたぁ!!…で、ですが、その、本当に稼げるんですよね?」


「なに、ハイポーションを売ればいいだけだ。だからしばらく待っていろ。二人は必ず僕が買う」


奴隷商への意思表示も兼ねて、そう力強く宣言する。

後は勝手に勘違いしてくれるだろう。無限に金を生み出す≪ポーション生成≫だと思ってくれれば、敵に回す気は起きないはずだ。


そして長いローブを翻し、三人に背を向けた。

僕は右手を挙げ手を振りながら出口へ向かう。

振り返りは、しない。


だってその方が威厳が出るから。

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