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理想郷  作者: かきね
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炎帝

ここから戦争入りますので、グロイ表現出るかもです。

 開戦は北のテーグ共和国の攻撃で始まった。3カ国の中で5万以上の軍勢を率い、功を焦ったのか統率がとれてないのかは定かではないが、他の2カ国が大体同じ日にちと時間で攻撃してきたのを考えれば、そのどちらかと言える。皇国の北の防衛戦力は約2500。東と南が約2000。これは北が一番兵の数が多いのと、テーグ共和国の兵の法からだ。テーグ共和国は原始的にも占領地の略奪を許している。その為、一番攻撃的な軍と言える。


 更に北はレイナが指揮をとっている。理由は先程と同じ理由だが、もう一つ上げれば北は平坦な土地が多く、守りにくいという点がある。北を簡単に突破させないための苦肉の策といえよう。


 急ごしらえの砦は簡素に作られている。中での快適な生活は考慮されてない。あくまでも、最低守られるだけの設備になっている。その防衛も頑丈とは言い難い。


 初戦、テーグ共和国の攻撃が始まる。小勢と侮っての突撃か、警戒もせずにがむしゃらに前に進む。砦の前の何重もの柵を横切ろうと前に出た瞬間、突然兵の姿が消え、後続はもちろん止まろうとするが、血気盛んなテーグ兵は後から後から前に出ようとして、次々と姿を消していく。


 これは、事前に間者にばれないよう夜間に仕掛けていた落とし穴。テーグ兵がやっと罠に気がつき、全体の足が止まった所に、矢の雨を降らせる。幾人もの人の悲鳴と共に血しぶきをあげ倒れていく。しかしこれもバレてしまえばなんて事はない。すぐに罠のある位置を探られ、看破される。そうなると、後は砦の防衛施設と兵の力便りになる。


 一体何日の日が経っただろうか、時間の感覚は戦場での死と悲鳴で失っている。


 後ろを振り返れば、負傷した兵が何とか立って防衛をしている。でもそれも、幾日も持たないだろう。


 敵の魔法攻撃はやはり大国。次々と砦は壊され、もう防衛施設の意味を為さない。


 開いた城門に沸いてくる敵兵を無我夢中で切りつけるのみだ。


 だから私は、悍ましい使う事を止めた力を使うこと決めた。


「ヘルゲン補佐!」


「はい」


 すぐ後ろから聞こえる男の声はしっかりとした口調であったものの、その姿を見れば疲労困憊、傷だらけだ。頭脳だけだと男を侮ってはいたが、根性も腕もある男。


「私はこれから前に出る。後の指揮を任せる」


 ヘルゲンとレイナは数秒視線を交わし。


「はい、お気をつけて」


 全てを見透かされたかの様な視線、恐らくヘルゲンにはこれから私がすることを知っているのだろう。


 ヘルゲンの視線を背後から浴びながら、レイナは前に進み出る。


 一歩、一歩進むごとに過去の思い出がよみがえる。


 私がもう使うまいと思っていた力。


 それは父から譲り受けた、火竜の力。


 私は生まれながらにして、火に愛されていた。そしていつも火の精と共にあった。


 それは年を取る事に強く強く出るようになる。


 自分でも制御できないほどに・・・。


 人と竜の混血の私には竜の力は巨大すぎた。


 巨大すぎる力を暴走させては、母は何度も何度も謝る。


 叱るでもなく、怒るでもなく、謝るのだ。


 私はそんな姿の母は見たくなかった。


 だから、制御しようと必死に必死に努力をした。


 だけど、そんな全ての努力は無駄だった。


 あの時、あの日、私は母を失った。


 扱いきれない力を暴走させて、母と家、何もかも全て燃やし尽くしたのだ。


 母は最後まで、最後まで命あるまで私に謝罪する姿がこびり付いて、離れない。


 それからの私は、母と懇意にしている友人がいる街に下りた。

 

 でもその母の友人はすでに知っていたのだ。


 薄汚れた焼け跡がある服を着て、現れた姿を見て、山を燃やし、全てを燃やしたのが私だと言う事を。


 母の友人は私を化物と言い、そして街の人にも広めた。


 師と出会うまで、私は必死に逃げ回って、人ではない事を痛感せざるえない。


 だから、この火竜の力はもう使わないと決めていた。


 あの御方に出会うまでは。


 あの御方は、私を人として見てくれた。


 あの御方は私を必要としてくれた。


 あの御方の為ならば、忌まわしきこの火竜の力を使うことを躊躇いなどしない。


 覚悟を決め、一時攻撃を中断していた敵兵の陣を見つめる。未だに大軍だと人目でわかるほどの人の動きが見える。


 恐らくはかなりの人数を殺めるだろう。


 しかし、そんなことは私にはもう些細なことでしかない。


 私が守るべきものを奪おうとする奴らは、人ですらない!


 レイナはゆっくりと敵陣営に進む。


 不思議そうにレイナを見てる敵の姿が写る。


 幾人かの兵が陣から出てきて、レイナに近寄る。


 声を掛けようと口を開きかけた、兵の体が突然灼熱の炎によって燃え上がる。


 悲鳴を上げる間もなく、逃げる間もなく、幾人かの兵はレイナに声をかける事すらできずに燃え尽きる。


 あまりの事に驚いて、陣営は慌ただしく動き出す。


 何百人という数がレイナの前に出てくる。


 矢を番えるもの、魔法を詠唱する者、剣や槍を構える者。


 そんな兵をあざ笑うかのように、レイナはかつての力を少しずつ呼び起こす。


 ゴウッという音とともに、レイナ周辺に発火物がないにも関わらず、燃えるものがないにも関わらず、メラメラと灼熱の炎があたり一面に吹き起こる。


 怯える者、驚愕する者、逃げるもの、千差万別。


「お前達が、お前達が悪いんだ!どうしてそっとしてくれない。どうしてあの御方を悲しませる様なことをする!全部お前達が悪いんだ!」


 レイナは手に持っていた剣、すでに溶けつつ剣の形を為してない剣を敵に向けて振る。


 波上に炎が敵に向かって飛んでいき、次々と敵に降りかかる。


 その炎は等しく、敵を骨の一本残らず燃やし尽くす。


 敵の設営した陣営も、レイナの力を見て恐れ逃げる兵も、全てを等しく灰燼へと帰す。


「アハハハハ、燃えろお前達なんか燃えちゃえばいいんだ!」


 レイナの声は敵の悲鳴と混じり、異様な雰囲気を醸し出す。

 


 それを崩壊しかけた砦で見ていた皇国の兵は、後に語る。


「戦場に写る彼女は、正にかつて謳われた炎帝そのものだと」



 この日より、皇国に攻め入ったテーグ兵は攻撃を中断し、皇国国境沿いまで後退する。本陣指揮官はこの命令をせざる得なかった。前陣にいた兵が恐怖で戦えない状態、そしてそれが味方全体に広まって戦争どころではなくなったのだ。

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