第13話 一番隊(ファースト)
「ハァハァハァハァ――――――」
息を荒らしながら走る青年。
―――これは、マコトが魔王軍に属することを決意した同時刻の国王軍。
バンッ!
「バスト様!討伐隊が…ッ!魔王軍討伐隊が殺られた模様です!」
青年はドアを勢い良く叩き開ける。
「あぁ?なんだと?全員か?」
真っ暗な部屋の置くから、分厚い、低い声だけが聞こえてくる。
「はい…それもあっけなく…。瞬殺です。」
「…そうか。」
ズズズズズズ…ッ!
「ヒ…ヒィッ!」
腰を抜かし、その場に倒れる青年。バストと呼ばれる者がいる方向から、ドス黒く、とてつもない覇気が流れてくるのを感じる。それはまるで、底知れない沼に体ごと全て持っていかれてしまいそうな…。何も見えない闇に、何もかも全て…持って行かれるかの様に…。
☆★✳★☆
「とりあえずマコトには、一番隊について教えてさしあげますわ♪」
ニッコリと裏のない、綺麗で純粋な笑顔で話すサタリシア。
「はい?なんで?」
「ん?」
笑顔で聞き返すサタリシア。
「なんでって言われましても…あなたには隊長を――――」
「――――だからぁ。やらねぇって言ってるだろ何度も。」
面倒くさそうに胡座をかきながら言うマコト。
「…ん?」
サタリシア笑顔が段々と不安の表情に変化していく。
「あなた魔王軍に属すと…そう言いましたわよね?」
「うん。言ったが?」
「では、なんでですの!?」
「…うーん。そだな。」
マコトは指を上に指しながら、説明し始めた。
「俺は元々、天涯孤独の自宅警備員だ。」
ドヤ顔で語り始める。
「は…はぁ…?」
微妙な顔をしながら聞くサタリシア。
「ある意味、俺は一つの『自分の国』の王様だった訳だ。王様…つまりトップだ。ずーっとトップでい続けた俺は、今更誰かの下に付き、せっせと働く気など無いと言う訳だ。」
マコトのその目は真面目その物だった。意味は全くと言っていいほどに下らない、酷い、異常なのだが、この堂々とした姿勢に神々しくも見えてきたサタリシア。
「え…えぇ…それで?」
「俺は決めた。魔王様になる。」
「…えぇ。………えぇ!?」
マコトのいきなりの異常発言に戸惑うサタリシア。
「一体何位を言ってますの!?」
マコトは立ち上がり、キラキラした目で語り始める。
「俺は魔王様になったら、俺の俺による俺のための政治を行い、幸せな世界を築く事をここに誓う!」
再び神々しく光り始める。
「おぉー。マコニャン凄い。応援してる。」
「そうですそうです。ボクも応援してる。」
再び床からひょこっと顔を出すユバとエザ。
「ふ…不安しかないわ…!」
「だからサタラン。」
なんの狂いもない笑顔でサタリシアを見るマコト。
「魔王様、変わってくれ。」
握手をしようと手を伸ばすマコト。
「全身全霊で断らせていただくわ…。」
サタリシアのその手は、マコトと交わすことはなく、怒りでギチギチに握りしめられていた。
「いい加減にするのですわ!あなたは魔王軍の人間!私は魔王!言うことを聞いて当然なの!」
「ところでさー。ユバとエザは何を職業にしてるの?」
サタリシアを完全に無視してるマコト。
「ちょっと聞きなさいよ!」
ユバが右手を手を上げる。
「ボクは二番隊の隊長。」
続いてエザは左手を上げた。
「ボクも二番隊の隊長。」
2人はセリフを言い終わると手を繋ぎこちらを見る。
『2人で1人で100人力。ダブル隊長共同体。ピースピース。』
「お…おう。2人隊長か…。」
顎に手を当て、何かを悩むマコト。
『イエーイ。』
「ん?」
『僕はキメ顔で―――――』
「――――危ない。それ以上言うな。」
マコトはキメ顔でそう言った。
「そうだ!分かったぞ!」
「何が?」
「そうですそうです。趣旨を言えバカヤロー。」
マコトはサタリシアに向かって言う。
「2人魔王ってどうだ!?なぁサタ……ラン?」
サタリシアは下を向き、何かブツブツ言っているようだった。
「マコニャンマコニャン。魔王サマは今、ご乱心の様。」
「そうですそうです。魔王サマの事無視しして、ボク達と話してるからだよ。マコニャンいけないんだー。」
「えぇ…俺のせい?」
面倒くさそうな顔をするマコト。
「な…なぁサタラン?」
『私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故―――――――――』
「うわっきっしょ!」
とてつもない早口で言い続けるサタリシア。それに驚きつつも、気持ち悪がるマコト。
しばらく黙って聞いているマコト。
『―――――言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王私は魔王――――』
「うわ無限ループかよ。」
ポカッ
『もういいから謝れよバカヤロー。』
後ろから後頭部を軽く殴ってくるユバとエザ。ロウダンと違い全く痛くない。
「あー悪い悪い。なかなか面白くてさ。」
『魔王サマで面白がるなバカヤロー。』
遠い目をするマコト。
「…お前達も言えたもんじゃない気もするが…。」
『――――――何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない言う事聞かない言う事―――――――』
「な…なぁ悪かったって。ちゃんと謝るから元に戻ってくれよ。」
やっとマコトは、申し訳なさそうにサタリシアに語りかけ始める。
「言う事聞かない言う事聞かない言う事…………」
サタリシアは俯いたまま、ゆっくりと静まっていく。
「グスッ……。」
「ぐす?」
「うわぁーーーーーーん!私は魔王なのにぃーーーーーー!言う事ーーー!言う事聞かないーーーーーーーーー!」
「こ…今度はなんだァ!?」
大声で泣き始めるサタリシア。流石にマコトも動揺する。
「ぁーーーーーーーーん!どうしてなのぉーーーーーーーー!!」
「あーうるせぇ!」
『あはははは、あはははは。魔王サマ泣いてる。』
ユバとエザが手を繋ぎ指を指す。
『傑作。』
「何を言ってんだ!?」
「う…うわぁーーーーーーー!何でぇーーーーー!」
「あーもう分かったよ!一番隊でも何でも引き受けるから泣きやめよ!」
スゥッ
「よし…。やったわ…ッ!」
目と鼻の周りを真っ赤にしながら、ガッツポーズを取るサタリシア。どうやら、ブツブツ言っていたのも、泣いていたのも、マコトを一番隊の体調を引受させる演技だったらしい。
「え…演技かい…。」
「私の勝ちね…ッ!」
勝ち誇るようにドヤ顔をするサタリシア。
「サタラン…お前には誇り…プライドというものが無いのか…?」
悲しそうな目でサタリシアを見るマコト。
「うっ!うるさいわね!私が勝ったの!終わりよければ全て良し!なのよ!」
勝った方の人が、涙を流しながら顔を真っ赤にして、負けた方は平然と、哀れみの目を勝った方に向ける不思議な光景がここにあった。
「これじゃあマコニャン、ボク達の上司になっちゃうね。」
「そうですそうです。マコニャン上官です。」
『略してマジョン。』
「…別にいいけど、もう何が何だか分からなくなってきたな。」
本当はこの時間、きららファンタジアやってたんですけどね。メンテの延期の延期…うわぁーーーーーーーーーん!!!!




