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彼女と正式に家族になったのは、彼女と付き合い始めてから1年半後の冬のことだった。
バブル真っ只中で派手な式をあげる人が多かった時代に、私たちは親しい友人と私の両親だけを呼ぶこぢんまりとした結婚式を挙げた。
外は、出会った日のように雪が降っている。
式の始まる直前、白いウェディングドレスとベールを纏った雪絵が、私の横で微笑む。
その姿は、言葉では言い表せないほど美しくて。
これから二人での生活が始まるのだ、と実感した。
私は雪絵に微笑み返し、目の前に続くバージンロードを見つめた。
こんな日が来るなんて、彼女と初めて出会ったときは思ってもみなかった。
「新郎新婦の入場です」
腕を組み、バージンロードへ、雪絵と一緒に一歩を踏み出す。
私たちへ拍手が降り注ぐ。
私と雪絵の友人たち、そして私の両親……、全員が温かな顔でバージンロードの上に立つ私たちを見守っていた。
「ありがとう」
小さな声で囁くと、雪絵もまた、
「こちらこそ、ありがとう」
と返してくれる。
今日が、私たち二人の新たな始まりとなるのだ。
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