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ゼロストライク  作者: 漢汁
1章・青い春の中止
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緑の人は大事に

「……何て言うと思ったか?!」

 はい、騙されましたー。ぎゅっと握られたうでは、ギュギュッと掴まれ、涙目だった青い瞳はギラギラギラしている。

「コパイ、ゲットだぜい」

「グホッ!!」

 鳩尾に一発食らい、悶絶している間に掴まれた腕とは反対の腕も掴まれ、そのまま戦闘機のコクピットの後ろ側へと放り込まれる。

「あ、座らせねーとな……って、無理か。後で何とかしよ」


 *


 その後のゲロを吐いたパイロットの行動は早かった。

 中村武志を後部座席に詰め込み、自らも機首が校庭に突き刺さったままの状態である戦闘機に乗り込み、ハーネスで身体を固定する。

 キャノピーを閉じようとしたとき、後ろから「いだだだだ!!」と悲鳴が聞こえた為、不完全に閉じておいた。

 機体を地面から抜くため、逆噴射させて機首を露出させる。5m程そのまま上昇、水平に機体を戻し、そのまま垂直上昇。学校の屋上に向けて飛行した。


「さて、場所は確保した」

 先程の騒ぎで無人になった屋上に、戦闘機は降りた。今度はランディングギアを下ろしている。

「……一体何が?」

 鳩尾を殴られるわ、キャノピーにより圧死させられかけられ、ようやくキャノピーが全開になって楽な姿勢、コクピットの縁に腰掛けた状態で、パイロットの女性に聞く。

「質問は後で受け付けてやる。とりあえず、コレ着ろ」

 後部座席に突然詰め込まれ、恐らく学校の屋上に移動したのだろう、見慣れた景色の場所に居るということ以外、状況をあまり把握できていない中村武志に、パイロットの女性は、前席から立ち上がり、白い塊をぶつける。

「――ナニコレ?」

「ファスナーあんだろ? 開けてみ」

 言われた通り開いてみる。

「――パイロットスーツ?」

 目の前の女性が着ているのと同じような服が出てきた。

「今着てる服の上からで良い、とりあえず、着ろ」

「なぜ?」

「今から宇宙に行くから」

「どうして?」

「そこに宇宙があるからだ」

「お一人でどうぞ」

 もう嫌な予感しかしない。こんなところに居られるか、俺はもう帰らせてもらう。

「仕方ねーな」

 そう言いつつ、パイロットは小さな箱型の物を、中村武志にあてた。

「ちょっとビリッとくるぜ」

「え?」

 その瞬間、中村武志は痺れる感覚を覚えながら、意識を失った。

「いい具合に座ってくれたな。時間も惜しいし、とっととデパるか」

 パイロットはそう呟きキャノピーを閉める。スラスターで上昇させながら、ランディングギアを格納する。そしてサブエンジン点火、暫く上昇する。

 ヘルメットをかぶり直し、多目的ディスプレイやメインコンソール、HMDにて高度や周囲の状況確認を行う。

「メインエンジンイグニッション、カウントダウン。3、2、1」

 スロットルレバーの制御をサブからメイン・オートに切り替え、そのまま押し込む。


 *


「おい、テメェ起きろゴラァ!!」

 と、泣きたくなる起こされ方をされる。

 数十分前の悪夢のような出来事、いや、現在進行形の事態の始まりを思い出してた。

「……あ、はい」

「テメェの言った通り、軌道に乗った。で? これからどうするんだ!?」

 現在位置は赤道付近。アポジ(Apoapsis)とペリジ(Periapsis)が判ればどうにかなる……かも知れない。でも敵は北極圏に居るって話だから、スイングバイバイしないといけないような気が。

「質問良いですか?」

「んだよ、手短にな」

 あーこの人、短気過ぎる。

「北極圏のどのあたりに目標があります?」

「あ!? レーダーコンタクト出来ない位置で、んなこと聞くんじゃねーよ!」

 ですよねー。

「わかりました。ではこれより進路変更し、敵を倒す為、南極へ移行、その後は北極へ。その後は知りません」

 もう何も説明したくなくなった。しても言うことキカンスキーだし、この人。

「了解、お前の指示には従ってやる」

 あ、ここだけ素直なのね。軍人さんらしい。

「すべて終わったら、グーパンだけで勘弁してやる」

 酷い。

「では、進路変更……」

「んなもん、クッソ時間かかったけど、南極へまず行きゃ良いんだろ?」

 僕……じゃなくて俺が寝てる、てか強制的に寝かされた時にそこまでやってるとは。流石軍人!

「はい、えーと、APで加速、ただ目標に向けてですので、ある程度加減を」

「知らねーよ! よーするにアーペーでのスロットル加減で何もかも変わるってんだろ?」

「……そういうことです」

 あー、やっぱ脳筋の人だ。

「うっし、いっちょやるか!!」

「いや、ただし一発勝負になりますから。下手したら、スイングバイバイだし」


「あっ!? んなヘマしねーよ。しくじったら、惑星に帰れないお前を婿にしてやるよ」

 すっげぇ嫌なプロポーズされました。


「さぁ、サクッと行くぜ!!」

「いや、座標とか入力しました?」

「んなもん後回しだ。残りの対消滅エンジン点火が先だ」

 後部座席のディスプレイから、ある程度の情報を貰ってるけど、確かに時間が限られてる今、スイングバイする必要のある状況下、それが正しい判断だと思った。

「うっし、点火確認。3番4番、状況、チェック」

 あ、なんでここだけパイロットらしい行動するの?

「発進準備完了」

「発進準備完了!」

 えー、ギャラクシアン3じゃないよ、つられて言ってしまった。


 そして、恐怖のスイングバイが始まった。

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