圧倒的
いよいよ『力』に目覚めます。
その魔獣の登場において、コウヤは驚きを超える程の笑みが溢れ出ていた。
S級では相手にならなかった。SS級を見つけることができなかった。
だが、今コウヤの目の前にはS級やSS級よりも上の伝説と呼ばれるSSS級の魔獣がいる。
「……やっと…マシな奴が来たな」
牛型の魔獣の核の位置はほぼ身体の中心、そして下の方にある。魔獣の性質上、どれだけ強くなろうとも核の位置は変わらない。たとえ伝説の魔獣だろうと。
だが、焦ってはいけない。今まで戦ってきた魔獣とは強さのレベルが違う。相手の力が未知数の状況で無闇に突っ込むのは馬鹿のする事。
まずは相手の出方を見る。そして相手の力を見極め、隙を作り、奴の下に潜り込んで核を破壊する。
「さぁ、来い!ブラックバイソン!」
そう叫ぶと同時に鞘から『魔滅』を取り出し、ブラックバイソンの攻撃に備える。
ブラックバイソンはSSS級、当然魔法を使う。魔法属性は『雷』。固有魔法は『超硬化』。S級、アイアンバードの固有魔法、硬化の上位互換だ。
その名の通り身体の一部分を超硬化させる固有魔法だ。それに加え、魔力状態を使ってくる可能性もある。
「…っ!!」
瞬間、ブラックバイソンの突進。そのスピードはハルグの比ではない。100メートル以上あったコウヤとの距離が一気に無くなっていく。
至近距離まで接近したブラックバイソンは、
「ブォォォォォォォ!」
と、雄叫びをあげながらその大きく、鋭いツノでコウヤを刺そうとする。
「くっっっ!」
その攻撃をギリギリ躱すも、地面をバキバキに割ったそのパワーと、ハルグを超えるそのスピードに、コウヤも驚きを隠せない。
それでもこの攻撃によってできた僅かな隙を利用し、ブラックバイソンの下に潜り込む。
そして、ブラックバイソンの腹を十文字に斬る。すると、中心から僅かに光る核の光を確認できた。
「…見つけた」
このまま突き刺す為コウヤは構えたが、ブラックバイソンの肉体を黒いオーラの様なものが覆った。
「っ!?」
瞬間、ブラックバイソンは視認出来ない程のスピードでコウヤの後ろに回り込んだ。
(…速い)
コウヤは『異常』だ。その反応速度も『異常』だったが、黒いオーラを纏ったブラックバイソンの移動スピードは『異常』なコウヤの反応速度を超える程の速さだった。
「くっ…」
そしてそのスピードで突進を受けた。コウヤはなんとかその突進を『魔滅』で受け衝撃を抑えるも、抑えきれずに吹き飛ばされる。コウヤは10メートル以上も吹き飛ばされる。
それはコウヤにとってあまりに久しい感覚と、あまりに久しい敗北の可能性だった。
「…強い」
コウヤはブラックバイソンを良く観察する。
「奴を覆うオーラ、あれは奴の魔力か?だとすればこれは、…魔力状態?」
コウヤがそう推測したところで、ブラックバイソンの頭の上に黄色い球体が出来る。雷属性の魔法なのだろう、バチバチという音が広範囲に広がる。
そして、
「ブォォォォォォォ!!」
その球体が直径5メートル程になると、一気に飛散。1つ30センチメートル程の雷の球体がかなりのスピードで飛んでくる。
「…」
その攻撃をギリギリで躱し、『魔滅』で斬りながら直撃を防ぐ。
「まさか…使う事になるとはな…」
攻撃が止んだ瞬間に懐から、拳銃を取り出し、ブラックバイソンの両目に発砲。命中し、ブラックバイソンが撃たれた痛みに大声をあげながら、もがく。
コウヤが拳銃を持っているのもその『異常性』ゆえである。この大きな隙を『異常者』たるコウヤが見逃す訳がない。
もう一度ブラックバイソンの下に潜り込み、まだ塞がりきっていないコウヤに斬られた傷の中心には、まだ核の光が見えていた。コウヤは核に向かって『魔滅』を走らせる。
『魔滅』が核にあたり、上に押し上げられながら皹がはいる。
だが、もう少しで核を破壊出来るというところで、ブラックバイソンがジャンプした。
「…!」
そしてコウヤを尻尾で空中へと弾く。
「くっ…」
弾かれるも、コウヤは尻尾による直接のダメージは『魔滅』で防ぐことが出来た。
それに気づいたブラックバイソンは自分のツノに固有魔法【超硬化】を発動し、更に雷属性魔法を纏わせる。そしてコウヤが反応出来ない程の、ブラックバイソンの最速の動きで自分のツノをコウヤに突き刺した。
ブラックバイソンのツノに腹を貫通されたコウヤは口から夥しい量の血を吐き出す。
「ガッ…」
その時、何か枷が外れた様な感覚があった。まるで、『力』を抑えていた鎖が壊れたみたいな、そんな感覚が…
真っ白だったコウヤの髪の右の前髪の先端が赤黒く染まる。それとほぼ同時にコウヤの身体中から赤黒い、魔力の様なオーラが吹き出ていた。
その赤黒いオーラはコウヤの右手と、『魔滅』を覆う。そして『魔滅』の刀身が赤黒く染まる。
既に意識を失っているであろうコウヤは、虚ろな目をして『魔滅』を逆手に持ち替え、自分を刺しているブラックバイソンのツノを突き刺し、貫通させた。
コウヤが拳銃を持っていたのにはちゃんと理由があります。決して適当に入れたではありません。




