因果応報
この話で戦争パート終わりですが、かなり残酷です。心の弱い方は読まれないことを推奨します。
ベルランドの街は煙を上げ、外壁は崩れ、民家には至るところに戦闘の傷跡が伺える。
トラント公国の軍は東に陣を構えていた皇国の軍を破り、ベルランド付近の最終防衛を撃破し、そしてベルランドに最後まで残り抵抗した民を皆殺しにし、死体の山をうず高く積み上げ、勝利の宴会を占拠したベルランドでしている真っ最中。
しかし公国の兵は些か面白くなかった。酌をさせるつもりで女を一箇所に集めていたが、そのどれもが残党刈りをしている間に自害してしまい、酌をしてくれる相手がいなく気分を害していた。それとは裏腹に将軍は希望に満ちていた。ベルランドを落としたことにより、皇都はもう目の前、3カ国で皇都を先に落とした国が様々な優先権が約束されている。そして将軍も公王から、先に落とした暁には、莫大な褒美をもらえる事になっている。将軍の表情は上機嫌だ、
ただ一つ問題があるとすれば、ベルランドに思ったより食料の蓄えがなく、補充をここでしようと考えてい当てが外れ、今やっている宴会の食料も実は無理をしている。だからといって兵士に酒や食料を振るわまなければ不満に想う兵は大勢いただろう。士気向上の為、仕方なくというのが将軍の心境。そもそも数万の軍の物資はかなりのもの、それを維持する事は大国と言えど無理をしなければならない。だが、公王は1ヶ月分の物資しか用意しなかった。皇国という出来たばかりの国を落とすにはそれだけで十分という見方からだ。しかし戦とはそう足し算引き算で計算できるものではない、ここまでは順調だったが、皇国の首都皇都を落とすには、ベルランドを落とすよりも手こずるだろう。だからこそ将軍の心境は色々と複雑であったりする。
数度の戦で兵は疲れ果てていた、酒を喰らい食事を取りお腹を膨らませたら急激な眠気が兵士を襲う。一人また一人ともう街とは呼べないベルランドの地面で突っ伏すように眠りに入っていく。それは将軍も同じだった。兵糧の事も考えなければならず、兵の指揮をとらねばならず、そして最大の要因は皇国の民や兵達の抵抗が思ったよりも激しく、例え腕を切り落としても、足を切り落としても、恨み言を言いながら噛み付いてくるのだ。それにはさすがの将軍も精神的に参る。結果的には皆殺しになってしまい、いくら軍にいて人を殺す事に長けていても、精神の損耗は激しい。だからいつのまに将軍は眠りにはいっていた。
兵達は眠り、静かな静寂が訪れ、何時間たったか、その頃に大きな叫び声が頭に入ってくる。その叫び声は次第に複数になり、夜の静寂は一転して、騒がしくなる。深い眠りに入った将軍もまたその声が聞こえ、少しずつ脳が覚醒し、意識がはっきりとする。
「なんだ・・・、いくら戦勝祝いをした後とは言え、浮かれすぎだ」
疲れた体をゆっくりと起き上がらせ、兵達を叱責しようと天幕の覆いを広げ、外を見た瞬間。将軍は絶句した。
外の光景は兵が狼狽えている姿と、ベルランドの空に浮かぶ何かが漂っている。一気に眠気が覚め、目を凝らし、空に浮かぶ物を凝視する。それは光だった。ホタルの光の様に淡く輝いていた。
「なんだこれは!」
急いで天幕から出て、周囲をよく観察すると、光の数はベルランドを埋め尽くす程の数があった。
近くにいる兵の肩を掴み。
「一隊何が起こっている!」
困惑した表情の兵はただ首を振る。
「分かることは・・・、ゆっくりと動いているって事だけです」
兵の言葉を聞き、再度光を観察する。
「確かに動いている。それも同じ方向に」
急いで光が動いている方角に歩みを勧める。
この光景は幻想的な者だ。ここが戦場でなければ、見とれていただろう。しかし今は戦の真っ最中。これが皇国の魔法であった可能性を考え、対策を考えなければならない。
将軍はある一箇所にたどり着く。
光がそこに集まっているのはその場所の光景で一目瞭然だった。
「ベルランドの民の死体・・・」
うず高く積み上がった死体の山の更に上、上空に大きな光の塊が浮かんでいた。
「まさか・・・、禁忌の魔法。命を使い発動させる魔法なのか・・・」
だとしたらまずい。ベルランドは跡形もなく消え去るだろう。
慌てた将軍はすぐに命令を下す。
「退避!、そ、総員退避だ。ベルランド後方5キロまで退避せよ!」
将軍の叫びと共に、兵達はそれが幻想的な光景ではなく、危険な者だと悟る。慌てる兵は雪崩をうって、走り出す。押し倒される者、転んだもの、未だにその状況に気がつかない者、三者三様で場は混乱の極みに陥る。
数時間後、5キロ後方で大勢を整え、事の状況を見守る。そしてその光はここ東からだけではなく、南から、北からもやってくるのがわかった。
「将軍あれは何ですか?あんな魔法見たこともありません」
副官が将軍に不安な表情で聞く。
「わからん、禁忌の魔法には人の命を代償に発動するものもあるという。それかわからないが、その場にいればもっとまずいだろう」
はっきりしない答えに副官の表情は更に不安なものとなる。
更に数時間、様子を観察し、光があらゆる方角からこなくなり、夜も開け始めた頃。何も起こらないことに幾人かは安堵の息を吐き出す。
「そこのお前!」
将軍に急に声を掛けられた、傍付近にいた兵は肩を大きく動かし反応する。
「はっ、なんでしょうか?」
「行って中を見てこい」
行きたくない命令を出され、首を大きく振る。
「命令だ、行け」
命令を変えることが不可能とわかり、しぶしぶ頷く。
命令を受けた兵がゆっくりとベルランドの街に入り20分程たった頃だろうか。
兵は何事もなかった様に、帰ってきた。
だが、その兵は将軍に報告するわけでもなく、公国の軍の手前で止まり、周囲を観察している。
「何をしているんだやつは!さっさと報告に来させろ!」
将軍の怒声とも言える声に、副官は慌てて命令を受けた兵の下に走り出す。
そしてそれが起こった。
兵の近くまできた副官は大きな声で叫びながら、兵の身体を触ろうとしたとき、副官の身体は消えた。
一瞬何が起きたのか、把握するのに数秒の時間を要した。
副官の身体は消えたのではない、爆発したのだ。夥しい血液だけを残して肉片残らず爆発したのだ。
一瞬で公国の軍に動揺が走り、将軍もあまりの事に思考がおいつかずにいた。
命令を受けた兵は鎧を脱ぎだし、それを捨てる。まるで汚いものを着てた様に。
そしてまっすぐ公国の軍を見て。
「皇王の物である皇国を汚す愚物が!滅べ」
前にいた兵にはその声がはっきりと聞こえ、慌てて武器を抜き去る。
しかしそれよりも早く、目の前の男が。
「ただ滅ぼすだけでは贖罪にならん。愚物が起こした事を己の身を持って知るがいい」
そう言葉を言い終わると、男は手を上げる。ただそれだけの動作だった。
しかし男のした行動ははっきりとわかった。何故なら公国の軍の真下の地面、そこに巨大な魔法陣が浮かび上がっていたからだ。
「な、なんだ」
「魔法・・・?」
「しかしこれほどの巨大な魔法陣など」
公国軍の動揺は激しい。逃げないのは思考がいまだその状況に追いついてないからだ。
浮かび上がった魔法陣はゆっくりと消え、何も怒らなかった事に安心しようとした時だった。
「身体が動かない」
「お、俺もだ!」
公国軍数万がまるで、人形の様に固まってしまう。動くのは頭だけ、それ以外は自分の身体ではない様な錯覚さえ覚える。
混乱している兵の脳内に声が響く。
「お前たちがした様に、お前たちの祖国を蹂躙しろ。行け」
声が聞こえた瞬間、公国軍の兵の身体が動く。自分の意思ではなく、誰かの意思によって。
そして、声の意味を次第に理解する。
「や、やめろ!止まれ、止まれ」
「いやだ、そんな事したくない」
公国軍の悲鳴、泣き出すものも身体は動き出す。自分らの祖国に向かって。
数日後、公国は突然の反乱に多大な痛手を負う。被害は想像を絶する物であった。人口の約2割が反乱により失うことになる。しかし、後にそれが反乱ではなく、皇国の力による物であるとわかる。反乱軍を見た者はこう言う、あまりにも残酷な報復だと。




