第900話 エメラルドの邂逅23
「あんたは──ヴァルフリード。総憲兵隊長が何でここに!?」
そこには60代前半の初老の白髪交じりの黒髪の男性が立っていた。
「たまたま近くに来ていてね。まさかサイハテと大導師が出てくるとは、いくら貴殿でも大導師を一人で相手はキツかろう。力を貸しますぞ」
「助かるぜ。ヴァルフリードさん!」
思いがけない援軍にベルモンドは感謝する。
「ノア。さあ、今の内に逃げなさい」
「お父さん! 死なないよね?」
「当たり前だ。俺は死なねぇぜ」
「絶対だよ」
「ああ、約束だ。愛してるぜ、ノア」
優しく笑いノアの頭を撫でるベルモンド。
ぎゅっとノアは父に抱きつくとその場を走り出す。
*
「別れは済ましたか?」
大導師が問う。
「別れ話なんてしてねぇよ。再会の約束をしたんだ。それにしても今の時間を待ってもらえるとは思わなかった。どういう風の吹きまわしだ?」
「いやはや、別に特別な理由はありませんよ。次世代の大聖女は育つのを待つことにしたのです。今はあなた方の心臓のが欲しい」
すると大導師は目にも止まらぬ速さでベルモンドの心臓に手を伸ばす。
「させるか!」
そのスピードに追い付き、剣を振るったのはヴァルフリードだ。
右肩から左横腹に向かい斜めに大導師を斬る。
微かだが赤い鮮血が大導師から吹き出す。
攻撃が通ったのだ。
ヴァルフリードは剣に強い魔力を纏っていた。
「これはこれは。斬られたの何ていつぶりでしょうか」
斬られた箇所はもう傷が塞がっている。
だが、大導師は惜しみ無い称賛をヴァルフリードに与えた。
「キミ、と言うのは失礼か。あの〝天聖時代〟以前から、生きているあなたには──」
まだ、本気を出してないこそのヴァルフリードだが、目の前の大導師の計り知れない強さに冷や汗を流す。
「忌々しい名前が出ましたね〝天聖〟奴さえいなければ」
「聞き捨てならねぇな〝天聖〟の血の繋がらない〝義五兄妹〟の一人は俺の先祖だ。バカにすることは許さん」
「ほう、ますます心臓がほしくなりました。興味本位で誰の子孫か聞いても?」
「話す義理はないな」
大導師の質問をバッサリ切り捨てるベルモンド。
次にベルモンドは大剣に強く魔力を纏い、飛ぶ斬撃を放つ。
だが、斬れたのは大導師の後方にある建物だけだ。ベルモンドが外したのではない。
大導師が素手で斬撃を反らしたのだ。
「少々舐めすぎましたかね。私も今は本気が出せない」
受ける出はなく反らしたということは、少なくとも大なり小なりダメージが入るって訳だとベルモンドは次の攻撃を考えた。
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