自動再生
コウヤはとても驚いていたし、喜んでもいた。たった一発の銃弾で、固有魔法を破壊しながら突き進み、SS級のシルバーウルフの核を貫通し、絶命させた。予想以上の結果だった。
たった一発撃っただけでこの威力だ。しかも魔法を破壊しながら。
魔法が全てのこの次元では、この『力』を持つ者は他者より上位な存在となるだろう。そしてそんな『力』を持ってしまうのは大抵悪役と決まっている。
だが、そんなのはどうでも良い。つまり俺は、『神のゲーム』優勝の可能性が跳ね上がった、という事だ。それだけで十分だ。
だが、それにもこの『力』を理解しなければ始まらない。今のところ、この『力』の使用用途は物質上にして形を象ったり、武器に纏わせたり。
だが、もう少し実験する必要がある。さっきの様な感じではなく、質より量があればいいが。
「…!」
すると現れたのは、SS級のブロンズライオンの群れだ。50体以上いる。流石に魔獣が出過ぎだと思ったが、
「…運が良いな」
深くは考えない事にした。
ブロンズライオンはシルバーウルフ程実力はないが、その数ゆえシルバーウルフより危険だと認識されている。つまり今は、適度な実力と適度な数があるという、実験するには最高な状況なのだ。
まずは発動可能範囲を調べる。
「半径100メートルってところか…」
直感的に感じたその予想に従い、100メートル先で球体の『魔力破壊』を象る。そして、
「『破壊の爆散』」
次の瞬間、象った球体を爆発した様に破裂させる。その威力は絶大で、ブロンズライオンが7体程消し飛んだ。だが、
「やはり、半径100メートルを超えるとコントロール出来なくなるな。と言うより、存在出来なくなると言った方が正しいか…」
事実、爆散した『魔力破壊』は半径100メートルを超えた部分だけが消滅してしまった。
つまり、『魔力破壊』を発動、コントロールできるのは半径100メートル以内という事になる。
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コウヤは更に実験を続けた。そして力について、いくつかの答えを得ることが出来た。
基本的に、『魔力破壊』の発動に消費される物はなく、体力も全く減らない。地中内でも発動出来たり、発動するときの大きさも自由自在。
流動的に動かす事ができ、それを用いた攻撃も可能だろう。また、『魔力破壊』を足場にし、移動させる事によって、空中を移動する事も可能だ。
「実験はもういいだろう。ブロンズライオンも全滅させたし…」
今コウヤの周りには、ブロンズライオンの死体が山の様に転がっている。中々グロい。
「あと1つ理解しておかなければならないのは…」
そう言って、コウヤは自分の腹を見る。ブラックバイソンに貫かれた筈の腹を。
そしてコウヤは思い出していた。何故傷が一切残っていないかを。何故自分が、生きているかを。
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「うっ…」
ゆっくりと視界が広がってゆく。そして、それを見て理解した。自分はもう死ぬのだと。
臓器を吹っ飛ばされたから死ぬのか、それとも大量出血で死ぬのか。どう死ぬのかは分からないが、もう自分が死ぬのは理解出来た。
(此処で終わりか…結局…ゲーム優勝は出来なかったな…けどお前との約束は守りきれたし…思い残す事は…もう…)
―もう…二度と……負けない……で…ね…―
その言葉が脳裏に浮かんだ。
そうだ、俺は生きなきゃならない。あいつの分まで、俺が…
「ガハッ!!」
だが、それでも死の運命が遠ざかる訳じゃ無い。コウヤが死ぬのは変わらない。
何か…何か無いのか!俺が生きる方法が!
考えろ!ある!絶対に!何か!何か!何か!
視界がぼやけ始める。それは死が近づいているという事を意味していた。既に、頭の中には一つの可能性が浮かんでいた。
だが、それが何か分からない。
何か!何か…何か…
そんなコウヤの目に死んだブラックバイソンが映る。破壊した核が目に入る。
それを見て、心が叫んだ。あれだ、と。
…っ!!あれだ!あれを…取り込めれば…
コウヤが考えたのは、再生力を持つ魔獣の核を利用し、致命傷を治そうというものだ。
進め!進め!進め!進め!進めェェェェ!
動かない足を使わず、腕の力だけで進んでいく。少しずつだが、確実に近づいていく。
「ウォォォォォォォ!!!!」
死にものぐるいでバラバラの核に手を付ける。それを迷いなく口に運ぶ。バリバリという音とともにそれを噛み砕いていく。
口から血が溢れても喰らい続ける。そして全てを喰らい尽くしたとき、身体に変化が、起こった。
「…これ……は…」
身体に空いた大きな穴が、蒸気を発生させながら再生し始めたのだ。みるみる穴が塞がってゆき、数秒後には完全に塞がった。他の傷も全て再生し、コウヤの身体には一切の傷が無くなった。
「やっ…た…」
そう安堵したとき、背中に刃物で切られた様な傷が付いた。
「っ!?ぐっ…」
その傷を始めとして、身体のあらゆる部位が破壊され始めた。コウヤはブラックバイソンの死体から転げ落ち、仰向けになった。
(そうか…これが…再生の代償か……)
「…温いな」
肉体の破壊。身体のあちこちが傷つき、血飛沫を上げる。それと共に、全身に大きな痛みも。
(俺は負けない!…絶対に生きる……この程度で死にはしない…)
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「…思い出した。この記憶が確かなら、俺が生きているのはブラックバイソンのお蔭か。それはそうと、こっちの『力』も理解しておかなければな」
そう呟くと、コウヤは掌を切った。すると蒸気を上げながら傷が再生した。記憶の中の傷の再生と同じ様に。
「これは、俺に宿った『力』の様だな。一時的なものでは無い…となると、俺に核が出来たってことか?」
コウヤはそれを確かめる為に、身体に『魔力破壊』を流す。
「…なんの反応も無い。これは魔力による再生では無いのか?いや、違うんだろうな。
魔力による再生では無いという事は…核の再生能力が人間が元々持つ再生能力に付与されたってとこか?と言うよりこれは、俺の細胞の全てに極小の核であるって感じか…
となると、あの時の肉体破壊はこの再生能力にあった魔力を、『魔力破壊』が破壊していたって事か…
それで魔力だけが破壊されたと捉えれば辻褄があう」
その後コウヤは、自分の身体で再生能力についての実験を始めた。その結果、この再生能力は自分の意思では止められず、傷が出来れば直ぐに治ってしまう。
その再生能力は凄まじく、頭を吹き飛ばされても一瞬で再生する。再生には優先度がある様で、1番が頭、次点で心臓だ。
「…これにも名を付けるとすれば…『自動再生』ってとこか」




