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第69話 対価


「いろいろとありがとうございました。それではこちらからの品物をお渡ししますね」


 過去の日本帰還スキル持ちの祝福者の情報を聞く前に、相手の要望があったポーションやその素材を渡す。


「ありがとうございます。つきましてはあちらの中までお願いできますでしょうか?」


「……ええ。ちなみにあれはなんなのですか?」


 このスイートルームに入ってから床に並べられた物騒な物の次にずっと気になっていた。


 部屋の片隅に銀色のシートに囲まれた区画がある。明らかに後付けでこの部屋に設置した物だろう。


「物々しくて申し訳ございません。あちらは除菌室となっております。今回はポーションなどの素材をいただけるとのことでしたので、植物や魔物などの素材のため、念のために用意させていただきました。可能でありましたら、あちらの部屋を出入りする際は入り口のブースを通っていただければと思います」


「……なるほど。わかりました」


 除菌室というと、菌を取り除く部屋ということか。


 確かに海外に行く時や帰る時は検疫を受けなければいけない。あれは感染症や病気などを防ぐ目的があったはずだが、異世界にも適応されるのか。


「ご協力感謝いたします。過去の訪問者様やその方がお持ちいただいた物にはそういった菌などは付着していなかったのですが、鈴木様にも初回だけお願いしたいと思います」


「ええ、了解です」


 言われてみると、異世界の病原菌とか脅威でしかないよなあ……。下手をすればコロナ以上の感染症や某ゾンビ映画のようなバイオハザードが起きてもおかしくはないかもしれない。それを考えれば除菌室を通るくらい大した手間ではないな。


 日本帰還スキルでは生物を持ち帰ることはできないけれど、菌とかはどういう扱いになるのだろうな?




「鈴木様、誠にありがとうございました」


「いえ、お気になさらず」


 ブースの中を通り、小さな部屋の中に入ると、そこにはよくわからない精密機械が置いてあった。マジックバッグから持ってきたポーションやその素材を取り出すと、夜ノ宮さんがそれらをケースに次々と入れていく。


 薬草やマナポーションに使う魔物の血液なんかは厳重に銀色の袋に入れた後、ケースに入れて二重にしていた。本来であれば異世界の物はここまで厳重にしないと駄目なのだろう。改めて、前回は普通のファミレスで広げてしまって申し訳なかったな。もしかするとあのお店には後で除菌部隊などが入ったのかもしれない。


 こちらが用意していた物をすべて渡したところ、これほどの量を持ってきてくれるとは思っていなかったようで、夜ノ宮さんからお礼を言われた。


「今回いただいた分の対価につきましては後日お支払いさせていただきます」


「はい。……ちなみに今回の分でいくらくらいになりそうなんですか?」


「そうですね、目算で申し訳ございませんが、数億ほどになるかと」


「億ですか!?」


「はい。次回はそれぞれの明細もお持ちしますが、もしかするとそれ以上になるかもしれません。以前にも申し上げましたが、異世界の物の価値は原油やレアメタルの比ではないので」


「………………」


 いや、なんかもう、話が非現実的すぎて頭が追いついて来ない。1000万円も非現実的だったけど、もはや億になるとわけがわからない。


「ですので、他に必要な物などございましたら、遠慮なくお伝えくださいませ」


「そうですね、今のところは大丈夫ですが、もしかすると黒崎家にはなんらかの形でお金を送ってもらうかもしれませんので、その際は協力してください」


「承知しました」


 いきなり億とか言われても使い道がないな……。おいしい食材なんかを用意してもらうにしても、前回もらったお金があれば十分だ。


 あとはアオイにも相談するが、例の会社からの慰謝料といった形で実家に送金してもらうことはできそうだ。俺やユウカの実家に送金してもらうこともできるだろうけれど、その場合はこちらの組織にいろいろとバレてしまいそうなので、なにか問題が起きた時だけでいいか。


 まあ、お金の使い道に関してはみんなとも改めて相談しよう。


「こちらが鈴木様以外の訪問者様の情報となります。プライバシーの件もありますので、日本での名前などは伏せさせていただいております」


「ありがとうございます。こちらも悪用するつもりはございませんので」


 夜ノ宮さんから渡された紙の束には過去の日本帰還スキルの持ち主の情報が書かれていた。


「……なるほど、60~70年前にISEOという組織ができて、俺が4人目というわけですか」


 最初の祝福者は警察に保護を求め、異世界の存在が初めて判明し、そこからISEOという機関が設立されたらしい。


 そこから合計で3人、異世界からの祝福者と接触や取引をして、俺が4人目となるようだ。


「1人目は女性の転移者ですか。この方が一番長生きしていたようですね」




——————————————————————

59話にて監視カメラで発見された人が初めての祝福者としておりましたが、監視カメラが本格的に普及してきたのは30~40年前ほどだったので修正しております。


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