表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遺伝子ファッショナブル  作者: DRtanuki
第三章:少女とヤクザと教祖
66/66

エピローグ:そして未来へ


 いつだっただろうか。

 私は世界を回りたいと思ったことがある。

 世界のあらゆる場所を見て回り、もっと遠くへ行きたいと願った事がある。

 一か所に閉じ込められて、どこにも行けなかったからその反動なのかもしれない。


 叶わぬ夢だと心のどこかで思っていた。


 どうせ私はかごの中の鳥。日々の実験で消耗して、いつかは死ぬ運命にあるんだと捨て鉢になりかけていた。

 一緒に居たアリサだけが心の支えだった日々。アリサの明るさにはいつも救われていた。

 白い建物の中に居た私の心は真っ黒に染まりかけていた。

 やがて研究所を運良く出られる機会を得られたけど、何も持たず後ろ盾もない子供には外の世界は過酷すぎた。もしかしたら研究所に居た方が、食べて寝る事にだけは苦労しなかっただけマシだったかもしれないと思った時すらあった。

 ……いや、どちらにしろ実験で消耗するんだから、一緒か。


 憧れていた外の世界は、弱肉強食の理が支配する世界。

 私はドブの中をはい回るネズミと同じくらい価値が無かった。

 気まぐれで何処かのお姉さんに拾われたけど、その人も何処か壊れていて私をペットとしか考えていなかった。一日一度だけ、弁当を食べて生き延びる日々。

 人としての尊厳なんてまるでなかった。


 やがて娼館に連れ去られ、いよいよダメかと思った時にあの人は颯爽と現れた。

 まるで映画のようなヒーローの登場に私は驚いた。こんな展開があり得るはずがないと思っていた。でも実際に私を助けてくれたわけで。

 今まで天に見放されていた私を、ついに神様が見出してくれたのかと思うくらい。

 全く、運命のサイコロの気まぐれさには笑ってしまう。

 思えば研究所を脱出できたのも、壊れているとはいえ人に拾われたのもよくよく考えれば運が良かったのかもしれない。

 逃げるんだという意志があったからこそ、運を引き寄せられたと言えるのかもだけど。

 その後も苦労はあった。変な連中に襲われて、化け物になって、それで彼に苦労を掛けて。その上捕まっちゃって。でもそのたびに彼は助けてくれた。

 

 私を助けてくれた人は、今は隣の席で呑気に眠っている。

 彼は私の恩人。私の保護者。私の兄のような、お父さんみたいな存在。

 ううん、でもそれは他の人から見たものであって、私の本心はそうじゃない。


 私は彼の事が好きだ。


 一目見た時からずっと感じていた。

 私はこの人の伴侶になりたい。その為なら何も厭わない。

 この人と一緒に、自由に世界を旅して巡りたい。

 今は子供だからって相手にされていないけど、私は決して諦めない。

 もし誰かと結婚されたとしても、その人から奪ってでも私は兄ちゃん、いや「石橋隆之」さんと共に生きてやる。

 絶対に諦めないんだから。


 それにしても、飛行機のフライトは長い。

 映画を見るのも飽きたし、ずっと音楽を聴いているのも耳が疲れてくる。

 外も暗い。夜だからか、道理で客室も薄暗い照明になっている。

 昨日もわたわたしていたし、戦いの疲れも思えば残っている気がする。

 ウトウトしてきた……。


 意識を失いかける直前、頭を撫でる感触があったような気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ