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オレは女子高生・ソフトバージョン  作者: AT
第2章

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第46話 奈々 初めての少女マンガ    初出09.2.21

 夏休みはまったり過ごそうなんて思ってたのに、なんだか次々に問題がおきてしまい、ちっとものんびり出来なかった・・・今日は久々に部屋でゴロゴロして過ごしている。


 明日は白石先生に会うために学校に行かなきゃいけないから、今日は一日家で過ごそうと思っていた。

“コンコン”

ドアをノックする音・・・たぶん麻衣だろう・・・今うちにはとうさんと麻衣しかいない・・・とうさんがオレの部屋に来るなんてまずないことだ・・・

「お姉ちゃん、入っていい?」

「どうぞ」

オレはベッドにうつぶせに寝転がり、雑誌を読みながら返事をした。

「JINON〈ジノン〉見せてもらっていい?」

「いいわよ。」

オレはいま見ていた雑誌を渡そうとした・・・

「あっ、読んでたならいいけど・・・」

「ううん、いいの。もう一通り見たから。」


麻衣は雑誌を受け取ると床に座って広げた。

「ちょっと・・・ここで見るの?」

「ダメ?」

「べつに・・・いいけど・・・」

そうは言ったものの、どうも納得できなかった・・・だって麻衣は、あまりオレの部屋に入りたがらなかったのに・・・

「ねえ・・あんた前はわたしの部屋に入るのイヤじゃなかった?」

「・・う・・うん・・・だって・・・」

麻衣は言いにくそうに言い淀んでる・・・

「だって何?」

「・・だって・・・お姉ちゃんの部屋・・臭かったんだもん・・・」

「え?!」

オレの部屋が・・・?

「・・ど・・どんな臭い・・・?」

「・・・男の子臭いっていうのかなぁ・・・なんか・・・」

驚いた・・・オレは自分の部屋が臭いなんて思ったことは一度もない・・・


「でも、今はすっかり女の子の匂いになってるよ!」

「・・そ・・そうなの・・・?」

オレはまったく気づかなかった・・・だいたい自分の臭いなんて、なかなか自分では気づけないものだ・・・

「あ・・でもそれって化粧品の匂いじゃない?」

「違うよ・・だってお姉ちゃん自身がいい匂いするもん・・・」

オレはビックリして自分の身体をクンクンにおってみた・・・しかし、やっぱり自分ではよくわからなかった・・・

「お姉ちゃん、自分で気づかなかったの?」

「・・・うん・・・」

「お風呂の後とか、前と全然においが違うよ。お姉ちゃんが入った後は女の子の甘い匂いがするもん!」

「・・・・・」

たしかに女の子って甘い匂いがするけど・・・高校に入ってすぐの頃は、教室中が女の子の匂いで頭がクラクラしたものだけど、最近はそんなことも無くなっていた・・・オレはてっきり慣れただけだと思っていたけど、もしかして自分も同じ匂いがするから気にならなくなっていたのだろうか・・・これも女性ホルモンのせいなのかな・・・

「お姉ちゃんもすっかり女の子になったんだね。」

「・・そ・・そうなのかな・・・」



 「あっ、そういえばお姉ちゃん『NANA』もう読んだの?」

「・・あ・・うん・・・」

『NANA』はレナにすすめられたマンガだった・・・女の子の気持ちが良く描けているのだと言ってすすめてくれたのだ・・・

 オレは三吉先生にすすめられた女の子の気持ちがよくわかるという小説を読んでいたのだが、せっかくすすめてくれた三吉先生には悪いけど・・・どうも今の時代には少し古いのではないかという気がしてきた・・・こんなのばかり読んでいたらオレは明治時代の女学生みたいになってしまいそうな気がする・・・

 それでレナに聞いてみたら少女マンガをすすめられた。でもオレは少女マンガなんて読んだことがなかったから、どんなのを読んだら良いのかわからないと言うと『NANA』がいいと言われたのだ・・・


 その話を麻衣にすると、なんと麻衣が持っていたので借りて読んでみたというわけだ・・・

「どうだった?ナナかっこいいでしょう?」

「・・どっちの・・・?」

「ナナに決まってるじゃない!ハチじゃないよ!」

「・・・そ・・そっか・・・」

たしかにハチはかっこいいってキャラじゃない・・・でもオレは正直どっちのナナにも感情移入できないでいた・・・こんな女の子いないだろうと思う・・・少なくともオレのまわりにはこんな女の子はひとりもいないから、どうにも実感が持てないのだ・・・それに・・・こんなマンガを小学生が読んでいいのだろうか・・・高校生のオレにだって、ちょっと刺激が強いのに、麻衣は小学生のころから読んでいたなんて・・・まあ、オレがとやかく言うことでもないかもしれないけど・・・


 奈々は高校生のころから不倫したりだらしがないし・・・ナナもタバコ吸ったり、同じバンドの男と同棲してセックスしてるし・・・それに男の方も全然女の子の気持ちが解ってないし・・・こういうのはレナみたいなコなら感情移入も出来るのかもしれないけど、オレみたいな女の子にはとても無理だ・・・それともオレが本当の女の子じゃないから解らないのだろうか・・・

「麻衣こんなのわかる? 理解できるの?」

「うん、わかるよ。」

ほんとかなぁ・・・中学生になったばかりのコにこんな恋愛がわかるのだろうか・・・


「そうだ・・この続きは?」

たしかにオレには気持ちは理解できないけど、3巻がちょうどいいところで終っているから気になるのだ・・・章司のやつまさか幸子を選ぶつもりじゃないだろうなぁ・・・ハチも厄介なコだけど、オレは幸子もどうかと思うぞ・・・

「あたし3巻までしか持ってないよ。」

「なんで?!」

「・・その後は友達に借りて読んだから・・・」

「えぇ〜・・またその友達に借りれないの?」

「だって・・小学校の頃の友達だもん・・・」

「もうっ・・・続きが気になるじゃない・・・この後どうなるの?」

「・・・えっとねぇ・・・どうだったっけ・・・」

「あっ、やっぱり言わないで!」

オレは慌てて続きの話をしようとする麻衣を止めた・・・せっかくマンガなのに言葉で聞いたらだいなしだ・・・仕方ない・・・買うしかないか・・・でも少女マンガなんて買うの恥ずかしいな・・・



 「麻衣は今日どこか行くの?」

「ううん・・・」

「じゃぁ、お昼作ろうか?」

「うん!」

「何がいい?」

「そうめん!」

「そうめんか・・いいね!」

そういえばつゆが無くなってたなぁ・・・

「そうめんならつゆ作らなきゃ・・・ちょっと時間かかるけどいい?」

「うん、あたしも手伝うよ!」

「そう?」

オレたちは昼食を作るために部屋を出た・・・なんかこういう時にふと思うことがある・・・オレたちって本当に姉妹らしくなってきた・・・



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



 「有希ちゃん、調子はどう? 気分が悪くなったりしてない?」

「はい。」

オレは精神的にはいろいろあるけど、身体は元気そのものだ・・・

「今日はちょっと血液取るけど、検査するだけだから心配しないで。」

そう言って白石先生は大きな注射器を取り出した。

「・・・・・」

オレは注射とかは平気な方だけど、ときどきやるこの血液検査だけはちょっと苦手だ・・・だって針も太いし、注射器の中に赤黒い血がたまっていくのを見るのは、あまり楽しい気分じゃない・・・


 「このごろはどう? なにか楽しいことあった?」

「・・えっとぉ・・・」

読者モデルのことを話そうかと思ったものの、こればかりは言っていいものかどうか良くわからなかった・・・

「・・特に楽しいことは・・・」

「そう・・・夏休みだからどこか旅行とか行かないの?」

「う〜ん・・・かあさんは忙しいし・・・とうさんはあまり外には出ないから・・・そんなに旅行とか行ったことないんです・・・」

「そうなの・・それはつまらないわね・・・」

「ううん・・そんなことないですよ・・・わたし、そんなに旅行とか行きたいと思わないし・・家でお料理とかするのも楽しいし・・・」

「ふふっ・・・有希ちゃんってほんとに女の子らしいのね。」

「・・そ・・そんなこと・・・」

だってオレは男のころからやってるし・・・

「普通ですよ・・・」

でも・・今のオレが女の子らしいのなら、オレって男としては普通じゃなかったのかな・・・オレはごく普通の男の子のつもりだったんだけど・・・


 「有希ちゃんはお裁縫も得意なんでしょう?」

「え?・・なんで知ってるんですか?」

オレは白石先生にはそんな話をした記憶はない・・・

「家庭科教室の前に有希ちゃんの写真があったじゃない。なんでかと思って松本先生に聞いてみたら、あのワンピースも有希ちゃんが作ったって言うから。私はそういう女の子っぽいことは苦手だったから尊敬しちゃうわ。」

「・・そ・・そんな・・・」

白石先生がオレを尊敬するなんて・・・オレはただそれくらいしか取り柄がないだけなのに・・・

「やっぱり有希ちゃんは女になるべくして生まれてきたのねぇ。」

「・・・・・」

そうなのだろうか・・・オレはただ偶然が重なってこんなことになってるだけだと思うんだけど・・・でも・・・偶然だけで男が女になることなんて、めったにないことだとは思う・・・だけどそれを運命なんて言っていいのかはオレにもよくわからない・・・


 「そういえば、有希ちゃんのお兄さんって薬科大に行ってるんだったわね。」

「はい・・・大学院で研究してるみたいです・・・」

といってもオレには大学院がどんなものか知らないけど・・・

「なにを研究してるのかしら?」

「さぁ・・・そういう話はしないから・・・あまり会えないし・・・」

「夏休みは帰って来るんじゃないの?」

「・・さぁ・・・お正月も帰ってこなかったから・・・わからないです・・・」

「どうしたの? 顔が真っ赤よ?」

「・・あ・・わたしまだ・・女の子になってから・・兄さんに会ったこと・・ないんです・・・兄さんにはすごく会いたいけど・・・兄さんに会うの・・・恥ずかしいんです・・・それに・・ちょっとコワイ・・・」

こんな姿になってしまったオレを見て・・・兄さんはどう思うんだろう・・・


「有希ちゃんはお兄さんのこと好きなのね。」

「・・それは・・・兄ですから・・・」

オレは兄さんのことは好きだし、すごく尊敬している・・・オレと違って頭が良いし・・・優しいし・・・

「心配いらないと思うわよ。お兄さんだって今の有希ちゃん見たら可愛いって思うだろうし、好きになっちゃうかも知れないわよ。」

「・・そんなぁ・・・兄弟なのに・・・」

「そっか・・そうよね、ゴメン変なこと言っちゃって。」

「・・そうですょ・・・そんなこと・・・」

・・・そんなこと・・あるわけない・・・・だって・・オレたちは兄弟なんだから・・・男どうしの・・・



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



 “ぶるる・・ぶるる・・”

オレのカバンの中で携帯が鳴っている! 電源切るの忘れていたようだ・・・見ると編集長の佐々木さんからだった。

「もしもし、戸田です・・・」

「あ、戸田さん、良かった、つかまって・・・」

「・・ど・・どうしたんですか?」

「それが、急な撮影が入っちゃって・・今から来てくれないかな?」

「え?! 今からですか・・・」

一度家に帰って着替えて・・お化粧してとなると、けっこう時間がかかってしまう・・・

「来れない?」

「い・・いえ・・そんなこともないですけど・・・急ぐんですか?」

「ええ、出来るだけ早く来てほしいんだけど・・いま佐倉さんもこっちに向かってもらってるのよ。」

「え・・千里も・・・?」

千里が行くのならオレが行かないわけには・・・だって、千里の両親はオレが一緒だから認めてくれたって言ってたし・・・オレにも責任がある・・・

「・・じ・・じゃぁ・・いま久留米なんですけど・・・特急じゃないから・・1時間くらいかかるかもしれませんけど・・・」

「いいわよ、待ってるから出来るだけ早く来て・・・でも、電源入れててくれて助かったわ・・佐倉さんが戸田さんは電源入れてないって言ってたから、つかまらなかったらどうしようかと思った・・・それじゃね。」

「・・あ・・はい・・・」


 オレは急行の席に座ると考えた・・・こんなことがあるのなら、いつも電源を切っておく訳にはいかない・・・いっそのこと携帯の番号やメールアドレスも変えてしまった方がいいかもしれない・・・どうせ中学の友達から連絡が来ても、こんなナリではどっちみち会えないし・・・そろそろ男のころの友達とは決別した方が良さそうだ・・・いつも電源を切っていては千里たちにも迷惑をかけてるみたいだし・・・オレにとっては今の友達の方がずっと大切なのだ・・・



 薬院の駅に着いて、電車を降りると奇妙な感じがした・・・いつも制服で行動してるところなら何でもないのに、いつもは制服で来ないところだと何だか落ちつかない・・・なんか初めてセーラー服を着て外に出たときの気恥ずかしい感覚がよみがえってくるようだ・・・


 けっきょく制服で来てしまったけど、なんかこんな恰好で編集部に行くの恥ずかしいな・・・でも、そうも言ってられない・・・急がなきゃ・・・


 編集部に着くと、もう千里は撮影を始めていた・・・オレも急いで着替えてメイクをしてもらう・・・撮影が始まるとオレの気持ちは一気に女の子らしくなり、カメラマンさんの言葉につられて可愛いポーズをとってしまうオレがいる・・・それでも時々、我に返ってしまい恥ずかしさが顔に出てしまうが、そんな時にかぎってカメラマンさんが褒めてくれるから、よけい恥ずかしくなってしまうのだ・・・



 「・・ふぅ・・・疲れたぁ・・・」

撮影が終り、着替えたオレたちはソファーでぐったりしていた・・・撮影はテンションが上がる分、あとから疲れがくるみたいだ・・・それに今日は急だったのもあるのだろう・・・

 今回はオレもちゃんとお化粧を落としていた・・・だって撮影のお化粧でセーラー服を着るなんて無理だ・・・

「有希、制服だったんだね。学校に行ってたの?」

「・・う・・うん・・・」

「クラブか何か?」

「・・うん・・・まあ、そんなところ・・・」

白石先生のところなんて言ったら、何でって聞かれるのがオチだ・・・何か別の話題にしないとボロが出そう・・・

「千里さぁ・・『NANA』って知ってる?」

「『NANA』? あのマンガの?」

「・・そう・・・」

「そりゃ知ってるわよ。知らない人なんているの?」

「・・そ・・そうか・・・そうよね・・・」

女の子なら誰でも知ってるようなマンガなんだぁ・・・オレは聞いたこともなかったのに・・・


「有希、『NANA』好きなの?」

「・・う・・うん・・・まあ・・・」

ここはとりあえず好きだということにしといた方が良さそうな気がする・・・

「ちょっと意外かも・・・」

「・・ど・・どうして・・・?」

オレが好きではマズかったのだろうか・・・

「なんかそんな気がして・・・あっ・・でも有希ってなんとなく奈々に似てるかもしれないね。」

「え? “なな”って・・・どっちの・・・?」

「ハチの方。」

「え?! わたしが? わたしあんなワガママじゃないよ・・・」

それにイケイケでもないし・・・オレはもう少ししっかりしてる・・・

「たしかに有希は、どっちかって言えば古風な感じだけどね。」

「・・・・・」

やっぱりオレって古風な女の子になりかけてたんだ・・・まあ、イケイケよりはマシだけど・・・

「でも、ときどき挙動不審なところとか、ハチっぽいじゃない。」

「・・きょ・・挙動不審・・・?」

「あと・・服のセンスとかも似てるんじゃない?」

「・・・・・」

たしかにハチは可愛い服着てるかな・・・そういうところが似てるのは、ちょっと嬉しいかも・・・


「有希は何巻まで読んだの?」

「・・えっと・・・3巻・・・」

「なんだぁ、読み始めたばっかりなんじゃない。」

「・・実は・・そうなの・・・いとこにすすめられて・・・」

「そっか・・有希は昔の小説ばっかり読んでるものね。」

「・・う・・うん・・・」

そうだ・・・せっかく薬院まで来たんだから、千里について来てもらおう・・・

「帰りに・・続きを買いたいんだけど・・ついてきてくれない?」

「もちろんいいわよ。駅の下におっきい本屋さんがあるの知ってる?」

「・・薬院の?・・ううん・・知らない・・・」

「マンガもいっぱい揃ってるみたいよ。」

「・・そうなんだ・・じゃ・・そこに行こう・・・」

わざわざ天神まで行かずに済んで助かった・・・



 「ふたりともありがとう、急だったから助かったわ。」

「・・い・・いえ・・・」

オレたちはソファーから立ち上がっておじぎをした・・・オレたちはまだ高校生だから、こんな時、どう言ったらいいのか良くわからない・・・

「戸田さん制服だったのね。急いで来てもらってごめんね。」

「・・いえ・・夏休みだし・・ヒマですから・・今日はちょっと学校に用事があったんですけど・・・」

「あ、そうだ!あなたたちは名前どうする?」

「なまえ・・ですか・・・?」

「本名でもいいのかしら・・・本名は困るっていうコもいるから。」

そうか・・・オレはやっぱり本名じゃない方がいい・・・学校も名前を変えておけば良かったと思ってるくらいなのだから・・・

「・・わ・・わたしは・・本名じゃない方がいいなぁ・・・」

オレがそう言うと、千里は・・・

「わたし・・どうしよう・・・」という・・・

「千里も名前・・変えたほうがいいよ・・・」

だってオレだけ変えても千里が本名じゃバレバレだ・・・

「有希がそのほうがいいんなら・・・でもどんな名前にしたらいいのかな?」

「そうよね・・・」


「あなたたち、あだなとか無いの?」

「・・わたしは・・普通に千里って呼ばれてるし・・・」

「あ・・わたしはいとこにはユウって呼ばれてるけど・・・」

「ユウか・・それ良いんじゃない? 戸田さんどこに住んでたんだっけ?」

「春日原・・です・・・」

「じゃぁ、春日ユウなんてどう?」

そんなにカンタンでいいのだろうか・・・そういえば、久留米出身のなんとかくるめって芸能人がいたけど・・・

「それじゃ、千里は大善寺チリ・・・?」

「いやだぁ、そんな名前! 有希はそれでいいの?」

「・・わたしは・・どうでもいいっていうか・・・」


「佐倉さんは好きな芸能人とかいない?」

「あ、わたしはニースの山上くんが・・・」

「じゃぁ・・山上・・・山上さくらなんてどうかしら? ちょっと宝塚っぽいかしら?」

「!」

オレだって山上くんが好きなのに・・・オレも山上が良かったかも・・・山上ユウ・・・? ちょっと変かな・・・

「わたしそれにします!」

あっ、決めちゃった・・・

「じゃ、佐倉さんは“山上さくら”で、戸田さんは“春日ユウ”でいい?」

「あ・・あの・・やっぱり“春日ユウ”ってちょっと・・・」

千里の方は可愛いけど・・・“春日ユウ”ってあんまり可愛くない気が・・・

「有希ったら、どうでもいいって言ったじゃない。」

「・・う・・うん・・言ったけど・・・」

それもそうだな・・・オレはべつに本気でモデルになろうとしてるワケじゃないし・・・

「あ・・じゃぁ・・それでいいです・・・」

なんかあまりこだわってると、本気でモデルを目指してるみたいに思われたら大変だ・・・でも・・・なんか簡単につけすぎた気もするけど・・・



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



 「有希、こっちよ。」

千里に手を引かれて入ったところに本屋はあった・・・駅の下にミスドがあるのは知ってたけど・・奥に本屋さんがあるのは知らなかった・・・


 「・・・・・!」

本棚に並んだ『NANA』を見て驚いた・・・19巻もあるんだ・・・オレが4巻を手にとると、千里が言った・・・

「有希、お金ないの?」

「ううん・・・」

「それじゃ、何巻か買えばいいのに。」

「・・そっか・・・」

たしかに1巻だけじゃ、すぐに読んでしまいそうだ・・・オレはけっきょく6巻まで買うことにした。


 レジに並ぶ時は、やっぱり恥ずかしかった・・・女の子の服や下着を買うときも恥ずかしいけど・・それとはまた少し違う・・・オレは男としては結局借りる機会はなかったけど・・たぶんAVを借りる時って・・こんな気分なんじゃないだろうか・・・千里がいてくれて助かった・・・




 家に帰って『NANA』を読みだしたオレは、いきなりストーリーに没頭してしまった・・・


 千里が、オレがハチに似てるなんて言ったからだろうか・・・これまでは感情移入できなかったのに、急に親近感を持ってしまったようだ・・・いきなり章司が幸子と抱き合うところを見ちゃうなんて・・・ハチが可哀想すぎるよ・・・


 なんだかだんだんハチが可愛く思えてくる・・・こんなに良い子だったなんて・・・わがままで、世間知らずで、どうしようもないところもいっぱいあるけど・・・本当は素直で自分に正直な娘なのだ・・・オレはハチのことが大好きになってしまった・・・


・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・


 でも・・読みすすめるうちに・・・だんだん辛くなってきた・・・ハチの健気さが痛々しい・・・女の子のどうしようもない感情に流されていくハチを見てられないよ・・・


 6巻を読み終えた時には、もう涙が止まらなかった・・・切なすぎる・・・やっぱりこんなマンガは、オレにはまだ刺激が強すぎるみたいだ・・・続きを読むのが怖くなってしまぅ・・・



 レナのやつ・・・よくもオレにこんなマンガすすめたものだ・・・女の子になるのが怖くなったらどうするつもりだよ・・・・








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