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雪の降る夜に  作者: 佐宮 綾
結婚式
11/11

2

 


「これから、ベールダウンを行います」


 控え室に訪れた神父様が、雪絵に向かって言った。


 神父様曰わく、ベールは清浄のシンボルであり、邪悪なものから花嫁を守る魔除けとなるらしい。

 それを降ろすのが、母が娘にする最後の身支度なのだそうだ。


「最後の、身支度……」


 震える、雪絵の声。


 深冬が、雪絵に向かって頭を垂れた。


「お母さん、お願いします」


 雪絵の白くて細い手が、透き通ったベールに、触れる。

 ゆっくりと、ベールが下ろされていく。


「……綺麗ね……」


 雪絵は、涙ぐみながら微笑んだ。


 深冬が、同じ顔で微笑む。


「時が経つのは早いね。

 苦しい時もあったけど、お父さんと出会えて、あなたを育てられて、幸せになれた。ほんとうにありがとう」


「今度は、深冬の番。幸せになるのよ」


 そう口にして、雪絵は深冬を抱きしめた。


「お母さん、ありがとう……」


 雪絵の言葉に、綺麗な花嫁姿の深冬に、涙ぐむふたりに、幸せを覚える。


 深冬の巣立ちは、もうすぐ。



 *



 白いウェディングドレスとベールを纏った深冬が、私の横で微笑む。

 その姿は、言葉では言い表せないほど美しくて。


 これから深冬は私の元を巣立つのだ、と改めて実感した。


 私は深冬に微笑み返し、目の前に続くバージンロードを見つめた。

 こんな日が来ることを、とても幸せに思った。


「新婦の入場です!」


 そっと腕を組み、バージンロードへ、深冬と一緒に一歩を踏み出す。


 私たちへ拍手が降り注ぐ。


 雪絵、新郎新婦の友人たち、司さんの両親……皆が、温かな顔で、バージンロードの上に立つ私たちを見守っていた。


「私たちは幸せだ。深冬も、私たち以上に幸せになりなさい」


 小さな声で囁くと、深冬もまた、


「お父さん、ありがとう」


 と返してくれる。



 バージンロードを歩くのは、人生で二度目だ。


 一度目は、父親のいない妻と2人で。

 二度目は、娘をエスコートする父親として。


 少しずつ、司さんの姿が近づく。

 大切に育ててきた娘が巣立つときが、近づく。


「深冬を、幸せにしてやってください」


 私は、司さんに深く頭を下げた。


「もちろんです、お義父さん」


 私が差し出した深冬の右手を、司さんが掴む。


 深冬と司さんが、目を合わせて幸せそうに微笑んだ。


 それは、彼女たちふたりの始まりとなるのだ。



 Fin.


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