不死鳥
メインヒロイン登場です。
コウヤが迷宮に入ってから1週間が経った。あれからS級以上の魔獣を山の様に狩り、『魔力破壊』や『自動再生』を使いこなし、かなりの実力をつけていた。
人間ランクが金となったコウヤにとって、SSS級の魔獣すらもう相手にならなくなっていた。
「流石にそろそろ出た方がいいのかもな…お菓子も切れたし」
そう思い外に出ようと、上を見上げた時だった。ズンという大きな地響きがなった。
「…っ!?なんだ?地震…?いや、違う!これは…」
瞬時にコウヤは走り出し、そこに辿りついた。
(やはり…戦闘か…)
そう、そこで戦闘が起こっていた。一方は身体に炎を纏った大きな鳥型の魔獣。もう一方は、コウヤと同じくらいの年齢に見える少女。
「あの魔獣…初めて見る。王国の図書館にも情報が無い魔獣…あの強さは最低でもSSS級、いや…更に上…いや、本当に注目すべきはあの女…伝説超えのあの魔獣と互角に渡り合っている」
コウヤの言う通り、戦いはほぼ互角。両者『魔力状態』を発動し、常人が視認出来るギリギリのスピードでの戦闘が続いていた。
(魔獣の方は見た目通り炎を使っている。女の方は…っ!?風と土?!)
そう、少女は風と土、2つの属性を使っていた。人が通常持つ魔力属性は1人1つ。属性を2種類持つ事は出来無い。だが、少女は属性を多数持っている。これは『異常』と言える。
(あの女を調べるにしても…この戦闘は見ておくべきだな)
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(最悪っ!こんなタイミングで出くわすなんて…)
少女は心で愚痴を呟きながらも、その魔獣と互角に渡り合っていた。
名はシーナ・ロード。見た目こそ16歳程に見えるが、実年齢は160歳。人の10倍程の年齢を持つ少女だ。長いストレートの黒髪に、透き通る様な白い肌と可愛らしい顔は、さながら人形を彷彿とさせる程の美少女であると言えるだろう。
彼女が『超迷宮』に入ってから既に100年。当然服はボロボロで、衛生的に良いとは言えない。
今日、地上に出ようかという日に強力な魔獣に遭遇し、愚痴を言ってしまうのも仕方がないと言える状況だろう。
(でも、ちょっとおかしい…ここの魔獣は上より強い魔獣が多いけど、幾らなんでも強過ぎる…今まで戦ってきた魔獣の中でも最強かも…)
その通り。今やシーナの強さは伝説と呼ばれる魔獣を2、3体程なら、1度に相手にしても余裕を持って倒せる様になっていた。
100年の修行の成果と言えるだろう。だが、この炎を纏った鳥型の魔獣は、『魔力状態』を使ったシーナとほぼ同格の強さを持っていた。
「くっ…」
口から豪炎を吐く魔獣。シーナはそれを避け、魔獣の頭上に飛び上がる。
「【土の竜巻】」
風、そして土の合成魔法。
合成魔法とは、複数の属性魔法を掛け合わせて、発動する属性魔法である。通常は2人以上で発動するのだが、固有魔法『全属性』を持つシーナならば、1人で合成魔法を発動出来るのだ。
しかし、魔獣はそれを回避。
「…!」
シーナの魔法を避けた魔獣は、炎を纏った爪でシーナを攻撃。それを避けるシーナに向かって、魔獣は再び豪炎を放つ。
「舐めないでっ!【雷の竜巻】」
シーナは合成魔法で雷の竜巻を作り魔獣に放つ。互いの魔法は衝突し、相殺され、辺りには爆風が吹き荒れる。
そしてシーナはその隙をつく。
「【爆風の氷剣】」
氷剣を爆風で飛ばし、魔獣の核を射抜く。
(良し。確かに強かったけど、これで終わり…えっ?)
シーナが驚くのも無理は無い。魔獣は身体を傷つけられても瞬時に再生する。だが、核を破壊されればそれだけで絶命する。つまり、核さえ破壊すれば魔獣は殺せるのだ。
だから、破壊された核を再生した魔獣が吐いた豪炎を、避けきる事が出来なかった。
(くっ…けど、この程度なら直ぐ治る。それよりも問題は破壊した核を再生したあの魔獣。核の破壊が不十分だったと考えるのが妥当。それなら、)
「【土の竜巻】」
魔獣の下から土の竜巻を起こし、動きを止める。そして、
「【全属性の波動】」
その魔法は全属性、風火土雷氷の魔力を掛け合わせたビームを放つ。その絶大な威力は魔獣の身体を覆う様に、魔獣の細胞を一片残らず消しとばした。だが、
「嘘でしょ…」
消しとばされた魔獣の核が、炎と共に燃える様に再生し、瞬く間に全身が再生する。
「こんな…事って…」
再生し、復活した魔獣は元の姿ではなかった。『魔力状態』の黒いオーラを纏いながら、身体を炎に変化させていた。
(こいつ…ヤバい!)
「【全属性の竜巻】」
自分と魔獣の間に来る様に全属性の魔力を掛け合わせた竜巻を起こし、盾にする。
しかし、炎となった魔獣は先程とは比べ物にならない豪炎を吐く。
「くっ…」
【全属性の竜巻】は簡単に吹き飛ばされ、その後ろにいたシーナも吹き飛ばされる。吹き飛ばされたシーナは前のめりに倒れ、『魔力状態』が解ける。
(ぐっ…こんなところで死ぬ訳には…)
その一心でなんとか立ち上がるも、フラフラで今にも倒れそうだ。死にかけのシーナにとどめを刺さんとばかりに、魔獣は爪で攻撃を仕掛ける。
(すみません…お父様…私は…此処で…終わりの様です………ごめん…なさい…)
避ける事も出来ず、シーナが自らの死を受け入れ目を閉じた時、赤黒い斬撃が炎の爪を切断した。
「…え?」
いつまでも来ない痛みに違和感を感じ、シーナは目を開く。そこに居たのは、1人の男。人の年齢でいえば16、7歳くらいだろうか。白い髪を持つ、だが、何処か危険な感じがする男だった。
「最後まで見ておこうとは思ったが…仕方がない。見返りにはお前の情報を貰うが…構わないだろ?」
「…?」
現れたのは、数分前からこの戦いを見ていたコウヤだった。
「…まぁ良い。さぁ、俺と殺り合おう…名前は…不死鳥でいいか?」
シーナの正体は次回に公開です。




