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第一話 超一級犯罪者

本日より二日に一度、一話ずつUPしていきます。完結は10月16日になります。それでは第一話よろしくお願いいたします。

 空には己の姿を半分以上隠し、それでも輝き目立っている三日月が静かに現れていた。


 その遥か階下では、今日も激しいサイレンの音がやむこともなく夜の暗闇の静けさをにぎやかにするのには最適だった。


 何台ものパトカーがただ一つの建物を囲んでいる。いや、包囲しているという表現のほうが正しいだろう。包囲されている辺りはより一層騒がしくとても夜の雰囲気は存在しない。


 パトカーに乗っていた警察という部隊は建物に向かい大声で叫んでいる。その言葉はただ一人の人間に向けられた言葉だった。


 ――突然建物の扉が静かに開く。

 

 そこから、外の荒けさとは比べ物にならないほどに静かで静寂という言葉が似合いそうな青年が一人出てきた。


 青年の口元は両端の先端が少し上を向いている。要約すると少しだけ笑っている。


 全身は黒いハードスーツのようなものを着てとても動きやすそうだ。手には大きく膨れたかばんを持っている。


 警察は、青年の姿を確認すると一斉に拳銃を抜き、青年に銃口を向けた。青年のほうには数え切れないほどの警察とそれに伴う銃口が向けられていた。


 青年が出てきた建物には正面に朝銀行と書かれている。


柊翔ひいらぎしょう! 貴様を爆弾テロ! 強盗! 殺人! 以下多数の罪により逮捕する! 大人しく投降しろ!』


 スピーカー越しに聴こえてくるその声は当然青年の耳にも届いているだろう。どうやら銀行という場所から察するに青年は今し方銀行強盗を働いて出てきたようだ。つまりかばんの中身は現金といったところだろう。


 すると突然青年は手に持っている大きく膨らんだかばんを前に差し出した。


 そして次に青年は、かばんを持っていないほうの手でポケットから小さなビンを取り出した。青年はそのビンを器用に片手であけると中に入っている液体をかばんに満遍なくかかるようにかけた。


 かけ終わると青年はビンを前へと投げ捨てた。


 その行動の一部始終を警察は疑問符を浮かべながら静かに見ていた。青年の不思議な行動の意味が分からずただ見ているしかなかったのだ。


 青年は再びポケットへと手を入れる。次に取り出したのはライターだった。


 そして、青年はおもむろにライターに火を点し、かばんにその火を乗り移させた。かばんは見る見る燃えていく。青年が先ほどかけた液体はガソリンだったようだ。かばんにつけられた火はやがて激しさを増していき、青年は持っているのを不可能と感じたのか、かばんを地面に投げ捨てた。


 地面に投げられたかばんはどんどん激しさを増し燃えている。


 すると一枚の紙のようなものがかばんの中から舞った。それはすでに黒こげで識別不可能に近かったがそれがなんであるかは容易に想像できた。


 ――それは、かばんの中に入っていた大量の現金だった。


 かばんと共に踊るように燃える炎はかばんの中にある現金までもを地獄の業火で次から次へと炭へと変化させていった。


 警察はその光景に驚きを隠せないでいる。無理もない。今さっき強奪された現金を今、目の前ですべて燃やされているのだ。青年はその警察の隙を逃しはしなかった。


 途端に青年は、ポケットから丸い石ころのようなものを出すとそれを警察がいるほうに向かって投げつけた。それは地面に着弾すると同時に小さな爆発を起こし大量の煙を出す。警察はその突然の出来事に対応できず目を覆う。


 大量の煙を掻い潜り煙の外に出た警察が見たものは青年の姿ではなかった。そこには青年の姿はなく変わりに大きな黒い箱が入り口の前に置かれていた。箱の上部にはデジタルの時計のようなものが表示されていた。


 そしてそれは確実に時を刻んでいる。


 ――それは、時限爆弾だった。


 爆発までの残り時間――00:01秒。


 警察がそれに気が付き全員を退避させることは完全に不可能な時間だった。


 タイムリミット――。


 一瞬の激しい閃光と共に辺り一面は火の海と化し、爆音と爆風に辺りの建物は軋み、崩れ、そして人間は吹き飛び、燃え、蒸発し、その場は一瞬にして地獄絵図と化した。


 一番近くにあった朝銀行は土台をやられ崩れ落ちていく。


 辺りに再び静寂が戻ったときそこは一部の建物崩壊と大量の負傷者と大量の死者に囲まれた朽ち果てた地獄の一丁目と呼ぶに相応しい場所になっていた。



 

 ――今、世界はたった一人の超一級犯罪者により荒れていた。


 青年の名前は柊翔ひいらぎしょう。日本で数々の犯罪を繰り返し、今やその名を知らぬ者はいないという超一級の犯罪者である。柊はまさに神出鬼没で犯行の手口は大胆不敵。さらに犯罪の目的も分からないという。


 しかし、柊は真実かどうかは分からないが『人の心が読める』という噂が立っていた。というのもそれは柊自身が中継テレビに向かって言っていたことから始まる。当然そんなことを信じることは出来ないのが普通である。


 しかし柊が、数々の犯行を繰り返しさらに全てにおいて逃げ切っていることは事実で柊は人の心をすばやく見極めるという意味から世間からあるコードネームで呼ばれていた。それはハート・グランス。


 ”ハンス”と――。


読んでいただきありがとうございます。次回UPまでお待ちいただけると幸いです。

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