ゴートオブビューティー
「沙織、なんとなく察していると思うけど、操縦は自動、こちらもガンナー役やります」
「大丈夫なの?! あーもう、本当に鬱陶しいなもう、コイツら!! さっきよりも多いよ!?」
「こちらがデコイになるようにセッティングしてあるハズだから。援護すると」
「それだけでしょっ! 説明はあとでまとめて聞くから、アルセイデスも撃って」
「ENビームかキャノンしか撃てないし、照準あまり動かないから――っと!」
右側面からビームを乱射してくる、この戦闘機の半分ほどの大きさ程の敵に対し、アルセイデスは右手の操縦桿を右に圧力をかけると、機首がその方向へ向く。左のスティックで照準を微調整、トリガーを引くと、先程の細いビームではなく、大きい単発のビームが飛んでいく。敵を貫通して非脅威化とし、軌道を僅かに変えながら、別の目標に向かうよう飛んでいく。HMDに表示されている大量のTDボックスが、3つ消滅した。
「コイツは強力すぎる……じゃない、機首を向けないと有効でないことが難点。スラスター使いすぎるのも」
「そういうの良いから、撃ちながら説明受けるから」
*
アルセイデスと黒瀬沙織は、目の前に出てくる敵を撃墜していった。
「出てこなければ、やられなかったのにッ!!」
自動回避操縦モードでのオーバーライド補正による機転、そして攻撃。アルセイデスとはそれなりの付き合いのあるAIの学習機能により、無理矢理変更されるコマンドを対処していく。
「死ぬがよい」
数時間前に出会ったばかりの黒瀬沙織。この娘はヤバい。アルセイデスが指示した、右腕だけで出来る簡単なお仕事という程度のものを与えられ、それを実行しているだけかと思ったら、空いている左手で、バイザーの画像処理により見えないハズの左コンソールから、緊急用ヘルプマネージャー(F1)を押し、こっそりとこの機体の情報を得ようとしている。
責任は全て、メルセイデス・セイバー……なんでしょう? アルセイデス・スピリッツ・フェ――ラーリ。違います。
メルセイデス大尉、失敗しないように。
あ、成功、ではないようです。デルタ部隊全責任になりかねる問題が発生しました。
by.ARF-25B アルセイデ高光度ス・スピリッツ・フェリオス中尉|(代筆)
追伸、搭載AI? 知らない子です。
*
「いやーあれデスね、フレア60というヤツ。本来の用途は、対地攻撃や支援時に、どうしても光源が必要な時に使うヤツなんだけど、持続時間とかの関係でエネルギー凄く持ってかれるんデス」
「チャフ・フレアディスペンサーとは別物という認識で構わないのね? 対IR用の低温・高輝度フレアとは違う」
わらわらと現れる小型敵目標を撃退しながら、二人は会話する。
「その通りデス。本来ならばカートリッジ内に核と持続時間分のエネルギーを詰めて撃ち込めば終わり――」
「でも、そのカートリッジの残骸がデブリとなる。それが問題で軌道上で使用禁止となっている」
「本作戦では、恐らく待機のまま参加する予定は低かった私のミッション、所謂バンカーバスター役、シールドブレイカーとして任務を果たせた、と」
「マニュアルを読む限りでの情報だけど、フレア60はエネルギーを吸収し、それにより発光する。媒体はあらゆるエネルギー」
「危険ですよねー、不慣れな運用者が使ったと思うと、ハルマゲドンものですよ」
「生体防護壁、これも一応シールドね? 丁寧に敵目標情報を空いているトコに表示してもらって感謝するわ」
「いえいえー」
黒瀬沙織の視界の隅に、タコの物体と、そのシールド残量が表示された四角いコンテナが見える。
最初はほぼ最大の状態、ゲージの色も白色だったのが、いつの間にか半分以下、黄色になっていた。
「赤くなって、点滅し始めたら、ボンバーッ!! デス」
そう言ってるそばから、赤くなり、すぐに点滅し始めた。
「アルセイデスさん、ピンキースイッチ、ゲットレディ?」
「ようこそ、夢の世界へ。ただし、悪夢デース」
アルセイデスの右手人差し指が、トリガースイッチの上にあるスイッチに移動する。
「ポチッとにゃ〜」
「達人ボム」
"ポチッとな(丸文字表記)"
「「……はぁ!?」」




