謎の小説
部屋の扉を開け、机の前の椅子に座る。
机の上にはパソコンが1台。画面を開いて電源を入れる。
インターネットを開きサイトを検索。あった。この小説。
最近見つけた投稿サイトの小説。偶然にもその作品のなかに描かれている花の特徴が私の家に昔からある家宝の不思議な花にそっくり同じだった。デマだったとしても、これを読み進めれば、あの花の何かが分かるのではないか。そう思った。
でも、私は、
……………正直怖い。
読み進めてしまったとき、私は何を知ってしまっているのだろうか。もしかしたら、私の知ってはいけないことをこれを読むことで間接的に得てしまうのではないだろうか。
でも、知りたい。
私の好奇心がからだの中をうごめいてる。今まで明かされなかったあの花の秘密を、知りたい。知りたくてたまらない。
今パソコンの画面に、小説の目次が出ている。
タイトルの文字の所に、矢印を運んでいく。
大きく、深く、深呼吸をする。
肩の力を抜いて、
マウスの左クリックを押した。
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………あれ。
花のことは、もう最初の方で終わっちゃったんですけど。
それから先はずっと人魚の話。人魚のおとぎ話的なやつ。
花のことでこの小説から分かったことは、大きく4つ。
一つ目は、この花には“海の花”という呼び名があること。
二つ目は、この花には魔法の力が込められているかもしれないということ。
三つ目は、この花はとても珍しく、世界で咲いているのはたった1輪だけ。
四つ目は、この花は人魚たちの間で重宝されていて、大きな役割を担っているらしい。
うーん、なんか情報が似たり寄ったりだなぁ。
ちょっと役に立ちそうではないね。
あれ、でも、人魚の話の中でも花のことはちょこちょこ出てる。
やっぱり全部読んでいった方がいいかもね。
何せ、題名が 絶滅したはずの海の花 とか言うんだから。
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一時間後
ウガァ~、疲れた、寝る。
「たっだいまぁー!!」
あれ、この声は……
部屋を出て階段をいそいそとおりる。
『お帰り夏美、て、なんでお母さんが一緒にいるの』
「実は、生け花の帰りに、夏美が友達と一緒に歩いている所を目撃したから、途中から一緒に帰ってきたの。」
「カラオケめちゃくちゃ楽しかった!!」
『あーそれはよかったねー(棒読み)』
「何その反応。あ、もしかして、結衣お姉ちゃんが忙しくてカラオケも行けないんだ」
『うるっさいなぁ違うから!』
「あれ、かえで、目がシュパシュパしてるけど平気?」
『あ、さっき部屋で一時間ぶっ通しで小説読んでたから』
「それは本の小説?」
『ううん、ネットにあげられてるやつだよ』
「へーそれ私にも教えてよ」
『いいよ。別にお母さんの好きそうなジャンルじゃないし』
「私こう見えて結構読書好きなのよ。題名教えて」
『はいはい、えーっと、“絶滅したはずの海の花”。これでいい? 私今物凄く眠たいから』
「おけおけ、サンキュー」
ヤバい、まじで眠い。はやく部屋に戻ろう。
「お母さん、お姉ちゃんが読書って、珍しいと思わない?」
「そうね…きっと友達に勧められて読んでるんじゃない?」
「ふーん、読書なんか私には退屈でしかないね。着替えてくるー」
「うん」
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かえでが読書を一時間もするなんて、ちょっと変ね。何より題名からして────一体どんな小説なのかしら。
お、これか。
どれどれ……
………………………
うそ………何これ。誰がこんなものを… 作者は?
“人魚の女王”
人魚の……女王…… まさかっ、
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ふわぁ~、よく寝た。やっぱり睡眠こそが一番の安らぎだね。
そうだ、昨日録画しといたドラマ見ーよおっと。
『あれ、夏美は部屋にいるの?』
「ええ。部屋でゲームしてるわ。それより、あの小説のことなんだけど」
『あぁ、あれどう?不思議じゃない?』
「あれはもう読まないでちょうだい」
え。 まさかそんなコメントが来るとは。
『……なんで』
「あの小説はちょっと危険よ。あんなもの読んだら洗脳されてしまうわ。」
『洗脳?何の話してるの?そう言ってるお母さんが洗脳されてんじゃない?』
「いいえ、私は正気よ。もうこれ以上あの作品は読まないで。」
『なんで危険なの?全く根拠がないじゃない!』
「あれを読み続けていれば、あなたは傷ついてしまうかもしれない」
『どういうこと。小説を読むことでなんで傷つく必要があるの』
「あなたの人生を大きく揺るがす可能性があるの。あれを読むことで何かを知って、今までの努力を台無しにしてほしくないの。」
『ねえ、さっきから全く理由になってないことばかりなんだけど。何が言いたいの?はっきり言って!!』
「あなたにはまだ早いの!!!」
『え……まだ早い? 私高校三年生だよ!バカにしてんの!?』
「違う。バカにはしてない。あなたのことは尊敬してる。学年トップとって、一生懸命頑張ってるのも分かってる。でも、これはまだ早いの。私たちにとっても難しいことなの。下手したら夏美にも関係してくるかもしれないから。」
え、夏美が関係してくる、だって?
この小説一つでそんなに大きなことになるの?
『……分かったよ、お母さんの言う通りにする。』
「かえで、ありがとう。」
お母さんは私に抱きついてきた。
とても強かった。
お母さんの思いが、身体中に染み渡っているような気がした。
それにしても、そんなに危険なのかな、あの小説。
でも、あの小説が危険ということは、あの花も危険てことなのかな……
どうしよう、知れば知ろうとするほど、どんどん謎が深まってる気がする~
私はこれから一体どうしたら良いのだろう……
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